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Phase.1 ハードボイルドの労災

 さて、皆さん。今回はスクワーロウさんはお休みです。あ、でもこのお話はお休みじゃないです。今回はわたしがお送りします。わたしの名前はクレア、スクワーロウさんの事務所で探偵助手として働いています。捜査官だった父の事件をスクワーロウさんに解決してもらったのが縁です。もう、五年くらいになるでしょうか。


「一体誰と話しているんだね、クレア」


 スクワーロウさんは、とても素敵な方です。たまにぶつぶつ愚痴を言っている姿を見かけますが、常にタフな台詞を返すことを心がけ、身も心もハードボイルドに捧げている探偵の鏡のような人です。


「なあ、聞いているのかね、クレア、おーい」


 わたしも尊敬するスクワーロウさんのもとで経験を積んで、いつかはタフでクールなハードボイルドな女性探偵として、活躍したいと思っています。ようやく探偵業が板についてきたとは言え、まだまだ道のりは遠いわけですが。


「さっきから、誰と話しているんだクレア。そろそろ、湿布を張り替えてくれないか。…もうちょっと、自力で立てないんだ」


「あっ!いたたたたッ!もっとそっとやってくれたまえよ!腰が!死ぬ!」


 そのスクワーロウさんはただ今、腰痛…いや、労災…名誉の負傷中です。どうも、仕事中に高いところから無理やり飛び降りたらしくて。


「どうして屋根の上から、飛び降りたりしたんですか?」

「…それが、ハードボイルドだからだよ。ハードボイルドには、やらなければならないときがあるんだ」


 で、全治二週間らしいです。わたしが見つけた時には、事務所のソファの上から動けなくなっていて、本当に大変でした。この二日でやっと、自分ひとりでトイレくらいには行けるようになったみたいですが。


「あー痛かった。これは困った。…すまない、クレア。さすがの私も寄る年波には勝てないらしい。ちょっとここしばらくは、外の仕事は頼むよ」


 これでも臨時休業にはできないところが、個人事務所の辛いところです。しかも間の悪いことに、ここしばらくは立て続けに仕事が舞い込んできていて、私とスクワーロウさんの二人がかりでもぎりぎりだったところなんです。でもここで稼がなかったら、とてもとてもうちの事務所は、営業していけません。


「大丈夫です。ここはわたしに、任せてくださいスクワーロウさん!」

「ああ、信頼しているよ」

「何かハードボイルドな事件が舞い込んでも、このわたしが、びしっ!と一人で解決しますから!」

「分かった。…何か困ったことがあったら、相談してくれ。…で、とりあえず仮眠を取りたいから裏返してくれたまえ」

「あ、はい」

「あいたたたたた!」


 わたしは痛がるスクワーロウさんを、どうにか仰向けにしました。七分も掛かりました。こんなことしている場合じゃないです。仕事をしなければ。待っている人は、沢山いるんです。ここは寝る間を惜しんで働かなくては。






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