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第八話。

「……見ましたね」

 リリスが飛行服のサクラギに詰め寄る。

 ジト目だ。


「は、はいっ」

 サクラギが直立不動になった。

 場所は飛行艦の上部甲板、可変翼飛行艇が横にある。


 ジ~~~~


 リリスが、サクラギの瞳を直視しながら顔をよせた。


「ひうっ」

 ――か、顔が近っ

 ――甘くていい香りがっ


 真っ赤になった。


「ふふんっ」

 リリスが、サクラギの真っ赤な顔を見ながら満足したように笑う。


 彼女の種族はサキュバス。 


 男性を惑わすのはほまれだ。

 彼女たちにとって、”男性の精力”は、上等なお酒かお菓子のようなものである。


「ふふっ」

「で、どうでしたか?」


「私のスカートの中身は?」


 まるで天気でも聞くかのような、リリスのサキュバスムーブ。


「ぶふうっっ」

 思わずサクラギがふいた。

 リリスがさらに顔を近づける。

 紅い瞳があやし気に輝く。


「あ、か、と、とてもきれいですっっ」

 大声で叫んだ。


 清楚なメイド服。

 白い肌に黒いショーツ。

 ガーターベルト。


 ざわっ

 ざわざわ


 周りに整備員が集まってきた。


「よろしいっっ」

 リリスが勝ち誇る。

 そのままさらに顔を近づけた。


「お、おいっ」

「まさかっ」

「ぶちゅっといっちゃうのかっ」

「うらやましいっ」

 整備員ズだ。


 もう少しで唇と唇が触れる。


 ギュッ


 サクラギが硬く目をつぶった。


 スッとリリスの顔がそれて彼の首筋に。

 結果的に、彼女の着やせする胸をサクラギに押し付ける。


 チュッ


 口をつけた首筋に黒いの紋様が浮かぶ。


「”夢魔サキュバスの口づけ”、これであなたは私のもの……」

 マーキングだ。

 耳元でささやいた。


「あ、あ、あ」


「うふふ」

 リリスが、艶然と笑いながら去って行った。


「お、おいっ」

「大丈夫かっ」


 サクラギの返事が無い。

 立ったまま気絶していたからだ。


「メディッ――ク(衛生兵)」

 サクラギが、医務室に搬送された。



「ふふふ~~ん」

 リリスが鼻歌交じりに外部通路を歩く。 


「あら、ご機嫌ね~」

 アルテだ。


「ふふふ、なかなか上質な、”おのこ”を見つけましたので」


「まあっ」


 サキュバスの男性おのこに対する嗜好(しこうは様々だ。

 たくさんの男性をつまみ食いするような者もいれば、枯れ専やショタコンもいた。

 手を出さず、”推し活”に専念する者も。


 リリスはグルメだ。


 じっくりと、ねっとりと


 一人の男性の


 恋慕や愛情、性欲や私生活を味わい尽くす。


 子育てもOkだ。


「あっ」

 サクラギだ。


「うふふ」

 リリスがあやしげに笑う。

 彼の首筋に黒い紋様が浮かび上がった。


「ひうっ」


 サクラギがおびえたように走り去った。


「彼なのですね~」

 のんびりとこたえる。


「……姫様……」

 リリスのほの暗い紅い瞳。


「あ~、盗りませんよ~」

 ――私はカイラギ様の方が好み

「しかし……」


 うふふ


 少しうつむいて、悪魔的に笑うサキュバスの侍女を見ながら、


「サクラギ様、ご愁傷様です~~」


 アルテはサクラギに同情したようにつぶやいた。

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