終焉の魔王(超短編)
その世界には終焉の魔王という魔王が存在する。ヒューマンは、魔王やその眷属である
魔族の食料としてのみ生きることが許される存在であった。
魔王の絶対的な支配が始まり数千年がたち、その絶対的な支配から逃れ魔王の圧政から
世界を解放しようするレジスタンスが生まれた。
当初は、すぐに消えるものだと思われていたが、一人の天才が生み出した、
召喚魔法によって世界は変わった。
過去の英雄とも言える存在を、呼び出す召喚魔法の開発に成功したのだ。
それから幾多の魔族が滅ぼされ、残るは魔王ただ一人となり、
そして今、英雄たちが魔王の前にたどり着いたのだ。
「魔王、これでお前の最後だ!」
英雄の一撃が、魔王の体を両断した。
「確かにこれではもうだめだなぁ・・・
まだ数分であれば、動けるようだから面白い話をしてやろう」
「まだ動けるのか!とどめを刺させてもらおう。」
「まあ待て、もう戦う力はない。話をするだけだ。」
「今更何を話すというのだ!」
「世界の終わりについてだ」
「魔族の世界は確かに終わったな」
「それではない、この世界全体の終わりだ。」
「此の期に及んで何かするのか!!」
「まあもう長話をする余裕もないし、この玉座の後ろにわしが書いた
手記がある。それを持っていけ。それを読めばわかる。」
「呪いのアイテムで俺を殺す気か!!」
「その本には呪いはない、が確かにその内容は呪いかもな・・・
ああもう疲れた・・・もう長くはないと思うが、良い人生をな・・・」
魔王はそう言って完全に死んだ。
そして1年がたった。
魔王が死んでからすぐは何も起こらなかった。
半年がたつと、森が枯れ始め、魔王の呪いではとの噂が立った。
1年がたつと、魔法が使えなくなっていき、召喚されし勇者もまた一人
また一人と消えて言った。
そして、俺はなぜかあの時の魔王の最後の言葉が気になり始め、
魔王の城の玉座の間にきて、その魔王の手記を読んだ。
たぶんこの手記を読む頃には、世界の崩壊が始まっていると思う。
そして魔王の呪いのせいだとも言われているだろう。
まず、最初に書くが、これは呪いではない。ただ元に戻っているのだ。
嘘だと思うだろうが、まず我々は魔族ではない人だ。
そしてヒューマンと言われる種族は、我々の体に巣食う病原体への
特効薬を生成するために作った生命体だ。
まあかなり人間に近い構造でないとだめだったので、一見旧時代の
人間と区別はつかないが・・・
そう我々魔族と言われる人は、病原体に侵され、変異してしまった人類だ。
そして捕食していたと言われるのは、生成された薬を抽出する作業だったわけだ。
まあヒューマンからすれば、まあ喰われるということに変わりはないがな・・・
まあここまでヒューマンにとってはあまり関係ないかも知れんが、
重要なのは、ここは生物が住める惑星ではないということだ・・・
そして魔法なるものは存在しない。
魔法というのは、この世界を支える環境改造用ナノマシンが起こしている現象だ。
召喚魔法というのは、過去の異物に残ったデータから人物をエミュレートし
動作するロボットを作成するものだ・・・
そのためいくら勇者たちが頑張っても子供ができないわけだな。
そして魔法を使えるものは、我々との混血児のみということだ。
そして、この環境改造システムには一つの制限がある。
それは、管理者不在での動作が許されないことだ。
まあ無制限に増殖されても困るからな。
まあここまで書けば、一部の言葉がわからなくても理解できたとおもうが
我々お前たちから魔族と言われていた人類が滅べば、世界はそれを維持
できずに滅ぶ。
魔法でなんとかできると思っているかも知れんが、お前たちでは権限が足りない。
純粋な人類種でないと権限が足りないのだ。
そして純粋な人類種は全て病原体に感染し、単独で子孫を作ることができない。
そう、我々を倒すときに伝説に残っている我々より弱いと思わなかったか?
それは、わしを含め残った人類はもうすでに諦観していたのだ。
わしらを本気で倒しに来る奴がいたら倒されてやろうとな・・・
これを読んだお前に最後に呪いをかけてやろう。これを読んでいるのが
ヒューマンなら呪いにはかからない。英雄なら呪いすでにかかったはずだ。
不老不死というな・・・
わしの最後の研究の成果で人一人分のナノマシンについては、制御化を離れても
動作できるようにした。
お前はもうこの時点で不老不死だ。食料の摂取や大気すら必要ない。
この星の最後をじっくりと堪能すればいい。
さらばだ・・・・
そして100年がたった。
この星から大気や水は失われ生命はないもない。
俺はまだ生きている。
そして1000年がたった。
まだ俺は死ねない。
そして10000年がたった。
おれは死にたい。
そして・・・