言い出せ13
ー13話
「2曲。曲繋ぎでいくよ」
「美里さん。だから曲名は?」
美里はいたずらっ子のように笑った。
「近くに行けない。行けないならそっちに行く」
反対側の電柱の観客が割れた。
マイクスタンドの前に、あの日のスカートとトップスの春菜がギターを持って立っていた。
緊張した顔を必死に笑顔にしようとしている。
美里さんがイントロをループさせながら言う。
「小林。春菜さん、曲が終わってから手を振るか、振らないか決めるらしいよ?ちゃんと歌えなかったら、私なら振らないな。おまえ泣き虫だからな。大丈夫か?」
小林はやられたと言う顔で、首を横に振った。
「もう1つ言おうか?これさ、インターネットで生配信されてるから。あそことあそこと、そこにカメラ有るだろ?」
「美里さん。これいつから準備してたんですか?」
「昨日から。通しリハが午前中まで掛かってさ。焦ったよ。で、恭之助!どんな感じ?」
春菜のマイクに肩の張った恭之助が現れた。
手にノートパソコンを持って開いている。
「視聴者70万。海外も含めて。小林智昭の新曲「Haruna」ダウンロード40万。俺の予想だと、配信終わるまでに120万は行くだろう。カラオケフリーダムの勝ちだな。小林くん、ゴールドディスクだおめでとう!」
山崎恭之助の怖さを思い知った。
イントロをループさせていた美里さんが言った。
「じゃあ春菜さん。いくよ!」
春菜が歌い始めた。
観客が一斉にペンライトを取り出して振りだす。
巨大バルーンが膨らんで、空をハシビロコウが漂う。
「やり過ぎですよ!美里さん!」
「止められなら、止めてみて?花火もあるんだけど?」
小林はあきらめて、楽しむ事にした。
春菜のパートが終わり、小林が歌い始めた。
花火は巨大な華を開いて、ハシビロコウを包んだ。
エンディングを決めて、観客は熱狂した。
全員が春菜に注目した。
フフッとイタズラっぽく笑ったあと、大きな手を右手にはめた。
そして、小さく手を振った。
「小林っ。プロポーズ」
美里さんがマイクを外してささやいた。
「春菜。結婚してくれる?」
観客が
セイイエスを連呼する。
「はいっ!」
春菜は駆け出して飛び付いてきた。
小林は抱きしめた。
サブストーリー言い出せなくて 完結




