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7-1-1.

 全速力で、空を駆ける。

 エアさんがヘヴィーレインさんの手を引き、わたしとソニアはソルトの背に乗っている。

 不安と緊張がごちゃ混ぜになったような感覚で、全身がふわふわする。

 城塞都市も心配だし、神樹の森も心配だ。

 その上、精霊が誰かひとりでも消えてしまえば、世界全体に影響が出るという。

 あれこれ考えすぎているのはわかっているのに、考えずにはいられない。

 焦れば焦るほど、自分のいる場所がわからなくなってきて、ぐんぐん通りすぎる景色に頭がくらくらするようだった。

「クリスお嬢様、きっと大丈夫です」

 そっと、背中に手が置かれる。ソニアだ。

 後ろから見ていて、わたしの焦りと不安を感じ取ってくれたらしい。

 ひとりでは抱え込まないと決めていたのに、視野が狭くなっていたみたいだ。

「ありがとう、もう大丈夫」

 意識して、深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。

 わたしには、素敵な家族や仲間がいる。

 王都で、懸命に無実を訴え、誤解を解こうとしているはずのお父様やお母様もそう。

 屋敷を守るために武器をとってくれた、エル兄様やシェリル姉様もそう。

 エアさんやソルトも、屋敷に残ってくれたスノーやヒートもそう。

 ダークナイトさんやヘヴィーレインさんもそうだ。

「見えた!」

「……煙が上がっているっすね」

 エアさんの声色に、ぞくりとする。

 怒っている。当たり前だ。長い時をかけて守ってきて、ようやく復活した神樹の森を焼かれているのだとしたら、穏やかでいられるわけがない。

「下りよう、まだ間に合うはず!」

「皆様、私は一足先に行かせていただきますわね。焼いた後は消えてしまう魔法の炎でしょうから、どこまで効果があるかはわかりませんけれど、できるだけ沈めながら追いつきますわ」

 ヘヴィーレインさんが、すいとエアさんの手を放す。

 危ない、と思ったのは一瞬で、ヘヴィーレインさんは魔法で水の塊を足元に作り出して、優雅に着地した。しぶきをあげて魔法の水が消えると、着地したヘヴィーレインさんがひらひらと手を振ってくれる。

 あれだけの魔法が使えるなら、ひとりで動いてもらっても大丈夫だろう。

 わたしたちは森の中心、つまりは神樹を目指して速度を上げた。

 眼下にいる火の兵士たちがこちらに気付き、槍や矢を放ってくる。ここまではほぼ届かないので無視もできるけど、森を壊されながら進んでこられるのは嬉しくない。

「わたしたちがなんとかする。エアさんとソルトは先に行って!」

「クリスさん……ありがとうございます」

 神樹を守るのは、エアさんたちの使命だ。

 わたしはエアさんに大きく頷いて、ソルトの背からソニアと一緒に飛び降りる。

 速度アップをふたつと、身体能力強化、魔力伝導率アップ、魔法範囲アップの五つを重ね掛けしたロッドを振りかざす。

 わたしのロッドの一番の魅力は、魔力伝導率アップだ。

 これはわたしだからこそ最大限に効果を発揮できるバフで、頭の中で思い描いた魔法式を、そのまま出力できるくらい、魔力の伝導効率を高めてくれる。

 着地は、ヘヴィーレインさんの真似をした。わたしとソニア、ふたりが着地できる大きさの、やわらかい土のクッションを作って、その上に降り立った。

「な、子供とメイドだと? どうしてこんなところに……とにかく捕らえろ!」

 ソニアが、槍をくるりと回して構える。

「後ろは私にお任せください。挟撃を防がねばなりません」

「うん、気を付けてね!」

 ぐるりと周りを見回す。ちょうど、火の軍勢のど真ん中に割って入った格好なので、前も後ろも、鎧やローブをまとった兵士ばかりだ。

「ストーンバレット、アースウォール、クリスタルレイン……いっけぇ!」

 魔力伝導率アップのおかげで、思い描いたイメージをそのまま魔法にして、操れる。

 ロッドの先から生み出したいくつもの魔法が、兵士たちを飲み込む。

「なんだこいつ、うわあああ!」

「この、くそ、硬い! ぐはあっ!」

 魔法をかいくぐってわたしのところまできた兵士が、剣を振りかぶる。

「なっ、消えた……?」

「消えてないよ、後ろに回り込んだだけ」

 わたしには、ロッドとは別に、魔法結晶を五つまではめられる腕輪がある。

そっちに、速度アップと筋力アップの結晶をふたつずつ付けてあった。

「よい、しょっと!」

 片手で兵士を持ち上げて、ぽーんと投げ飛ばす。

 筋力アップをふたつ付けてあるからこそできる、まさしく力技だ。

「なんて力だ……本当に人間か!?」

 スピードで翻弄し、力で圧倒し、魔法で制圧する。

 戦うのは楽しくないけど、この場を早く終わらせて、エアさんたちに追いつきたい。

「後ろは片付きました。ここからは私も……と思いましたが、もう終わっていますね。さすがはクリスお嬢様です」

 わたしは、小さく息を吐く。バフ魔法の恩恵を受けずに、ひとりで後ろにいた十数人を片付けてきたソニアの方が、実はとんでもないよね。

 ソニアに笑いかけて、無事を喜ぼうとしたその時、神樹の方で大きな爆発音がした。

「なんですか、今のは……」

「エアさんとソルトが心配、行こう!」


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