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#14 鞍馬天狗堕落譚:破

「"鞍馬演舞(くらまえんぶ)"」


天狗はその手を緩めない。

私の体を何度も何度も斬り裂く。

私が立ちあがろうとしても

その隙を限りなく潰してくる。

もう、打つ手がない…


(嘘だ、こんなことって…

今までの私の人生は、修行の日々は、

なんだったんだ…)


「おいおい泣いてるじゃないか、

まさか本当に勝てると思ってたのか?

バカな女だ。」


天狗は高速移動をやめ、

座り込む私のもとへゆっくり近づいてくる。


「く、来るな…」


天狗は私の顎を蹴り上げて告げる。


「もったいねえなぁ、

俺に喧嘩を売らなけりゃ、

人並みの幸せを掴めたかも知れねえのによ。

そこまでして俺に一泡吹かせたかったのか?」


天狗は心底見下すような顔で言ってきた。

悔しい、情けない…


「当然だ…お前のせいで、私の両親は殺された!

お前さえいなければ…!」


「うるせぇ、耳に響くんだよ。」


「あぐっ!」


天狗は下駄で私の腹を踏みつける。

私が刀を握り直そうとした瞬間、

扇で私の腕を斬りつけた。


「はぁ、はぁ…ひっぐ、うぅ…」


「一つ聞こう、

お前はこれまでに食べてきた

飯の数を覚えているか?」


「…何が言いたい!」


「俺にとってはよ、人間の命はそれなんだよ。

俺が何人殺してきたと思ってる、お前の両親など、

いちいち覚えてられん。」


「外道め、許さない…!」


「許さなくて結構だ。

そうだな、せっかくだから、

お前の大好きな家族のもとへ送ってやるよ。

感謝しろよ?

俺のおかげで再会できるんだからな。

あの世でいい子いい子してもらえよ。」


「ふざ、けるな。殺してやる…」


「やってみろよ、できるもんならなぁ!」


(お父さん、お母さん、ごめんなさい。

私、仇を取れなかった。

誰か、助けて…)


「死ね!バカ女ぁ!」


天狗は扇を高く振り上げる。

私が死を覚悟したそのとき…


「"風凪流一閃 風哭(ふうこく)"!」


ナオトが、私を助けに来てくれた。

天狗は後退りしてナオトの技を回避する。


「カグラさん、大丈夫ですか!?」


「ナオト…」


「出たな、クソガキ!ぶっ殺す!」


「俺は殺されねえよ、少なくともお前にはな。」


天狗はかなり苛立っている様子だ。

対してナオトは冷静、

天狗と相対しているというのに、

なぜ平静を保っていられる…


「カグラさん、ちょっと下がっててください。

もうすぐマタタビが駆けつけて来ますから、

傷を治してもらってください。

カグラさんが戻ってくるまで、

俺がなんとか持ち堪えますからね!」


ナオトは笑顔で言った。


「ダメだ…!お前が勝てる相手じゃない!

早く逃げろ!殺されるぞ!」


「俺がここで逃げたら、

カグラさんが殺されるでしょ。

そんなの嫌だ!」


ナオトは天狗に向けて刀を構える。

逃げる選択肢はないらしい。


「これは私の戦いなんだ、

私のために死のうとするな…」


「違います、これは俺たちみんなの戦いです。

カグラさんはしばらく休んでてください。

俺たちがなんとかします。」


「ナオト…」


「おいクソガキ、もう十分見栄を張っただろ、

殺していいよなぁ?」


まさに一触即発…

ナオトの天狗の間に重々しい緊張が走り渡る。



ーーーーーーーーーー



(おいオロチ、話が違うぞ。

カグラさん負けてるじゃんか。

こいつ、前よりも格段に強くなってるぞ…!)


(どうやら余の宝玉を持っているようだな。

殺して奪い取るぞ。)


(そんな簡単に言うなよ…

カグラさんが勝てない相手、

俺が勝てるわけねえじゃん。)


(そんなこと百も承知だ。

今のこいつにお前が勝てるはずがないだろう?)


オロチにそう言われて少し傷ついた。

いやわかってたんだけどさ。


(じゃあどうすんだよ。)


(代われ小僧、余が出る。)


(大丈夫なのか?

カグラさんが勝てないってことは、

今のオロチでも勝てないだろ。

それに経った1分で何ができんだよ。)


(お前よりは勝機がある。

少なくとも、奴を弱らせることはできるだろう。

さっさと代われ。)


オロチは相当自信があるらしい。

俺は言われた通り、オロチに体を明け渡す。



ーーーーーーーーーー



「ふっ、あぁぁぁ…」


そして余は表に出てきた。

余が出て来た途端、天狗の顔は青ざめ、

足が震え始めた。


「なっ!お、オロチ…

なんでここに…!」


「オロチ、出て来たか…」


「よう、久しぶりだな、天狗の小童。

まあお前も勘付いていたんじゃないのか?」


「…この前違和感を感じたが、

まさかお前だったとはな。」


天狗はかなり警戒している様子だ。

冷や汗が止まらないらしい。

なんとも無様な顔だ。


「どうしたどうした、怖くて動けないか?

