言い出せ11話
ー11話
レコーディングは、いつものカラオケの作業と同じだった。ただ、小林のボーカルトラックが増えた。
7月7日も、フィメールのアルバムから別テイクバージョンが出た為に作業をしていた。午後2時からなので、30分あれば間に合う。
ふわふわタマゴのサンドイッチで昼飯を済まし、ストラトキャスターとミニアンプなどなどを入れたバックパックをつかんでスタジオを出た。
入口にカギを掛ける。
カラオケフリーダムは、全社員を記念路上ライブに投入した。会社内には誰も残っていない。
その理由は記者会見で社長が言った。
「音楽業界の噂を聞いた。小林智昭のメジャーデビューは完全無視されて失敗するそうだ。人の物は真似できるが、オリジナリティは皆無だそうだ。過去の焼き直しで低迷する、クソ野郎どもに思い知らせてやる。お前らに言われたくないと。カラオケフリーダムは、全社員を投入して日本音楽業界に宣戦布告する」
ネットは二分され、荒れまくった。
しかし、小林のカラオケを聴いて歌った人達は、カラオケフリーダムを支持してくれた。
これを作った人の歌を聴いてみたい。悪い訳がないと…。
音楽業界はカラオケフリーダムの楽曲の使用停止で圧力を掛けてきた。
しかし、人々はこれに反発した。あまりにやり方が汚いと批難され撤回した。
小林は電車を待つホームでネットニュースを開いた。
ーレッドフォードバンクスのボーカル、ジョニーが緊急会見。近藤春菜との2ショットの真相を暴露ー
記事の要約はこんな感じだった。
有名プロダクション社長の息子が、近藤春菜を乱暴目的で自宅マンションに連れ込もうと企んでいる事を知ったジョニーが、先回りして救出した所を写真に撮られた。それを揉み消された。しかし、再度別の女性に乱暴し逮捕された事を受けて、真実を明らかにした。
小林は口下手な春菜から、この話を聞かずに済む事が判ってホットした。
電車が滑り込んできた。
「出撃だ。小林智昭」
開くドアに小林は言った。




