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混ぜ御社

後日記載

混ぜる。


料理、ビジネス、スポーツなど様々な分野で『混ぜる』ということは、新たなものを生み出すのに欠かせない選択肢の一つである。


ただし、混ぜる行為の結果については、一概に良い結果になるとは到底言えない。


とあるクッキーと牛乳を混ぜたら雑巾の味がしたり。

ソーセージに生クリームを付けても、美味しい料理とするには程遠い。


つまり、何も考えずに混ぜればそれ相応の「結果」になるのは当たり前なことで。


良い結果にしたいのならば、ものの特性を理解した上で混ぜるのが、成功の可能性を上げる近道である。


まぁ、怖いもの見たさで、混ぜてみちゃうという衝動は35歳の中年のおじさんにとって、刺激の足りていない日常への小さな反抗を満たす最高の娯楽だった。


混ぜた食べ物がどれほど不味かろうと、一つの罰ゲームとして受け入れるのも、好奇心と欲求を満たすには十分な対価であった。


ただ一つ、その後に待つ後悔というのは後から考えたところでまったくもって意味をなさないものである。


と目の前の光景に唖然としながら、自分のした行為を大いに後悔し続けていた。


戻ること3時間前。


ブラック会社勤務社畜サラリーマン俺こと、井口裕之は22時に仕事を終わり、近くの緑が目印のコンビニで夜食のサラダビーフンとビールを買って、自分の巣へとようやくたどり着いたところだった。


1DKアパート入り口の郵便受けから、郵便物を出しそのまま部屋に戻る。


「あー会社行きたくないいい」


そう言いながらベッドに倒れ込む。

動きたくないにも関わらず食欲には貪欲らしく、ビール片手にコンビニで手に入れた晩飯にありつく。


「いつまでこんなことしてるんだろな」


もういい中年にも関わらず、彼女も婚約相手もなし。

学校時代の友達は皆結婚して、幸せな家庭に恵まれている。


自分だけ社会に取り残され、ゆっくりと老いて行くのを考えないように、自分の時間を削って頑張ってきたつもりだったが。。。。


「このまま俺死んでくのかなぁ....」


ビールを片手に天井を見上げ、ため息をつきながら呆然としていた。


ふと郵便物の一つのチラシが目に留まる。


「短期アルバイト募集!

 高額即日支払い!旅行代、欲しいもののある貴方必見!


新薬治験アルバイト/日給3万円


株式会社ニュージェネレーション

こちらにご連絡ください!」


普段は目に留まるはずもない、バイトチラシが月末に向けて金欠状態の俺の興味をひかないはずもなく、気がつけば。


バイト応募サイトから、申し込みを完了させていた。


バイト内容というのはどうやら、送られてくる薬品を飲んでただ日報を送るだけらしい。


「これで3万円とか最高すぎる!

 1週間で15万とか...海外旅行も夢じゃないな笑」


怖いもの見たさで、応募ボタンをポチる。


と郵便受けにゴトンと何かが投函された音が聞こえた。


「なんか注文したかな?」


郵便受けを確認するとたった今応募した治験薬の会社の名前「株式会社ニュージェネレーション 治験薬」

と書かれた荷物が届いていた。


「え?今応募してばっかりで?

 即配達??A○azonもビックリだぞおい....」


とりあえず荷物を開けてみると、中には説明書とどう考えても見た目が某「お尻に刺してちゅっと注入」の座薬にそっくりなお薬が入っていた。


「え?これって入れるタイプのアレやん....

薬と聞いて飲み薬を想像してた俺が悪かったわ....」



とりあえず見た目から、使い方はお察しだろう。


いそいそとトイレに駆けこみ、お薬を後方部から注入を済ませてくる。


「あっ、結構おっきぃ...って言ってる場合かいな笑」

と自分でノリツッコミをしながら、挿入を済ませふとそのまま手に持った説明書を読むと....


「ニコニコ新世代治験の取り扱い


ご注意!

お薬を使うときは必ず、この説明書を読んでから利用ください!


この治験薬は、人間の可能性を引き上げる薬の治験です。


人間には無限の可能性があります。

しかし引き出すには、その人に合った「解錠」方法が必要です。


本試験薬は人間の「根源」に訴えかけ、根源に応じた能力を0.02%で獲得させます。


利用方法は、「経口摂取」を行ってください。

それ以外の摂取方法については、人体にどのような影響が出ても保証致しません。


また摂取後下記の効能が、発生すると想定されております。


0.03%で獲得した根源に対し、摂取した対象の根源を混ぜる能力を獲得します。

さらに0.04%で混ぜた対象の能力を最大3つまで保管できます。

さらに0.01%でそのまま異世界に飛ばされます。

残り99.9%は爆散即死します。


それでは良い治験ライフを。

生きていたらメールにて報告をお待ちしております。」


トイレにこもった俺の口から出た言葉は一言だけだった。


「いや経口摂取て、あんな形状間違えるやろがああ!」


こうして俺は気を失った。

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