第四十三話。
アルンダ―ル王国の王都、”パンデモ”は、何物も通さない強固な防御結界に守られている。
城を中心に空と地中に球状に展開されていた。
張られていないのは、南北の大手門と東西の小門だけである。
城塞用の強力なバリアーだ。
ちなみに限界を超えると《《割れる》》と言われている。
敗走した王立騎士団は、”パンデモ”に命からがら逃げ落ちた。
二階建ての高さの城壁と同じ高さの両開きの大手門がぴっちりと閉じられていた。
防御結界のため入ることが出来ないワイバーン騎士たちは、各地の自分の領地に逃げ帰っている。
騎馬と同じように、ワイバーンは各自の貴族の家の所有物なのだ。
大手門の前には、王国騎士団を追ってきたアジ―ンの軍が陣を張っていた。
その数、約2500人。
内わけは、辺境騎士団約1500人、妖魔兵団約500人。
ユキメ族が約500人である。
1000人いたユキメの数が半分に減っていた。
自分のハーレムマスターとなる殿方を得た(略奪した?)ため、里に帰ったからだ。
味方の辺境騎士団からも、何人か殿方がさらわれているらしい。
ユキメたちは、人よりも妖精や妖怪に近いの存在なのである。
ブンブンブン
アジ―ン軍の上を巨大な影を落としながら二艦の鉄の船が通り過ぎた。
城の中と外にいる人たちが同時にざわめく。
”朧月”と、”アッシュオブイグドラシル”である。
二艦は少し離れた平原に着陸した。
「ただいま帰りました~」
「ただいま帰りました」
アルテとイーズナが、アジ―ン王の陣幕に入りながら言った。
「おかえり」
アジ―ン王が座っていた椅子からゆっくりと立ちながら言う。
「よくぞ無事で……」
隣に立っていたかっ色の肌のハーフエルフ。
イーズナの母、シーラヌイだ。
「ははは、よく帰ったあ」
ガバア
アルテの母である、マユキがアルテとイーズナを両手に抱き締めた。
イーズナの頭一つ分くらい背が高い。
「はいっ、お母さまっ」
「はい、義母上」
二人が抱き返す。
「……で後ろの御仁たちは?」
シーラヌイが、抱き合っている三人の後ろを見ながら言う。
「はじめまして、私はハナゾノ帝国空軍少佐、飛竜三段空母、朧月艦長、”カイラギ・カイト”と申します」
「アルテ王女様をお送りする任務により、ここに来ました」
儀礼用の軍服、脇に艦長帽をはさんだカイラギが答えた。
「あ~、私は、シルルート王国(海賊)騎士団団長、”シャラフィファン・カイラギ”だ」
「イーズナ王女を送って来た」
「アッシュオブイグドラシルの艦長(首領)をしている」
ハーフエルフのシャラフィファンが言う。
海賊のキャプテンの格好である。
「我が娘を無事送り届けてくれてありがとう」
アジ―ンが、カイトからハナゾノ帝国の親書を受け取りながら、穏やかな声で言った。
「ええっ⤴、ここまでよくしていただいたのですよ~」
アルテが満面の笑みをカイトに向けながら大声で言う。
「そうか~」
アジ―ンが大きくうなずいた。
「ふ~ん、なるほどね~、マスターを見つけたか~」
茶髪に茶色の瞳。
伝説のハーレムマスター、シューゾー・マツオカと同じ色だ。
親し気に話をしているカイトとアルテを左右に見ながら、マユキが小さくつぶやいた。




