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発表会  作者: 森谷
1/1

半分フィクションです。

エッセイのような、小説のような。

最後に恋人ができたのはいつだったか、、、

独り身の男は休日、いや休日に限らず余計なことを考える。


雨だから外に出れない、うん、仕方がない。

YouTubeを見て本を読んで寝落ちしてを繰り返す休みの日。


何のために働くのか。何のために生きているのか。

何のために頑張るのか、そんな答えの出ない事を考えていた。

28歳となった今、周囲は結婚や転職とライフステージを上げていっている。ただ焦って哲学的なことを考えることで自分をごまかしているだけかもしれない。


そんな時にあることに気が付いた。人間は死ぬまで準備と発表を続けているだけではないか。

好きなアーティストのライブに行ったとき、これは幼稚園生の頃に見た 演劇「オズの魔法使い」と同じじゃないか。練習して誰かに見てもらう。ライブは発表会だ。きっとこれはどんな仕事でも同じで、資料を作る、これは準備。クライアントにコンペなのか説明するこれが発表。公務員は?工場で働く人の準備と発表は?と言われたら働いたことがないので分からないが、きっと“準備と発表”の連続だ。

人の一生で考えた時に、恐らく発表は冠婚葬祭に値すると思う。仕事をしてお金を貯めるのも準備だ、

マッチングアプリで恋人を探すのも準備だ。

近くて遠い“結婚”は大きな発表会だ。

だから、きっと意味がなかったと感じていた1週間で別れた恋人も、理不尽に怒られたことも準備のうち。30間近でポテトチップスとカップうどんを一気に食べてしまうのも将来を見据えた準備だ。


僕は明日小さな発表を控えている。

そのために今日も準備をする、ちゃんと起きて、ご飯を食べる、窓の鍵を閉める、コンセントを全部抜く、火が付いていないか確認する、家を出ると決意してから40分。

わずか8畳1Kの部屋で必要以上の確認作業を何度も繰り返す。


「閉めた閉めた閉めた」

「切った切った切った」

「冷たい冷たい冷たい」

火事になるかもしれない

泥棒に入られてしまうかもしれない

「10、9、8、7、6、5、、、閉めた」

頭がおかしくなりそうだ。

何を数えているのかもはや自分でもわからない。

「7、6、5、4、、、切った」

もう疲れた

6、5、4、3、、

一向に0にならないカウントを頭の中で続けている。


そうして毎日繰り返すルーティンを行い、過呼吸気味になりながらも意を決して家をる。

電車に乗るまでその不安は消えない、

「閉めた閉めた閉めた、、、」呟きながら家から少しずつ離れる。


“人生は失うものを増やしていくゲームだ”どこかのロックスターがそう言った。

28歳の僕にはまだ失うものなんて一つも無かった。


ようやく着いた駅のホーム。

10月半ばで涼しい風が吹いているにもかかわらず、じっとりと嫌な汗をかいている。

しっかりと確認をして準備をして今日も家を出ることができた。

アナウンスが聞こえる

「危ないので黄色い線の内側にお下がりください」

内側は誰から見ての内側なのか、考える。


何も考えずに幸せそうに生きている人を見ると腹が立つ、こんなに必要のないことを考えて、頑張っていきているのに報われない。何も得られない。何のために生きているのか分からない。

あれだけ好きと言ってくれた人は3日後に音信不通になった。

僕が悪いのか、いや時代が悪い政治が悪いSNSが悪い。

28年間準備と発表を繰り返してきた。もう十分頑張った。


電車が来る。


タイミングを計る、

10、9、8、7、6、


強迫性障害は大変だ。始まった原因は分からない。

病院に行ってもカウンセリングは何も意味がない、薬が処方されるだけ。

そのくせ診断料は高く、アホくさくなってやめた。

何も変わらない日々、朝から奮闘すしている事なんて誰にも気づかれないまま。

知ってほしいとは思わない、助けてほしいなんて言わない。

僕は一人でやっていけるから、大丈夫。準備と発表を何度も繰り返してきた。


5、4、3、2、1、、


読んでいただきありがとうございます。

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