第二十二話。
この世界の大型の飛行生物は、バードストライク(鳥などの衝突)のために、”防御障壁”のスキルを持つものが多い。
ファイヤワイバーンとブラックワイバーンは一枚。
グレーターワイバーンは二枚。
飛竜は五枚。
防御障壁を超えないとダメージを与えることは出来ない。
かっ色の肌、少し尖った耳。
黒い瞳。
黒髪を高い所で束ね、後ろに長く流している。
黒い大鴉の上で、”イーズナ”は、腰に吊るした金属の輪を取り出した。
直径約三十センチ。
三角形の刃がついていた。
ジャキン
一振りし、重ねていた刃を展開。
三方に均等に広がる三枚の刃。
刃の部分が銀色に輝く三角形の中心には梵字のような模様が刻まれている。
円輪刃だ。
左手に、円輪刃。
右手は、人差し指と中指を立てた、抜いた不動剣印。
「忍法、”風魔手裏剣”」
左手を振ると円輪刃は回転しながら飛んでいく。
ガッ
ファイヤワイバーンの防御障壁だ。
ガッ、ガガッ
回転する三角の刃で防御障壁が破れた。
そのままワイバーンの翼を破る。
落ちていくワイバーンと騎士が、”落下速度制御”の術式を使うのを見ながら、
「飛行艦からワイバーンを引き離せっ」
「煙幕を使うぞっ」
イーズナが残りのシノビに指示を出した。
「御意っ」
二羽の大鴉が左右に散る。
右手をひるがえすと円輪刃は戻って来た。
イーズナが飛行艦の前に移動する。
艦橋の前でホバリング。
「飛行艦、”朧月だな、ついてこいっ」
「義姉上っ、ニャンドロスに亡命しますっ」
イーズナが広域無線で叫んだ。
◆
カイラギは、飛行艦、”朧月の左舷の艦橋の窓から、黒い大鴉が追い越していくのを見た。
「黒髪の少女?」
むき出しの肩と太もも。
褐色の肌だ。
正面にとどまる。
「飛行艦、”朧月だな、ついてこいっ」
「義姉上っ、ニャンドロスに亡命しますっ」
広域無線から少女の声。
「!」
「全艦全速、大鴉の少女についていけっ」
「了解っ」
操舵手がレバーを操作。
残っている三方のティルトローターを前向きに。
「両舷出力最大っ」
バアアアア
艦後部下部のプロペラが最大で回り始めた。
「アルテ王女、帰ってきてくださいっ」
ワイバーン部隊を艦の後方に引き離した。
「煙幕散布」
二羽の大鴉が白い煙を出しながら艦の後ろを飛ぶ。
艦が白い煙で見えなくなった。
敵ワイバーン部隊、撃墜三、で残り九騎。
味方は、グレーターワイバーン、飛竜、飛行艇。
第Ⅳ小隊のワイバーン三騎、シノビの大鴉三羽。
同数になった。
「敵ワイバーン部隊、攻撃を断念した模様」
妥当な判断である。
「全騎(機)、帰投せよ」
「助けてくれた皆様も着艦してください」
とりあえず、
イーズナとシノビの大鴉三羽。
第Ⅳ小隊のワイバーン三騎。
を上部甲板に載せ、ナール河を目指す。
河の向こうがニャンドロスだ。




