言い出せ10話
ー10話
スタジオに戻ると、稲沢さんが蒼い顔で走り寄ってきた。
「春菜さんと連絡がつかないんだ!」
「見つけました」
「本当か?」
「路上ライブでじゃれてた中学生が芸能記者になってて、彼が助けて知り合いの病院にかくまってくれてます」
稲沢さんは、その場にしゃがみ込んだ。
「小林くんまで、行方不明で。みんなパニックになってる。スマホはつながらんし」
「事情を一斉メールします」
「そうしてくれ」
稲沢さんが落ち着くのを待った。
「訴訟をされるんですか?」
「マスコミにほどほどにしてくれ以上の効果はない。裁判で勝ったところで賠償金30万で、謝罪も記事の差し戻しも意味がない。記事は出てしまった」
「嬉しかった。フリーダムが春菜を信じてくれた。誰も彼も、メジャデビューの為にジョニーに抱かれたのどうのこうの……春菜にそんな器用な事ができる訳がない」
稲沢さんは小林を見詰めた。
「小林くん。みんな君が自殺するんじゃないかって言ってたんだが、君達の絆にキズひとつ無いのかい?」
「不思議に。これっぽっちも疑わない自分にビックリしました」
「羨ましい。そんな男女関係が有るのか?」
「僕も信じられません。この気持ち…稲沢さん」
「なんだね?」
「作業に戻ります。春菜が待ってます」
タケシから逐一、春菜の写真を添付して状況が送られてくる。
スタジオに居ながら、正確な情報を得る事が出来た。
そして、リリアントワネットリリースに目処がついた。
7月7日七夕に、リリースと小林智昭メジャデビューシングル発売、記念路上ライブが決まって、記者会見が7月1日に開かれ発表された。。
春菜は6月の半ばに退院して、8月20日に復帰ライブが組まれた。
カラオケフリーダムは裁判を続けていた。




