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#12 嵐の前の静けさ

私が駆けつけた場所には、

傷だらけで膝をつくナオトと、一人の男がいた。

その男の見た目は幼い頃に見た天狗と一致する。

やっと見つけた、お父さんとお母さんを殺した、

大妖怪天狗…!


「カグラさん、この子は俺が手当てをします。

思う存分暴れてください。」


「ああ、任せる!」


私は力づくで天狗を押し飛ばす。


「はっ!馬鹿力め!」


天狗は瞬時に態勢を整え、

翼を広げて急接近してくる。

私はその攻撃をギリギリのところで受け止める。


(かなりの速度だがまだまだ対応圏内、

今の私なら勝てる…!)


「"風凪(かざなぎ)流五閃 蒼滅乱気流(そうめつらんきりゅう)"!」


「おもしれぇ!"鞍馬演舞(くらまえんぶ)"!」


私と天狗の互いの連続攻撃技がぶつかり合うが、

互いに喰らうことはない。

現段階では私と天狗は互角…


「ふむ、お前の実力はよくわかった。

軽く飯を食いにきた気分なんでな、

ここで殺し合いをすることは望んでねえんだ。

俺はここで失礼させてもらうぜ。」


天狗はそう言って空へ舞い上がる。

まさに逃げる最中だ。


「待て!私と戦え!

必ずお前を殺してやる!」


「うるせえよ、耳に響く。

キーキー喚くなよ。」


(ダメだ、ここで逃がすわけには…)


そのとき、私の背後からナオトが叫んだ。


「逃げんのかよ!

カグラさんに負けそうになったから、

今度はカグラさんが死ぬまで

身を潜めるつもりなんだろ!?

正々堂々戦えよ!」


「落ち着け、傷がひらけば命が危ないぞ!」


アラトの静止を聞かずにナオトは叫ぶ。

天狗は明らかに苛立っている様子だ。


「お前、まだそんな減らず口を。

いいぜ、乗ってやる!

ここにいる全員、なんて生ぬるいことは言わねえ。

この国、嵐にある全ての人間を皆殺しにしようか。

二日後、俺は城下町に攻め入る。

そこで全てを決めようじゃねえか。

お前の言う通り、俺がその女よりも弱ければ、

この国は安泰だ。

だが、俺が勝てばこの国は終焉を迎える。

散々戯言を吐いてきたんだ、このくらいの

重荷は背負えるだろ?」


「そ、それは…」


ナオトが言い淀んだところで私は遮って告げる。


「構わない、真っ向から相手になろう。

二日後、城下町で待つ。

貴様の言葉、忘れないからな…?」


「どいつもこいつも生意気な。

覚悟しておけ、泣いても許しはしねえぞ、女。」


そう言って天狗は飛び去っていった。

だがこれで、天狗との決戦まで時間を稼げた。

すぐに将軍様に報告して…


「カグラさん、良かったんですか?

城下町で戦うなんて、

たとえ勝ったとしてもかなりの被害が出ますよ。」


「ああ、将軍様に状況を伝え、戦いに備えるぞ。」


「…わかりました。」


そして私はナオトをおぶって拠点への帰路につく。

道中休んでいたミコト、山下と途中で合流して

何があったのかを伝えた。

私たちは城下町に到着し、

ミコトたちにナオトとアラトを任せ、

私は城へ向かうのだった。



ーーーーーーーーーー



「なるほど、そのようなことが…」


「城下町を危険に巻き込んでしまい、

申し訳ありません。」


私は将軍様にことの顛末を伝えた。

将軍様は神妙な面持ちで受け止めていた。


「謝る必要はありません。

ただ、策は考えなければなりませんね。

ここを戦場にするわけにはいきませんから。」


「襲撃される以上、ある程度の被害は

考慮しないといけませんね。」


「ええ、私たちが尽力すべきは、

いかにして被害を最小限に

抑えられるかを考えることです。

妖伐隊の協力が不可欠になります。

備えておいてください。」


「承知しました。」


私は御前から去り、拠点への帰路につく。



ーーーーーーーーーー



俺は拠点に帰ってきて早々、

マタタビに怪我を直してもらった。


「もう!無茶しないでよ、心配なんだから。

今度は私も一緒に行くからね。」


「いやいや、危なすぎる。次天狗と戦うとき、

マタタビは拠点で待機しててくれ。」


「そんなのやだ!

私のいないところでナオトが

殺されちゃうかもしれないじゃん!