時間がないからな、こっちからいくぞ!」


余は天狗に急接近して腹に拳を叩き込む。

余の拳は深々と突き刺さり、

天狗は声をあげながら吹き飛ばされる。

周囲の木々を薙ぎ倒しながら。


「があぁぁぁあ!」


天狗を遠ざけてすぐ、

余は座り込む風凪カグラに話しかける。


「おい女、いつまでべそをかいている。

お前が知っている通り

余が自由に動ける時間は少ない。

お前も戦え。」


風凪カグラはへたりこんでいて、

完全に強さを打ち砕かれたようだ。


「で、でも私じゃあ…」


弱々しく言い訳を垂れる。


「情けない、前に余とやり合ったときは、

もっと強かったぞ?」


余は風凪カグラを後にし、再び天狗に殴りかかる。

天狗は震えて動けない様子だ。

それもそのはず、

200年ほど前に完膚なきまでにぶちのめしたのだ。

恐怖が全身に刷り込まれているだろうからな。

余の拳が天狗の顔面に直撃し、

辺りに鈍い音が響き渡る。


「ぐわぁぁ!がはっ!げほっ!ぐっ…」


こいつもこいつで無様なもんだ。

これほどの力を持ちながら、

やったことといえば格下狩り。

所詮雑魚は雑魚のまま、か。


「ほーら、さっきまでの威勢はどこへ行ったんだ?

怖くて怖くて動けないか?」


天狗は怯えてその場から動けない。

余はナオトに語りかける。


(お前の刀を少し借りるぞ?)



ーーーーーーーーーー



ちくしょうめ!

俺はあのときより強くなったし、

今は宝玉だって持ってる。

対してこいつは力のほとんどを失ってる。

普通に考えて、俺が負ける理由なんてない。

なのになんで、なんで体が動かねえんだ!


「その大きな翼はさぞ邪魔だろう、

余が切り落としてやろう。

感謝しろよ?」


オロチはそう言って刀を俺の翼に突き立てた。


「ああああああああ!!」


「やかましい、黙っていろ。

余の優しさを無下にするつもりか?」


オロチは刀で俺の翼を斬り裂く。

俺は痛みのあまり声にならない声をあげてしまう。

俺は抵抗できず、ただ翼を刈り取られるだけだった。

切断された箇所からの出血が止まらねえ。

何よりもまずいのは、

俺の得意な高速移動を失ったこと。


「もう片方も落としてやりたかったが、

時間切れだな。

小僧、ここまで弱らせてやったんだ、

あとは頑張れ。」


オロチがそう言うと、

その姿はさっきのガキに戻った。


「はぁ、はぁ、お前ら、どう言う仕組みだ…」


「仕組みって言われるとわかんないな。

そんなことお前に説明してやる義理もねえし。」


ガキは刀を構え、俺を睨みつける。


「お前は多くの人々を傷つけてきた、

ついにはカグラさんまで。

俺はお前を絶対に許さない。

地獄に叩き落としてやる!」


「この俺様を舐めるなよ?

たかだか片翼もがれた程度で、

お前に負けるわけねえだろうが!」


「ああ、だろうな。

けどあいにく、

お前を裁くのは俺だけじゃないんでね。」


「…!!」


ガキがそう言うのと同時に、

背後から大勢の人間が現れた。



ーーーーーーーーーー



そう、天狗が城下町に降り立ち、

カグラさんが森まで追いやってから

かなりの時間が経ってる。

町中の隊員が集結するには十分なほどの。


「ナオトさん、応援に来ました!」


「案外余裕そうだな、無事で何よりだ。」


「ここで全ての因果に終止符を打つぞ。」


駆けつけてくれたのはミコトさん、山下さん、

アラトさん、そしてその他大勢の三番隊の隊員たち。

それだけじゃない。


「遅れて申し訳ありません。

幕府軍、ただいま到着いたしました。」


将軍様率いる大勢の幕府の武士たち。


「ナオト、私も来たよ!

どうすればいい?」


マタタビも一緒に駆けつけてくれた。


「マタタビ、向こうにいる

カグラさんの手当てを頼む。

今ボロボロだから。」


「任せて!」


マタタビはそう言って駆け出す。

これで安心して戦えるってわけだ。


「はっ、見たところ、あのバカ女ほど強い奴は

いねえみたいだが?」


「俺たち嵐は、カグラさんありきの強さじゃない。」


「まあ単体で一番強いのはカグラさんだけどな。

でも、総力戦ならお前とも戦えるぜ?天狗さんよ。」


「こんな烏合の衆で俺に勝てると思ってんのか?」


「烏合かどうか、その目で確かめるんだな。

"魘影拘束(えんえいこうそく)"」


アラトさんが妖術を発動させると、

天狗の体は影で縛られ、動きを封じられた。

俺はその隙を逃さず距離を詰めて刀を振るう。


「ちっ、炎属性を"応用"した影妖術か、

厄介なのがいやがるな。」


「よそ見してんなよ!

"風凪流四閃 風鬼(ふうき)(すい)"!」


「"嵐宮流 梅咲き"!」


俺と将軍様の技が天狗に直撃した。


「ぐはっ!ちっ、やりやがったな!

"破空旋嵐(はくうせんらん)"!」


天狗はすかさず超大規模強風で反撃してくる。

俺たちはなんとか受け身をとって凌ぎきる。


「はぁ、はぁ、この風、

そう何度も喰らってられないな。」


俺が刀を構え直したとき、

ミコトさんが天狗の背後をとり、

その大槌で襲いかかる。


「"鳴神砕(なるかみさい)"!」


ミコトさんの雷を纏った一撃は

落雷のような音を立てて天狗の頭に直撃し、

天狗は地面に叩き落とされた。


「ぐっはぁ!」


そうだ、一人ひとりの力は弱くても、

全員が力を合わせれば、どんな敵にだって勝てる。

ついに天狗との最終決戦が始まる…!



















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