表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

#15 鞍馬天狗堕落譚:急

ミコトさんの雷妖術が戦場に轟く。

俺や将軍様、天狗が生み出す風が吹き荒れる。

俺たち全員の連携攻撃を、

天狗はなんとかいなしきる。


「はっ!ふん!やぁ!」


ミコトさんは一生懸命に雷を纏った大槌を振り回す。

しかし、天狗は片翼を斬られてなお、

ミコトさんの攻撃速度を上回って回避していく。


「お前の力はさっきのバカ女に引けを取らねえ。

俺とて当たれはかなり喰らうだろうな。

けどよ、予備動作がデカすぎて、

俺の動きを追い切れてねえ。

俺には勝てねえよ!」


天狗はそう言ってミコトさんの腹を斬り裂く。

そのままミコトさんは地に落とされる。


「きゃあああ!」


「ミコトさん!」


俺がミコトさんに気を取られた瞬間、

天狗は俺の眼前にまで接近してきた。


「お前はあのバカ女の完全な劣化版だ。

引っ込んでろ!」


「なっ、しまっ…」


俺は天狗の技を見切れず、

その斬撃を真正面から喰らってしまう。

斬られた箇所から血がとめどなく溢れ出す。


「ぐはぁ!」


傷ついた俺を見ても天狗は手を緩めない。

扇を振りかぶり、

先ほどの超大規模強風攻撃を放とうとする。


「お前は楽には殺さねえ。

粉微塵に斬り裂いて、お前の生きた証を全て消す。」


俺が死を覚悟したそのとき、

アラトさんが俺を抱えて避難してくれた。

そして将軍様が天狗の一瞬の隙をついて

脇腹に刀を突き刺した。


「ちっ!どいつもこいつもよぉ!」


天狗は将軍様の顔面を膝で蹴り上げた。


「がはっ!」


少しずつ、少しずつ追い込まれていくのを感じる。

さっきまでは俺たちが有利だったのに。


「アラトさん、戦況が覆されてきてます。

このままだと俺たちは…」


俺の言葉をアラトさんは遮って、

微笑みながら言った。


「そんなことはない。

確かに、天狗の力は圧倒的だ。

だが、あの人は必ず戻ってくる。

なんてったって俺たちの隊長なんだからな…」



ーーーーーーーーーー



「はぁぁぁぁあ!う、ぐわぁぁあ!」


ミコトやアラト、ナオトをはじめとした

多くの隊員がやられていく。


「ナオト、大丈夫か?

まだやれるよな!」


「はい、まだまだ負けません!」


互いが互いを助け合い、

天狗という強敵に立ち向かっていく。


「"嵐宮流 羽衣椿(はごろもつばき)斬り"!」


「"風凪流五閃 蒼滅乱気流(そうめつらんきりゅう)"!」


ナオトと将軍様の連携攻撃に天狗は顔を歪める。


「鬱陶しいなぁ…!」


天狗は怒りに任せて風を繰り出す。

ナオトと将軍様は避け切れずに吹き飛ばされる。


「「ぐわぁあ!」」


すかさずアラトが拘束妖術を発動し、

天狗の動きを封じる。

そして山下が天狗の腹に刀を突き刺す。


「ぐっ!羽虫どもが!」


「へっ!舐めんなよ!

