第二十九話。
「にぎやかになったな」
竜騎士である、”ギルモア・ラフロイグ”が言った。
身長約180センチ、金髪碧眼である。
飛竜飛行艇三段空母、”朧月”の三段目下層、飛竜舎だ。
後ろには、自分と契約している貨物竜、”ピーテッド”。
その前に、アルテ王女のグレーターワイバーン、”マカロン”。
ピーテッドの横に、クファルカン忍軍の、”大鴉”三羽。
”マカロン”の横に、ワイバーン飛行隊の、”ファイヤーワイバーン”三騎。
が並んでいた。
「忍法、写筆の術」
若い女性の声がした。
声がした飛行隊員用の待機所に向かう。
テーブルの周りに、褐色の肌のハーフエルフが三人。
一人は肩とお腹を出した軽装の女性、”イーズナ第二王女”だ。
テーブルには、何も書かれていない巻物。
その上に柄の先に光の輪がついた小筆が宙に浮いている。
「むっ、書が来たな」
サラサラと巻物に小筆が文字を書きだした。
『無事、氷原洞に到着、指示を待て。 不知火』
「これは……」
ギルモアが巻物を覗き込んだ。
「ニホンゴだよ、クファルカンで暗号に使う」
――元は異世界語らしいな
「ギルモア……殿だな」
イーズナが振り返らずに答える。
「ああ」
ギルモアとイーズナの間にピリッとした緊張が走る。
”龍の女神”と、”魔の幼女神”は敵対している。
”竜と竜騎士”と、”魔族”もお互いを敵と思う人もいるのだ。
ギルモアが、備え付けの薄いコーヒーをカップに入れた。
「吸っていいか?」
騎士服の内ポケットから煙草とオイルライターを取り出す。
「むっ」
残り二人のハーフエルフが身構えた。
シノビは、煙草など匂いのつくものは嫌う。
「ふんっ、好きにしろ」
イーズナが無愛想に言う。
「悪いな」
ピンッ、シュボッ
オイルライターを開いてフリントを擦る。
少し離れたところで煙草に火をつけた。
窓の外には巨大な海亀。
艦は、アーケロン級飛行要塞《神社》に随航して、ニャンドロスの首都、”ヤマタイ”に向かっていた。
◆
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ
真っ白い雪原を白い狼が、荒く息を吐きながら走る。
大きさは小さめの馬くらい。
スノウウルフだ。
スノウウルフの種族特性で雪の上に足跡を残さない。
その背中には、もこもこの防寒具に身を固めた男性。
銀髪で普通の服の大柄な女性。
肩とお腹、太ももに褐色の肌を出した女性。
が乗っている。
天気は晴れているがキラキラと雪の結晶が舞った。
「ダイヤモンドダストだ」
大柄な女性が言う。
「さ、寒いねえ~、シーラは寒くないの?」
男性が、褐色の肌の女性に聞いた。
「平気です。 足袋の中に唐辛子を少々入れてますゆえ」
彼女は、サバイバル術に長けたクノイチだ。
軽装であるほど防御力が上がる。
「なんだ、アジ―ン、暖めてやろうか」
大柄な女性だ。
彼女の種族は、”スノーオーガー”。
平均体温、約38度。
高体温で寒さに適応した。
ちなみに近縁種である、”ユキメ”は、約26度。
低体温だ。
恋愛でもなんでも体温を上げてくれる、”アツイオトコ”が大変好まれる。
「また後でね、マユキ~」
「お、氷原洞が見えて来た」
遠くの山の間に白く光る屋根が見えた。
遠くに白い山脈、”白氷山系”。
巨大な六枚翼の古代龍、”冬将軍”が棲まう山だ。
レンマ王国とハナゾノ帝国の間の、”白眉山系”まで移動し辺りに、”冬”をもたらす神龍である。
”氷原洞”は、高い山に囲まれた盆地の中にある。
ユキメ族とスノーオーガー、そして彼女たちのハーレムマスターを含めて大体人口一万人。
盆地の真ん中には、温泉湖。
その熱を逃さないように、ユキメたちの種族特性で天井に氷で透明なドーム状の屋根を作っていた。
三人を乗せたスノウウルフが、氷原洞の大門の前まで来た。
門の前には、大柄な初老の男性と小柄な女性が立っている。
「待っていたぞ、マジ―ン王」
マユキよりも大きな身長に白髪交じりの頭髪。
頬には大きな傷、がっしりとした体格。
「久しぶりですね~、トーガ」
マジ―ンが答えた。
「うむ」
元王国騎士団長であり、氷原洞の太守として派遣されている、”トーガ”である。
「世話になるぞ、”ミユキ”」
マユキだ。
「お待ちしておりました。 マジ―ン王陛下、マユキ姉様、シーラヌイ義姉様」
凍えるような美人が答えた。
身長約160センチくらい。
肩上で切りそろえた濡れ鴉色の髪。
抜けるような白い肌に紅い唇。
白い和服を着ていた。
ユキメ族の里長である、”ミユキ”だ。
「とりあえず中へ」
「はい(ハーレム)マスター」
”トーガ”と、”ミユキ”は夫婦。
正確に言うと、トーガはミユキハーレムのマスターである。
氷原洞の建物の中に入った。
「イーズナに無事を報せるため、書を送ります」
シーラヌイが白紙の巻物と小筆を取り出した。
「忍法、写筆の術」
手に持った小筆の柄の先に光の輪が出た。
『無事、氷原洞に到着、指示を待て。 不知火』
”シーラヌイ”は、”ニホンゴ”でサラサラと巻物に書いた。




