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JCと地の文

「いっけな〜い! 遅刻遅刻〜!」

 私、八十場(やそば)ユリア!

 どこにでもいる普通の中学ニ年生!

 今日はこのノベルヶ丘中学に転校してきて最初の登校日! どんな出逢いが待っているのか、今からとっても楽しみ! 運命の人巡り合っちゃったりなんかしちゃうかも!?


 ――ってそんなこと言ってる場合じゃない。早く学校に行かないと。

 私は通学路を全速力で走った。その時だった。

「痛っ!」

 私は何かにぶつかって尻もちをついた。

「いてて……」

「大丈夫ですか?」

 何やら超絶イケボな声が聞こえてきた。

 まさかこれって漫画とかである運命の出逢い? 白馬の王子様がついに現れた?

 胸が高鳴るのを感じる。ドキドキが止まらない。

 私はおそるおそる目蓋を開いた。

「立てるかい? 手貸そうか?」

 そこにいたのは、超二枚目ハンサムボーイ……ではなく、バーコードハゲの中年男性だった。最悪だ。

「いえ大丈夫です。すみません。前見てなくて……」

 私は自分でゆっくりと立ち上がった。

「あれ……君もしかしてユリアちゃんかい? 今日転校してくる」

「えっ!? 何で知ってるんですか!」

 キモい。なんでこんなオッサンに存在を認知されてるんだ。嫌すぎる。

「生徒の名簿で見たんだよ。僕は君のクラスの担任の薔薇園優雅(ばらぞのゆうが)だ。これから一年よろしくね。ユリアちゃん♡」

 うわぁ……嫌だ。こんなキモいやつのクラスでこれから一年過ごすのが嫌だ。大体なんで台詞にハートマーク付いてんの。エロ漫画でしか見たことないわ。

「ユリアちゃん、そういう漫画読むんだ」

「えっなんで!?」

「だって地の文に書いてるじゃん」

 うわ、なんだコイツ。なんで私の地の文読めてるんだよ。キモちわるいな。

 さっきから人のことをキモいキモい言わないでくれないか?傷つくんだよ結構。僕ちゃん泣いちゃう!

「あんた私の地の文勝手に使ってんじゃないわよ!」

 え〜ダメなの〜。

「あんたが地の文に入ってきたら、これが誰視点の小説なのかメッチャクチャのシッチャカメッチャカでわけわかんなくになっちゃうでしょうが!」

 全くなんて人が私の担任になってしまったんだ。本当に最低な気分だ。

 でもこんな風に二人で一つの地の文を使うの、なんか初めての共同作業って感じがして素敵♡

「だから入ってこないでよ地の文に! 私がそう思ったみたいになっちゃうでしょ! 地の文がなんなのか知らないの!?」

 でもそんな怒った顔もかわいい♡

 ペロペロしたい♡

「さっきからセクハラまがいの発言ばっかりしないで。訴えるわよ」

「言ってないよセクハラ発言なんて」

「言ってるでょ自覚ないの。マジで絶対訴えるからね」

「いや言ってないよ。だって全部地の文で言ってるもん。地の文と台詞は違うんだよ。わかる? あっ、もしかして地の文がなんなのか分かってらっしゃらない?(笑)」

 うざい、殺したい。

「いくら生徒でも先生に『殺したい』なんて言っちゃいけないな、先生怒っちゃうぞ! プンプン」

「言ってないわよ地の文なんだから」

 あー本当に最悪だ。大体なんでこんなキモいやつと喋ってるんだろう私……、ん?

「しまった! こんなことしてる場合じゃない! 早く学校行かなきゃ!」

「待って! ユリアちゃん」

 私が走り出そうすると、先生が呼び止めた。

「なんでよ!? 時間無いんだけど! 大体先生だって早く学校行かなきゃマズいでしょ」

 私がそういうと、先生が無言で私に指をさしてきた。

「ちょっと! いきなり人に指ささないでよ!」

「いや、君じゃなくて、後ろ」

「えっ?」

 私は後ろを振り返る。遠くに学校の校舎が見える。

「君の通う学校、あっちだよ」

「あっ……」


 ――今ちょうど、授業開始のチャイムが鳴り響いた。

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