第四十話。
春が来た。
アルンダ―ル王国の首都、”パンデモ”の南。
なだらかな丘陵地帯が広がるガードナ平原に、アジ―ン王とマジ―ン王弟の軍が集結した。
アジ―ン王の軍は、その数三千。
その軍勢は独特であった。
中央に、ユキメとスノーオーガーの白い女性の集団、千。
黒髪に紅い瞳のユキメたちは民族衣装である白い、”KIMONO”に身を包む。
眷属であるスノーウルフに、ユキメとスノーオーガーは乗っていた。
左翼には、付近の辺境騎士団、千五百。
右翼には、ゴブリンやコボルト、オークやオーガーの混成部隊である妖魔兵団。
”ゴブリンナイト”は、紅い帽子をかぶりダイヤ―ウルフにまたがる。
コボルトは身長が普通の人と同じくらいある、”ハイコボルト”に種族進化していた。
オーガーは思い思いの巨大なハンマーやサイスを持っている。
全てが王国の紋章が入った清潔で美しい制服や鎧を身にまとっていた。
整然と整列する姿に高い規律が感じられる。
アジーンの二十年にわたる宥和政策の賜物であった。
対するマジーン王弟の軍は王国騎士団と一般兵士、その数五千。
戦場に現れた白くて美しい女性の集団に、スカーリ騎士団長が、
「戦場に女かっ、あいつらは好きにしていいぞっ」
その場にいるもの全てに聞こえるように大きな声で言った。
五千対三千。
この戦力差なら普通は王弟軍が勝つはずだ。
もう勝っている気になっているのだろう。
あーんなことやこーんなことを想像して、下ひた笑いや下品な言葉を言いながらどっと沸く王国騎士や兵士たち。
内戦だというのに、兵士たちに自国民の暴行を許したスカーリ騎士団長である。
◆
辺境騎士団の男たちが話している。
「聞いたか?」
「ああ」
「ユキメたちに、”略奪”が許されたんだろう」
「そうだ」
「協定が結ばれて二十年か」
「昔、五人のユキメに砦が一つ墜とされたんだろう」
「ああ、(ユキメに気に入られた)男が一人連れ去られたな」
「怖いなあ」
「子供のころ悪い事したら、ユキメやユキオニにさらわれるよってよく言われたよな」
「うんうん」
「まあ、ユキメたちは情が深くて一途だし」
「種族特性、”良妻賢母”を持ってるし」
「でも、浮気したら怖いぞ」
「大事なトコロを凍らされるんだっけ」
「まあ、恋人が居たり妻子持ちには手を出さないけどね」
その時、ユキメたちを好きにしていいと言われた王弟軍がどっと沸いた。
「ああ、ああ、可哀そうに」
これからユキメたちに、”略奪”される王弟軍の男たちを見た。
隣にはマスター(パートナー)のいないユキメやスノーオーガ―の(超重たい)女性が千人。
腰まで伸ばした濡れ鴉色の髪。
白い、”KIMONO”。
白い、”足袋”に、”雪駄”。
白い狼に横向きに座る。
紅い瞳と唇。
この世離れした超絶美女が、こちらを見て薄く微笑む。
「ひ、ひいい」
「お、おいっ、”略奪”の対象に俺たち(辺境騎士)は入っていないだろうなあ」
「た、多分、大丈夫だと思う……」
男たちが、縮み上がりヒュンッとなった。




