第二十四話。
アーケロン級が、国境近くに到着するのに約三時間掛かった。
「にゃにゃ」
「ふにゃ~~」
「つかれたにゃ~~」
「もうむりにゃ~~」
「たてにゃいにゃ~~」
三時間、「使役の舞」を舞い続けた猫妖精達が五人(匹?)床に倒れこんでいる。
フレッドが、そっと隣の間に目くばせをした。
パンッ
という音と共に、隣の間のふすまが勢いよく開いた。
「キャアア、ネコちゃんよ~~」
「お世話するのよ~~」
「ブラッシングよ~~」
「お風呂よ~~」
「ツメきりよ~~」
「ネコ吸いよ~~」
「ん、ネコニャーーン」(←平坦な声)
本殿に、人魔族は言うにおよばず、ハーフエルフやダークハーフエルフの(超猫好きな)メイドたちが踊り込んだ。
「にゃっ!?」
「にゃああああああ」
五人(匹?)の猫妖精達が、メイド達にもみくちゃにされながら運ばれていく。
彼らの受難はこれからかもしれない。
ぜえぜえ、はあはあ
ミャトが五芒星の真ん中で片膝をついて座り込んでいる。
息が荒い。
白い巫女服が、汗に濡れて肌にへばりついていた。
透けた肌色。
サラシを巻いたスレンダーな胸のコントラストが艶めかしい。
「さ、ミャト様も行きますか」
フレッドが、ミャトを横抱きにした。
お姫様抱っこである。
「ちょっ……」
ミャトの驚きの声。
「……今、汗で匂うから……」
消え入るような小さな声。
「湯殿へ行きましょう」
フレッドが優しい声で訊いた。
コクン
とミャトが首を縦に振る。
「一緒に入りますか」
「……馬鹿っ……」
小さくつぶやくミャトのネコミミが、最大限にふせられていた。
◆
「大変ですっ」
「鉄の空飛ぶ船が近づいてきますっ」
プラン
一人(匹?)の猫妖精を、両脇に手を入れて抱えたメイドが大きな声で言った。
「えっ」
フレッドとミャトが神社の外に走る。
二人とも風呂上がりなのだろう。
少し頬が(特にミャト)上気していた。
左右には、猫の狛犬。(←”お松大権現”に実際にあります)
その先の鳥居を抜けた。
アーケロンの首の下は、ナール河の銀色の流れが見える。
その正面に、長さだけはご神体と同じくらい巨大な船が浮いていた。
ブン、ブン、ブン
と不思議なモノを回しながら近づいてくる。
所々焼け焦げた跡が見えた。
その先端には旗が掛けられている。
「どこかの国旗と、氷の結晶の紋章」
「それと、異世界の文字で、”忍”の旗」
双眼鏡を覗きながらフレッドが言う。
「ふむ?」
ミャトの多分何もわかっていない顔。
「どこの国かはわかりませんが、”外交船”かもしれません」
「それと、アルンダ―ルのアルテアレ第一王女とイーズナ第二王女が乗っていると思われます」
フレッドが旗を見て判断した。
「……とりあえず話をしましょう」
フレッドがミャトに言う。
彼は元々、”外交官”としてニャンドロスに来ていた優秀な男なのだ。
ネコの魅力にコロンダのだが。