私も一緒に行って、いつでも治してあげるから。」


マタタビは涙ながらに訴えてきた。

心配させちゃったみたいだな。


「…わかった。俺たちが戦ってるとき、

マタタビは物陰に隠れててくれよ。

俺がやられたときは治療してくれ。」


「うん!」


そんな会話をしていたとき、部屋の襖が開いた。

そこにいたのはアラトさんだった。


「ナオト、だったな。今少しいいか?」


「はい、大丈夫ですけど、何か用事でも?」


「天狗についての情報提供をお願いしたい。

疲れているところ申し訳ないが、

事態は急を要するのでな。」


「問題ありません、すぐに行きます。」


「私も。」


俺とマタタビはアラトさんと共に

カグラさんの部屋に向かう。

部屋に着くと、そこにはカグラさんとミコトさん、

そして見知らぬ二人の男がいた。

一人は髪が青く、少し幼く見える。

もう一人は黒い服の中年だ。

どちらも、嵐の服装ではない。

ということは…


「えっと、もしかしてこの二人は…」


「ああ、アグールの使節の二人だ。

こちらが一等星の第五位、アルデバラン殿だ。」


「お初にお目にかかる。

今回の天狗討伐、微力ながら協力させていただく。

よろしく頼むぞ。」


「ああ、どうもです。」


アルデバラン、発言だけに注目すれば

助太刀してくれる優しい人だが、

悪人顔すぎるな。

こいつらに背中を預けていいのかな。


「ナオト、早速だが、天狗について教えてくれ。

使う技や性格、情報は多いほどいい。」


「はい、ええっと…」


俺は天狗との戦いを事細かに説明する。


「ナオトさんで歯が立たないとなると、

三番隊で戦えそうなのはカグラさんだけですかね。」


「ミコトさんとアラトさんでは厳しいですか?」


「一概には言えませんが、

サシでやり合うのは避けたいですね。」


「俺もだ。」


周囲の空気が重くなったとき、カグラさんが言った。


「問題ない、天狗は私が倒す。

先ほど戦って確信した。

今の私なら、必ず天狗に勝てる。」


カグラさんは慢心しているんじゃない。

あくまでも現実的な推量だ。

カグラさんのその言葉を聞いて、

俺たちの雰囲気が和らいだ。


「であれば、私たちが考えなければならないのは、

いかにして天狗とカグラ殿をぶつけるか、

ということですね。」


アグールの使節の黒服が言った。

続けてアルデバランが話し始めた。


「僕の考えた策だ。カグラ殿を城下町の

中心部に待機させ、その他雑兵を

あちこちに点在させる。

そして天狗が襲来した際に少し時間を稼ぎ、

カグラ殿が駆けつけるのを待つ。

これなら高確率でカグラ殿を天狗にぶつけられる。」


「その作戦を将軍様にも共有し、

明日改めて調整しましょう。

大まかな流れはその方向で。」


カグラさんとアルデバランの間で

合意を取れたようだ。

作戦会議を終えて、各々部屋を後にするのだった。



ーーーーーーーーーー



俺とマタタビは部屋に帰ってきてまったりしていた。

そのとき突如として俺と意識は

闇の中へと落ちていき…


俺が目を覚ますといつもの精神空間だった。


「急に呼び出すのやめてくれよ、

びっくりするだろ。」


「そんなことはいい、

言っておきたいことがある。


「なんか話すことあんの?

作戦は大体決まったじゃん。」


「あの異国の者ども、一等星、

アルデバランとか言ったか、

あいつらには気をつけろ。」


オロチは真剣な顔で言ってきた。


「やっぱりオロチもそう思う?

なんかあいつら怪しいよな。」


「あれは何か企んでいる顔だ。

天狗と嵐の決戦を利用して、何かする気だぞ。」


「何かってなんだよ。」


「例えば、天狗を倒して弱った隙に

嵐を滅ぼす、とかな。」


なんて物騒なことを言い出した。

俺の心のどこかでそんなわけないと

思う部分があるが、

絶対ないとは言い切れない。

オロチの推測はよく当たるからな。


「いくらなんでもそこまでするか?

なんの理由があってそんなこと…」


「単純に、奴らの国力が増す。

何か理由がなければ、わざわざ他国の

問題に首を突っ込んではこないだろう?」


「まあ、それは確かに…

じゃあそのこと、カグラさんにも伝えるべきかな?」


「やめておけ。今のあいつは天狗の

ことしか見えていない。

言ったところで無駄だ。

それに余の言葉を信じるとは思えん。」


「そうは言ったって、何もしないってのは…」


「少なくとも今は、な?

いずれ奴らは大きく動く。

そのときに怯まず動けるよう備えておけ。

ひとまず、天狗を倒すことに集中しろ。」


「それもそうだな。」


俺が現実世界に戻ろうとしたとき、

オロチが静止して言ってきた。


「待て、もう一つ言っておく。

風凪カグラの実力を過信するなよ。」


「なんだよ急に。別に平気なんじゃないか?

今日だって勝てそうだったし。」


「あの女、危ういぞ。

今日の任務、奴は冷静さを欠いていた。

宿敵を倒すことに固執している。

その危うさは隙になる。

つけ込まれたら負けるぞ。」


「それはそうかもしれないけどさ。

実力では上回ってるって言ったし…」


「余が言ったことを忘れたか?

実力は必ずしも勝敗に直結しない。

勝負は時の運、何事にも用心しておけ。」


オロチはそう言って指を鳴らし、精神世界を閉じた。

アルデバランの目的、カグラさんの憎しみ、か。

無事に戦いを終えられたらいいんだけどな…













読んでいただきありがとうございました!

次回から第1章嵐編が佳境に入ります!

お楽しみに!

面白いと思っていただけたら、ブクマ・評価・感想をお願いします!毎週水曜日と土曜日の20時頃に更新予定です!


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