行け!ミコトさん!」


「なっ!」


ミコトが天狗の頭上から大槌を振りかぶり、

天狗の頭に思いきり叩き込む。

その威力に天狗は思わず白目を剥く。


「ぐはっ!」


天狗が怯んだ隙に、将軍様が号令をかける。


「今です!かかれぇぇ!」


「うおおおおお!」


情けない…

みんなが頑張っているのに、

私はこの様か…

落ち込む私に気を遣ってか、

マタタビが慰めてくれた。


「カグラさんは、もう十分頑張りました。

だから無理しなくても大丈夫ですよ?」


違うんだマタタビ…

私が弱いだけなんだ。

天狗に殺されかけて、

私は怖くなってしまった。

あのときの恐怖が蘇って、

今でも震えが止まらないんだ。

悔しい、怖い、情けない…


「邪魔だぁぁぁぁぁあ!!」


天狗は怒りに身を任せ、

超大規模な竜巻を生み出し、

みんなを襲った。


「「「うわぁぁぁぁあ!」」」


仲間が一人、また一人と倒れていく。

私はただ見ていることしかできない。


「死ねぇ!」


「がぁぁあ!」


ナオトが天狗に斬りつけられてしまった。


「ナオト…」


私は何も成し遂げられない。

弟子一人も救えない。

何が隊長だ、何が妖伐隊だ…

どれだけ強くなっても、結局あのときと変わらない。


「お前らまとめて斬り刻んでやんよ!」


天狗の起こした竜巻によって

次から次へと仲間が倒れていく。

木偶の坊な私に向かってミコトが叫んだ。


「カグラさん、天狗は強いです!

私たちの誰も、太刀打ちできないほどに。

でも、でもきっと、

私たちが力を合わせれば勝てます!

だからカグラさん、諦めないでください!

あなたはみんなの隊長、"風凪カグラ"です!」


そうだ、あのときとは違う。

今の私には、こんなにも心強い仲間たちがいる。

私一人じゃあ、天狗には叶わなかった。

でも、もう負けない…!

みんなと一緒なら!


私は再び刀を握り直し、

風妖術を纏って竜巻に突っ込む。


「はぁぁぁぁぁ!」


私は風を纏ったの刺突で、竜巻をかき消した。


「か、カグラさん…!」


「ちっ!バカ女、戻ってきやがったか…」


「もうこれ以上、私の仲間を傷つけさせはしない!」


私の言葉を聞いてすぐ、将軍様が号令をかけた。


「全員、全身全霊を持って

カグラを援護してください!

ここで必ず、天狗を倒します!」


将軍様の言葉でみんなの戦意が戻る。

戦いはまさに最終局面へと駒を進める…


ーーーーーーーーーー



カグラさんが立ち上がり、

竜巻をかき消したと同時に、

オロチが語りかけてきた。


(小僧、今が好機だ。

奴に接近して殴れ。)


(殴る?刀で斬るんじゃなくて?

俺が殴ったところで効かないだろ。)


(いいからやれ、やればわかる。)


オロチの言葉に不信感を募らせつつも、

マタタビの治療をそこそこにして

天狗のもとへ走る。


「あっ!ナオト!?」


カグラさんが空中で天狗とぶつかり合っているとき、

俺は地面を強く蹴り、足から風妖術を発動して

天狗に急接近する。


「っ!?ナオト!?」


俺はできる限りの力を込めて天狗の顔を殴る。 


「はぁぁぁぁぁぁあ!」


「ぐっ!」


俺が天狗に接触した途端、

一瞬時間が止まったように感じて、

気がついたときにはオロチの精神世界にいた。

そしてそこにはオロチだけじゃなく天狗もいた。



ーーーーーーーーーー



俺が気がつくと空が赤黒く、

地面に水が敷かれた空間に立っていた。

その場には白髪のクソガキとオロチがいた。


「なあオロチ、今何が起こったんだ?」


「お前と天狗の接触を通して、

天狗をこの精神世界に引き摺り込んだ。」


「お前の精神世界だと?」


俺が尋ねるとオロチは俺を睨みつけて言った。


「誰が口を開いていいと言った、

ここではお前に発言権はない。

黙っていろ。」


オロチのその言葉に俺は怯んでしまう。

まだあのときの恐怖が消えないみたいだ。


「そうか!ここならオロチも問題なく戦えるもんな!

二人がかりで天狗を追い詰めると!」


「いいや違う。」


「なんだよ、じゃあなんでこんなこと。」


オロチとガキは良好な関係を結んでいるようだ。

こいつらどういう関係だ…


「こいつが持っている宝玉を奪い返す。

余が直接受け取ることにした、ただそれだけだ。」


「ほへぇ。」


「冗談じゃねえ!

こいつは俺のもんだ!

