井口がためにキノコは哭く その5
エルヴィティティスを営業トークにて、強行説得しなんとか現場監督権を手に入れた井口君だが、現状は変わっていない。
とにかく残り時間で、時間稼ぎまでの準備を終えねばならない。
強く強大な相手に立ち向かったという点では、日本人と生まれた人間なら知っているかもしれない。
第二次世界大戦中の日本兵は、特攻や自爆攻撃などで恐れられているとよく言われているが、実のところアメリカ兵などが恐れたのは、徹底したゲリラ戦である。
つまり奇襲、夜襲、罠、時には地元民に紛れ攻撃する、狡猾かついつ襲われるか休みなく攻撃し続けることで、圧倒的物量攻撃のアメリカ群に『卑怯日本人』とまで言わしめるほど、トラウマと恐怖を与え苦戦させ続けたのだ。
その中で数にも質にも量にも全てに劣り、国家レベルの格差に対抗するためには、苦い自身の現実を直視する以外になかったのだ。
つまるところ特攻における自爆戦法という純粋な『引き算』を相手に強制することによる、強硬策であった。
強大な相手に対し、弱者が取れる戦略は『犠牲』で戦うを井口君は思い出していた。
なんとか最小限の犠牲で抑える...
時間稼ぎのためにも、まずは生木と枯葉を集め、火を焚き煙による撹乱と、身を隠すカモフラージュ装備の準備をせねば。
エルヴィティティスから許可を得たので、自分のベニテンズに対し、指示出す様に連絡。
全体を監視班A、煙幕班B、カモフラ班Cに分け、各グループに作業方法を伝達していった。
「ここからは、時間勝負だな...
監視班は2匹1組で動いて、敵を監視しながら互いを監視。
敵か味方に何かあったら詳細を含めて連絡してください。
煙幕班は一定間隔で煙幕を準備し、合図と共に火を焚いてください。
カモフラ班は21着の作成が完了次第、順次前衛から着用させてください。
終わったら、21本分の丸太を準備してください。
エルヴィティティス様分は、作らなくていいです。
どうせ目立つんで。
では、全員『丸太は持ったか!』」
この再現だけは、死ぬ前にやりたかったベスト10位に入るシチュエーションだ!とテンションがおかしな方に傾いている井口君であった。
声をあげたと同時にベニテンズは行動を全員開始する。
その光景を横目に、徐々にトップとしての自信を喪失していく金色キノコであった。
【ベニテンズ残り:21体】




