#13 鞍馬天狗堕落譚:序
俺は青空を滑空して城下町に向かう。
町の上空に着いたところで地面に降り立ち、
町中に入る。
俺が町に足を踏み入れた途端に、
周囲の何人かが一斉に襲いかかってきた。
俺は風の覇邪で迎え撃つ。
「"嵐刃爪"」
俺は扇を薙ぎ払い、風の刃で襲撃者の体を切り裂く。
(ふむ、人が少なすぎる。一般人は既に避難済みか。)
俺は扇で襲いくる人間どもを撃退していく。
そのとき、背後から水の細線が
真っ直ぐに迫ってきた。
俺は首を曲げて回避する。
「ほう、強そうな奴が来たな、何者だ。」
そこにいたのは髪の青いガキだった。
服装からして明らかに嵐の人間ではない。
「お前に名乗る名は持ち合わせていない。
あの世に行く者に名乗っても無駄だろ?」
「最近のガキは礼儀がなってねえな。
どいつもこいつもクソ生意気な。」
俺は再び扇で風の刃を放つ。
そのガキは周囲を水の膜で覆い防御した。
「大妖怪天狗様の力はそんなものか?
期待はずれもいいとこだ。」
「はっ!俺の様子見の覇邪を防いだのが
そんなに嬉しいか?」
俺は急接近して直に切り裂き、
水の膜を破壊する。
「くっ!」
ガキは俺の斬撃をギリギリのところで回避した。
だが避けきれずに軽い切り傷がついたようだ。
「おいおい、威勢が消えるのが早すぎねえか?
怖いってんなら見逃してやるぞ、坊ちゃん。」
「一等星を舐めるなよ!
"ハイドロキャノン"!」
俺は迫り来る巨大な水球を風の覇邪で相殺する。
「"天嵐壊斬"」
水球と風の斬撃がぶつかり合い、
辺りを衝撃波が襲う。
こいつ、なかなかできるみたいだ。
「はぁぁぁぁあ!」
続いてそのガキは無数の水の鞭を放ってきた。
俺は持ち前の機動力を活かして回避する。
(防御寄りの水妖術をここまで攻撃に転用してくるか。
かなり鍛え上げているな。
面白い、まだまだ楽しめそうだ!)
ーーーーーーーーーー
速度と覇邪、どちらも圧倒的だ。
これが大妖怪の力か。
このまま戦い続けたとしても、僕は負ける。
「すっかり落ち着いちまったなぁ!」
天狗はそう言って強風を発生させる。
この風圧、身動きが取れない。
(くそっ!)
「ガラ空きだ。」
「なっ!しまっ…」
僕は天狗の斬撃を避けきれず、
真正面から受けてしまった。
「おい、なんだ今の感触は。
お前の体、鉄でできてんのか?」
「さぁ?どうだろうな…」
僕と天狗が睨み合っていたとき、
風凪カグラが駆けつけ、天狗に刃を振るった。
天狗は扇で刀を受け止めた。
「来たな、女ぁ!」
「天狗ぅ!」
天狗と風凪カグラが衝突し、
周囲一帯に強風が吹き荒れる。
両者ともに実力は僕より上、
割って入る隙はない、か…
僕は二人がぶつかり合っているうちに
そそくさと戦場から離れる。
「アルデバラン様、お疲れ様でした。
この後はどうなさいますか?」
「決着がつくまで待機だ。
僕たちはこれ以上戦いには介入しない、いいな?」
「承知しました。」
風凪カグラと天狗、どちらも生粋の風使いだ。
どっちが勝つのか、この戦いは目が離せないな。
ーーーーーーーーーー
私は力一杯刀を押し込む。
力勝負では私に利があるようだ。
「カグラさん、大丈夫ですか!?」
少し遅れてナオトとマタタビが駆けつけてきた。
私はナオトに告げる。
「ナオト!私ごと天狗を吹き飛ばせ!
町の外まで!」
「はい!」
私はナオトが放った風妖術を推進力にして、
天狗を城下町の付近にある森の中にまで押し出す。
「いい加減にしやがれ!」
「うわっ!」
天狗は私を押し返した。
森の中、私と天狗は距離をとり、互いに睨み合う。
この適度な緊張感が、私の力を最大限に
引き出してくれる。
「俺とサシでやるってのか。
一応聞いておく、勝てると思うのか?」
「当然、勝つ!」
私はそう言うと同時に強く地面を蹴り、
天狗に急接近する。
そして風妖術を刀に纏って攻撃を仕掛ける。
「"風凪流四閃 風鬼の翠"!」
「"嵐刃爪"!」
互いの風の斬撃が正面衝突し強風が吹き荒れる。
私は怯まずに連続攻撃を仕掛ける。
オロチは私の攻撃をいなしながら話しかけてくる。
「その剣技、鍛え上げられた肉体、判断力、
どれも一級品だ。
女のくせにやるじゃねえか!」
「私をか弱い女だと思うなよ?」
「確かに、か弱くはないな!」
天狗は反撃に転じ始めた。
私は動きを観察し、斬撃を一つ一つ捌いていく。
そして一瞬の隙をついて技を仕掛ける。
「"風凪流三閃 嵐翔斬"!」
「うおっ!」
私の斬撃が天狗の髪をかすめた。
(よし、いいぞ。このまま落ち着いていけ。)
「よくこれほどの力をつけたもんだ。
俺が今までに戦ってきた奴の中でも
三本の指に入るぞ。」
「当然だ、私は今日まで、お前を殺すためだけに
刀を振ってきたのだからな!」
「随分と恨まれたもんだ。
何か恨みを買うことでもしたか?」
「ああ!お前は私の両親を八つ裂きにした!