絶対に渡さねえぞ!」


「随分と偉くなったな、天狗の小童。

余の宝玉、他者の力で強くなったのが

そんなに嬉しいか?

馬鹿馬鹿しい。

返してもらうぞ、余の力。

宝玉がなければお前はただのカラスも同然、

風凪カグラには勝てん。」


「俺があのバカ女に負けるだと?」


「ああ、お前はここで終わりだ。」


オロチはそう言って俺の腹に手を突っ込み、

体内から宝玉を奪い取る。

俺は抵抗できずただ見ているだけだった。


「引っ込め三下、お前を見てると虫唾が走る。

弱者がつけ上がり、

付属的な力で成り上がっただけの凡骨。

ああ、哀れな妖怪、天狗よ。

結局、何も為せなかったな。」


俺はオロチのその言葉を

ただ聞いていることしかできなかった。


「ちくしょうが…」



ーーーーーーーーーー



俺の意識が戻ると周囲に鈍い音が響き渡る。

俺が目を開けると、

カグラさんが天狗の首を切り落としていた。

俺たちは勝った、勝ったんだ!



ーーーーーーーーーー



私は天狗にとどめを刺し、

ナオトと一緒に着地する。

そして仲間の方に向き直り告げる。


「みんなありがとう、私たちの勝ちだ。」


私のその言葉を聞いて、

みんなは叫び声をあげて喜んだ。


お父さん、お母さん。

私は仲間に恵まれた。

これからもみんなと一緒に頑張るよ、

だから見守っててね。


「さあみんな、怪我人の応急手当てをして、

すぐに帰るぞ。」


そう言いながら振り返ったとき…



「全員止まれ、

指先でも動かしたらこの男を殺す。」


アルデバラン殿が倒れたナオトの頭を踏みつけ、

水妖術で作り出した槍をナオトに向けていた。


「ナオト…!」


「アルデバラン殿、どうして…」


将軍様が尋ねると、

アルデバラン殿は悪びれもせずに言った。


「どうしても何も、僕の目的は最初からこれだ。

宝玉をいただく、ただそれだけ。」


アルデバラン殿は足を捻じってナオトを踏みつける。


「あぐぅ、あ…」


続けて語りかける。


「宝玉はこの男が持っているようだ。

渡さないと言うなら、

こいつをアグールに連れて行くが?」


その言葉を聞いて、私は血の気が引いた。

すかさず私は膝をつき、頭を下げて懇願する。


「待ってくれ、頼む!

なんでもする!

だからナオトを連れて行かないでくれ…!」


「妖伐隊の三番隊隊長ともあろう者が、

こうも無様に頭を下げるとはな。

そんなにこの男が大事か?

まあいい。こちらとしても

嵐との戦争は避けたい。

宝玉だけ渡してもらえれば手荒な真似はしない。」


アルデバラン殿がそう言うと、

ナオトは弱々しく体を弄り、

宝玉を手渡した。


「…わかった、これだ。

持っていけ…」


アルデバラン殿は受け取ると

満足そうな表情を浮かべた。


「ふん、それでいい。帰るぞ。か

これでこの田舎に居座る理由はなくなった。」


「了解しました。」


そしてアルデバラン殿は部下を連れて

その場を後にした。

こうして天狗との戦いは、

わだかまりを残して幕を閉じるのだった。



ーーーーーーーーーー



「珍しいですね、

今回はかなり穏便な対応だったのでは?」


「この国は、宝玉を持った大妖怪を討伐できる

戦力がある。

正面からぶつかるとなれば僕に勝ち目はない。

これが賢いやり方だろ?」


「おっしゃる通りでございます。」


「お目当ての物は手に入った。

早く女帝陛下のもとへ…」


そして僕は部下を引き連れて

アグールへ帰還するのだった。











読んでいただきありがとうございました!

今回は天狗戦が決着しました!

次回はカグラの心境に変化が…?


面白いと思っていただけたら、ブクマ・評価・感想をお願いします!毎週月曜日・水曜日・土曜日の20時頃に更新予定です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