異世界でのポンコツステータスと微妙な能力との出会い
目が覚めて最初に見えたのは視界いっぱいの青い空だった。
だがここで「もしかして...夢?」と思うほど俺はヤワじゃない。
ヤワって言うか異世界系の読みすぎって言うか...
まぁともかく、現状確認だ。
俺がいるのは...小高い丘ってところか。
転移前と同じ体だ...この顔は西洋系の異世界だったとしたら珍しいかな?
着ているものは...『中世ヨーロッパ系の世界が舞台の小説の村人』って感じか。
日本人の感覚からしたらボロだな。
なんか痒い。
後は...お、ポケットに何か入ってるな。
袋の中に...銀のコインが十枚。
多分銀貨だな。
...銀貨の価値がそれなりに高いことを願おう。
後は...それだけか。
取り敢えず、当面の目的は生活を安定させることだな。
...やっぱ何やかんや言っても俺、興奮してんな。
長年夢見た異世界召喚だもんな。
いや、だけど生活を安定させた後の目標は元の世界へ帰ることだな。
うっし、方向性も決まったことだし、そろそろ移動しよう。
いつまでも横になっていても何にもならねぇからな。
...ん?
体が軽い...気がする。
ちょっと走ってみる。
思ったほど疲れない気がする。
お?
これはもしかするともしかする可能性がもしかするんじゃ?
ゴホン。
ステータス!
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名前:星野玄人 職業:無職 称号: 能力:【願う】
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うひょー!...お?
んんん?
ステータスのステータスたる数字がない。
俺の筋力は?
魔力は?
体力もスタミナも何もない。
圧倒的に情報が足りない。
これじゃあ俺が強くなったのか気の所為か分からない。
...よくよく考えたら元の数値が判らないから増えたかどうかも分からないか。
後無職て...
学生だって立派な仕事だぞ?
称号も「転移者」とかありそうなもんだけどな...
だけど能力はあるのか。
フフフ...願うってなんか弱そうだけど無いよりましだよな。
むしろこの世界中の殆どの人々が能力を持ってなくて、ごく少数の能力持ち達が猛勢を尽くしているとか...ありそう。
ってかそれワ◯ピースじゃん。
ともかく、そう考えたら【願う】でも強そうだな。
俺はステータスの【願う】と言う文字に集中した。
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能力:願う
説明:願う思いが強ければ、その出来事が起こる能力。
願う出来事によって、願う気持ちの必要量が変動する。
尚、出来事の発生に必要な量以上の願う気持ちは
懇願者の希望に添い、加担される。
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おお、出た!
何々...ふむふむ。
実験あるのみ!
願う気持ちの必要量なんて分かるか!
取り敢えず...ってあれ?
ここ異世界だよな。
...魔物とかいるだろうな。
外の世界めっちゃ危険系異世界だったらどうしよう。
や、やべぇ。
け、剣道の心得はあるから...あとは武器さえあれば...
って、ねぇじゃんどこにも!
こ、これはいかん、武器、武器さえあれば...!
武器〜〜!!
ピカッ
ドッゴーーンッッッ!!!
「のわーーっ!!」
い、いきなりなんだ?
晴天だったはずなのに雷が、それも結構近くに...
あ、この木が直撃されたのか。
あ!
まさか、あれはさっきの俺の願望が...
ん?
なんだ、この棒...
〈玄人は木の棒を手に入れた!〉
あ、実際そう聞こえたんじゃなくて、勝手に思っただけ。
いや、これって武器と呼べる...意外と硬い。
しっかりしていて、ちょうどいい長さだ。
バランスも良い。
やや荒い木刀って感じだ。
なるほど。
これが【願う】の能力か。
...正直言うと微妙だな。
あれだけ必死に願って木刀一本とは...
だけど、何も無いよりかマシか。
持ち手はささくれて無いし。
さて。
どうしよう。
武器もあるし、お金もあるけど...街って何処だ。
流石に木刀一本じゃあ、魔物も狩れないだろ...
ん?
...何か聞こえる。
魔物か!?
「おーい、そこの若いの。そこで何をしてるんじゃ?」
お爺ちゃんが荷馬車に乗って峠を超えてきた。
馬車の中には野菜が沢山。
着ているものは、俺と似た感じ。
まぁ農家だろうな。
「いえ、ちょっと道に迷って。」
「おお、そうか。ルールリアの街はこの道をまっすぐ行った先じゃぞ。その木剣を見るに、お主、冒険者希望者か?」
「え?あ、まぁ、はい。」
会話が成り立っている。
俺は日本語で話しているのつもりだが、口から出てくるのは知らない言葉で...
うーん...異世界だ。
あとまだ冒険者になること決めてないんだが。
じょ、状況によっては検討するかもしれないけど。
「ホッホッホ、若いのぅ。そうじゃ、ちと雇われてくれんか?」
「と言うと?」
「この量の荷物じゃと、儂一人で下ろすにはちと骨が折れるのでな。いつもは息子も一緒に来てくれるんじゃが、生憎風邪を引いてもうて。仕方ないからルールリアンに着いたあと商業ギルドのもんにでも頼もうかと思っとったが、主が頼まれてくれたらその手間も省ける。その代わりに、道中荷馬車に乗せてやるぞい。ここからルールリアンまでは歩いて四時間ぐらいじゃし、歩くのは少ししんどかろう?」
...
「あ、はい、ではお願いします」
俺は馬車に揺れながら確信した。
この能力はご都合主義なのだと。
「してお主、名は何と申す?」
「あ、星野玄人と言います。」
誤字、脱字、その他諸々の難点をお教えください。
全て読み、善処します。
読んでくれて有難うございます。