#05 御前試合
俺は刀を引き抜いてすぐに駆け出し、将軍様に接近して刀を振るう。
「はぁぁぁぁあ!」
俺の攻撃は将軍によっていとも簡単に受け止められ、
刀どうしがぶつかったことで火花が散る。
「素直でいてかつ、揺るぎない信念が込められている。あなたの人となりがわかる、正直な太刀筋ですね。」
そう言って将軍は刀で押し返して体制を整える。
そして即座に、俺の方へ急接近してきて…
「"嵐宮流 梅咲き"!」
俺はなんとか刀で受け止めるも、衝撃をいなしきれず後ろへ吹き飛ばされてしまう。
(なんて思い一撃だ。これが将軍の力…)
(力を温存していては負けるぞ?)
オロチは煽るように告げる。
(そんなこと、百も承知だよ。)
俺は煽りに乗るように、妖力を刀に纏わせ、妖術を発動する。オロチに教わって、カグラさんに倣った風の妖術。蒼く光る妖力を刀に纏わせる、風凪流の剣技…!
「それは、カグラの…
この短期間でここまで…」
「本番はここからですよ!
"風凪流二閃 疾風斬り"!」
「ぐぅっ!」
俺の剣技を将軍は防ぎ切った。
「ふぅ、どうやらかなりの才をお持ちのようですね。」
「へへへ!まだまだ行きますよ!」
「あなたの実力は認めましょう。
しかし、この程度では私には勝てませんよ。」
将軍様はそう言って刀に風妖術を纏った。
俺やカグラさんの青い風とは違う、桃色の鋭い風。
「これを防ぎきれますか?
"嵐宮流 桜花嵐斬"!」
将軍様の技に合わせて、俺は負けじと技を繰り出す。
「"風凪流四閃 風鬼の翠"!」
俺の青い斬撃と将軍様の桃色の斬撃が交錯するなか、
将軍様は俺のもとへ急接近してくる。
そしてその力強い一太刀が俺の脇腹を切り裂いた。
「ごふっ!がっ!」
切られた周辺がじんわりと暖かくなっていく。
血がとめどなく滲み出てくる。
痛い、痛い、痛い…
「あなたの剣技と妖術はなかなかの腕前です。
でも、まだまだ経験が足りないようですね。」
まあ、そうだろうな。
カグラさんやミコトさん、他にも大勢の隊員の人たちと組み手をしてきたけど、実戦経験はゼロ。
実力差はそう簡単には埋められない。
しかし、それは百も承知だ。
(オロチ、やっぱり厳しいぞ。
いつまで保つかどうか…)
(なんだ、もう根を上げるのか?
勝負はここからだぞ。
安心しろ、余の考えは間違ってなかったようだ。
その時が来るまで耐え続けろ。)
オロチはそう言って背中を押してくれた。
(まだ、作戦通りに進められてるってことか…)
そう。普通に考えて、たった二ヶ月で将軍様を超える実力を身につけるなんて不可能だ。
それなのになぜオロチは二ヶ月でいいと言ったのか。
オロチには見えていた。俺が将軍様に勝つ姿が。
ーーーーーーーーーー
時は一週間前に遡る。俺が精神世界で稽古をつけてもらっていた時、オロチが言った。
「今のままでは将軍には届かん。」
「だろうな!大人しく三ヶ月もらっておけばよかったのに!」
「落ち着け、勝てないとは言ってない。
お前の成長度合いは余の想像を超えている。
これだけできれば十分だ。」
「いやいや、実力差は埋められないのになんで勝てるんだよ。」
「お前は戦闘経験がないからな。そんな浅はかな思考しかできないんだろう。」
すげえバカにされた気がする。
「実力は必ずしも戦いの勝敗を決めない。
確かに、強い方が有利に進められるだろうがな。
だが、相手の癖、技の傾向、精神状態、戦いには
あらゆる要因が絡んでくる。余はすでにあの将軍の弱点に見当がついている。」
「ほんとか!?なんで、戦ったわけじゃないだろ?」
「ああ、これは将軍という立場、職業からの推測だ。
これが正しいのかどうかは、実際に戦ってみなければわからん。」
オロチはそう言ったが、自分の推測にかなりの自信があるようだった。
「それで、将軍様の弱点って、一体…?」
「それは…」
ーーーーーーーーーー
山口ナオト、三番隊でかなり揉まれてきたようですね。ですが、依然私には届かない。
「カグラ、私は問答無用で彼の首を切り落とします。
いいですね?」
カグラは無言で頷いた。
私は山口ナオトに近づき、刀を大きく振りかぶる。
「大妖怪の依代、山口ナオト、何か言い残すことはありますか?」
私がそう尋ねると、彼は不敵に笑って言った。
「俺はまだ、負けてませんよ…!」
彼は私を切りつけようとしたが、私は後ろに下がって回避する。そして彼は立ち上がり、再び私に刀を構え直した。
「はぁ、はぁ、これがカグラさん式ど根性特訓の成果ですよ。」
「そうでしたね。カグラの修行方針を忘れていましたよ。」
彼はかなりな傷を負っている。それにもかかわらず、
彼は笑って私を睨みつけてくる。
まだ折れていない、私を倒そうとする意思は、未だ力強く立ち塞がってくる。
「行きますよ…!