私の目の前でな!」
「はてさて、なんのことやら…」
「お前だけは絶対に許さない!
"風凪流五閃 蒼滅乱気流"!」
「"鞍馬演舞"!」
互いが互いの攻撃を相殺し合ういたちごっこ、
戦況が動かない…
「そろそろこっちからもいくぞ!」
天狗は空高くは舞い上がり、
その扇を力強く振り下ろした。
「"破空旋嵐"!」
「うぐっ!」
天狗が起こした台風を軽く超える強風で、
私は身動きをとれなくなる。
この威力、これが天狗の引き起こす風害か…
「俺の風とお前の風、
どっちが上かはっきりさせようじゃねえか!」
天狗は連続で強風を発生させる。
周囲の木々が薙ぎ倒され、森が更地になっていく。
私は地面に刺した刀に必死にしがみつき、
なんとか持ち堪える。
「"翠風護幕"!」
私は風妖術で壁を作り、天狗の技を妨げる。
そして地を強く蹴り、
空へ飛び上がって技を繰り出す。
「"風凪流一閃 風哭"!」
私は風哭で風を切り開きながら接近する。
「へぇ、やるじゃねえか!」
私は妖力を溜める。
次放つのが私の最大火力、
今までに戦ってきた相手で
これを耐え切った者はいない。
「私の最大火力、これで決める!
風凪流六閃 仁旋風神楽狩り"!」
「ぐはぁ!」
私の連続斬撃は天狗の防御を掻い潜り、
その胴体を斬りつけた。
(入った…!私の勝ちだ!)
その斬撃を受けた天狗は地面に落ちる。
手応えあり…!
ーーーーーーーーーー
僕は部下を連れて天狗と風凪カグラの
もとへやってきた。
戦場の様子からして、
かなり大規模な戦いになっているようだ。
そして僕が到着した頃には、
空中で風凪カグラが天狗を圧倒していた。
「あれが風凪カグラの実力、
妖伐隊最強の名は伊達じゃないですね…!」
「案ずるな、今回のターゲットは奴じゃない。」
僕と部下が会話していたとき、
空から天狗が力なく落下してきた。
先の攻撃はかなりの威力だったことが見て取れる。
「アルデバラン様、どうなさいますか?
このままでは宝玉を奪取するチャンスが…」
「一旦様子見だ。
僕が正面からやり合っても、
この二人には敵わない。」
「アルデバラン様でもですか…」
「最低でも第三位レベルでないと、
相手にならないだろうな。」
「恐ろしいですね、風凪カグラ…」
風凪カグラは着地し、
天狗にゆっくり近づきながら言う。
「これで終わりだ、天狗。
私の両親の仇、取らせてもらう!」
天狗はその言葉を聞いた途端、
口角を上げてその扇を振り回す。
すると再び強風が吹き荒れた。
風凪カグラはギリギリのところで回避した。
「まだ動けるのか…!」
風凪カグラの表情には動揺が見える。
憎しみ、怒りに取り憑かれた顔が綻び、
一筋の恐怖が露わになる。
「こんなんで負けるほど、
俺は弱くねえんだわ。」
天狗は口元の血を拭いながら告げる。
依然余裕があるようだ。
「アルデバラン様、加勢しますか?」
「いいや、僕たちは傍観に徹する。
この戦いの決着を見届けるまでな。」
ーーーーーーーーーー
天狗は再び立ち上がった。
私の最大火力だぞ。
傷だって、相当な深さのはずだ。
なんでまだ動ける…!
「お前は俺を怒らせちまった。
百数十年ぶりだ、俺にこれほどの傷を負わせたのは。
お前は楽には殺さない。
四肢をもぎ取り、生き地獄を味合わせ、
ゆっくりとなぶり殺してやる。」
「ひっ…」
天狗は私を睨みつけながら言った。
私はあのとき感じた恐怖を思い出す。
両親を殺された場面を見たときに感じた恐怖、
死を間近に感じるときの、原初の恐怖を。
手と足の震えが止まらない。
悪寒がする。
血の気が引いていくのを感じる…
「本気を出すのは久しぶりだな。
せいぜい楽しませてくれよ?」
「お前はまだ、本気じゃなかったと言うのか…?」
「ああ、二度のお前との戦いの中で、
俺はこいつを使ってこなかった。」
天狗はそう言って体を弄りだし、
体内から宝玉を取り出した。
「宝玉…」
「知ってるか?
この宝玉はいわば、莫大な妖力の結晶体だ。
それを大妖怪の俺が使ったら…」
そう言って天狗は私の視界から姿を消した。
そして目にも止まらぬ速さで私の背後を取り、
背中を思い切り切り裂いた。
「あぐぅ!」
(なんだ今のは…
動きの挙動が一切見えなかった。
私が、見切れないだと…
そんなはずない、こんなことあっていいはずが…)
天狗は私に思考の猶予を与えない。
腹、尻、脛、腿、次々と私の体を切り裂いていく。
「ぐふっ!ああぁぁ!」
私は地に膝をついてしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「おいおい、もう終わりか?
お前ならもう少しできると思ったんだがなぁ。
はっ、震えてるじゃないか、怖いか、嬢ちゃん?」
「く、くぅぅ…」
「前に言ったよなぁ、
泣いても許さねえってよぉ。」
天狗はゆっくりと近づいてくる。
まずい、このままじゃ私は殺される…
終
読んでいただきありがとうございました!
今回は天狗との決戦が始まりました!
次回から戦況は大きく動き始めます!
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