"風凪流五閃 蒼滅嵐気流"!」
山口ナオトは風の妖術を纏い、回転しながら突進してくる。私は防御を試みるも、彼の乱打に押されてしまう。
「はぁぁぁぁぁあ!」
私と彼の刀が力強く衝突し、あたり一帯の地面が凹み、吹き荒れる風によって桜の木が揺れる。
この傷でここまでできるとは…
この戦い、もう一波乱ありそうですね。
ーーーーーーーーーー
戦いが始まってから、かれこれ10分くらいだろうか。
俺はなんとか将軍様の技をいなしつつ、ここまで戦い続けられた。
「はぁ、はぁ、うぐぅ、はぁぁ…」
俺とオロチの目論見通り、将軍様のバテがきた。
そう、オロチが推測した将軍様の弱点、それは持久力。将軍という職業上、実力はあれど前線で戦う機会は少なく、城の外に出ることも少ない。
つまり、長時間戦い続けられるスタミナはないのではないか、それがオロチの推測だ。そしてその考えは的中し、今俺に追い風が吹いているってわけだ。
「どうしました?俺はまだまだやれますけど?」
嘘だ。止血したとはいえ、流石に出血が多すぎる。
頭が朦朧としてきた。
俺ももう長くは持たない。ここで必ず決める…!
俺は息が切れている将軍様に急接近して刀を振るう。
「はぁっ!」
「うぐっ、あぁぁ!」
将軍様はなんとか受け止めた。
「ははっ!もう限界なんじゃあないですかっ!?
「それはあなたも同じでは…?」
将軍様は俺を押し返した。
やばい、視界がぼやけてきた。
次放てるのが、最後の技…
「はぁぁぁぁあ!」
俺は妖力を高め、できる限り刀に纏わせる。
「次の一撃に全てをかける、ということですね。
いいでしょう、私も乗ってあげますよ!」
将軍様も対抗して妖力を高めてきた。
俺と将軍様は同時に地を蹴り、互いの斬撃が交錯する。
俺と将軍様の衝突の結果、俺は将軍様の手から刀を吹き飛ばすことに成功した。
俺は限界状態のなか将軍様に近寄る。
「はぁ、はぁ、づっ、はぁ、俺の、勝ちで、いいですか…?」
「…ええ、参りました。この御前試合、あなたの勝ちです。」
「やった、勝っ…」
俺は最後まで言い終えることなく地面に倒れ、意識を失った。
ーーーーーーーーー」
ナオトが勝った。まさか本当に勝てるとは…!
私たちはナオトに駆け寄り、治療を始める。
「マタタビ、いつものように頼む。」
「はい!任せてください!」
マタタビが回復の覇邪でナオトを治療している間、
私は将軍様に話しかける。
「将軍様も、早く治療しなくては。」
「必要ありません。見ての通り、私は無傷ですから。」
ナオトは将軍様を一切傷つけようとはしなかった。
自身の命がかかっていたと言うのに、な。
「この私が、試合で手を抜かれるなんて。」
「手を抜いたわけではないと思います。
これが、ナオトなりの全身全霊、全力の戦いかと。」
「ふふ、相変わらず、教えるのが上手いですね。」
「皮肉ですか…?」
「本心ですよ。確かに、技術面はまだまだですが、
精神を育てることにおいて、あなたに並ぶ者はいませんよ。」
「そのお言葉、私にはもったいないですよ。」
「さて、これで御前試合は終わり、山口ナオトの処刑は取り消しです。これからは妖伐隊の一員として、
しっかり面倒を見てくださいよ?」
「当然です。」
「私は一度城に戻ります。あなたも来てください、カグラ。話したいことがあります。」
「承知しました。」
そして私は皆を拠点に帰らせ、将軍様の御前に上がる。
ーーーーーーーーーー
「将軍様、話とは?」
「昨日、外交交渉の手紙が来ました。それがこれです。」
将軍様はそう言って手紙を渡してきた。
「外交交渉、どこからでしょうか?」
「"アグール"です。二日後、アグールの女帝陛下直属の親衛隊、"一等星"、"アルデバラン"殿との会談が行われます。彼らの目的が何か、私にはわかりません。
ですから、あなたにも警戒しておいてほしいのです。
一等星、もし敵対することがあれば、あなたにしか止められませんから。」
「承知しました。風凪カグラ、この嵐幕府のために戦いましょう。」
「ふふ、頼もしいですね。会談時は、あなたにも同席してもらいたいのですが…」
「はい、問題ありません。万が一、いや億が一将軍様が襲われるようなことがあれば、私が命を賭してお守りいたします。」
「ありがとうございます。カグラは本当に頼もしいですね。いつも助かっています。」
「嵐の民として、当然のことです。」
「感謝します。それでは二日後、再びここで会いましょう。」
「はい。無事に会談を終えられることを願っています。」
そして私は将軍様の御前から去り、拠点に向かう。
「早く帰って、ナオトのお祝いをしなくちゃな。」
終
読んでいただきありがとうございました!
今回はナオトと将軍様の一騎打ちでした!
次回は一体どんな展開が待ち受けているのか、お楽しみください!
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