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ジュリアさんが来た  作者: 安良久 理生
19/20

メリークリスマス

今回はちょっと長め、ちょっとだけシリアス。

少し気が早いけど、クリスマスネタです。

 今日は一二月二十四日、クリスマス・イブ。

 山川家では、毎年家族全員が揃って楽しく騒ぐ日だった。

 それが一昨年から少しずつ家族が減っていき、ジュリアを除いて考えると七人居たのが今年は四人になっていた。


 それでも、子供たちのために今年も楽しく過ごそう、そう武志は決めていた。


「今日の夜はジュリアにご馳走を作ってもらうからな。楽しみだろう」

「う、うん……」

 朝、武志は翔と真由に期待してもらえるように言ったのだが、二人ともあまり楽しそうには見えなかった。


 夜。

 ジュリアが一日中時間をかけて作り上げた、子供が好きそうなちらし寿司やパスタ、クリームシチューにクリスマスの主役と言える丸焼きチキンとデコレーションされた白いケーキが並べられた。

 最初はあまりテンションが高くなかったが、それでもジュリアの給仕で美味しい食事をしているうちに、ようやっと翔に笑顔が浮かんできた。

 しかし真由は。


「お母さん……」


 下を向いてポツリとそう、零した。


 それで皆、どうすれば良いのか分からずに動きが止まってしまった。今年は母親がいなくなって、初めてのクリスマスになるのだから、真由が寂しく思うのも無理は無かった。

 ふと真梨子は、自分の背中にジュリアが軽く触れていることに気づいた。見上げるとジュリアが微笑んでおり、自分に何かを促しているのだと分かった。

 真由は今にも泣きそうな顔をしている。


 真梨子は軽く頷くと、席を立って真由の隣にしゃがんだ。

「真由」

 呼びかけて真由の頭をそっと抱きしめると、真由はおとなしく真梨子を抱き返した。泣き出すこと無く一、二分ほどそうしていたが、やがて真由は体を離した。

「ありがとう、お姉ちゃん。もう大丈夫だから。もう泣かないよ」

 それでもまだ少し潤んだ目で真梨子を見上げ、安心させるように笑顔を浮かべた。武志と真梨子が見る、久しぶりの表情だった。


 そこから改めて、パーティが続けられた。

 みんな思い思いに好きな料理を食べ、お喋りをして、心の底から楽しんだ。

 そこでふと、翔が言った。


「そう言えば、今日も雪、降らなかったね」

「そうだなあ。まあこの辺りじゃ、ホワイトクリスマスなんて滅多に無いからな」

「武志さん、武志さん」

「ん、どうしたジュリア」

「武志さんなら、きっと雪を降らせますよ」

「え、どうやって?」

「お得意の親父ギャグの出番ですよ」

「いやいや、何言ってんの」

「大丈夫、武志さんならイケます」

「ホント何言ってんの」


 武志は呆れたように言ったが、ジュリアは妙に乗り気だった。それを見て、真梨子も囃し立ててきた。

「んー、じゃあクリスマスにちなんだギャグをお願いしゃっす!」

「お前まで……」

「大丈夫だよパパ。つまんなかったらつまんないって言うから」

「いや翔、それ言われたらパパショックなんだけど」

「お父さん……」

「……ああもう、分かったよ。そうだなあ、クリスマス、クリスマス。んーっと、あーっと」

 武志はしばらく悩んでいたが、やがて思いついたのか、得意そうな顔でぽんと手を打った。


「なあお前たち、トナカイって大人かい(おとなかい)




 同時刻の夜の街。

 右を見ても左を見てもカップルだらけで、誰もが幸せな雰囲気に包まれたクリスマスの喧騒の中、人々は急に冷たさを増した風に吹かれて空を見上げた。

「あ、あれって雪じゃない?」

「ホントだ、ねえ雪が降ってきたよ」

「あれぇ、予報じゃ晴れだったけどな」

 突如ひらひらと降り始めた雪に、あちこちから歓声が上がり始め、ある一組のカップルも例外ではなくはしゃいでいた。


「見てみて、太郎さん、雪、雪よ!」

「本当だね、花子さん。寒いと思ったら雪になったね」

 二人は手袋をしたままで手のひらを空に向けると、雪の結晶が小さなシミを作った。

「ふふっ、今年はホワイトクリスマスだね」

「ああ、これは神様に感謝しなきゃいけないね、花子さん」

 冷えたからだを暖め合うために、二人はお互いを抱きしめると、そのままそっと口づけを交わした。




「わあパパ、雪が降ってきたよ!」

「ねえねえ、外に出てもいい?」

「いいけど、上着を着てからね」

 翔と真由がはしゃぎ始め、真梨子は自分の分も一緒にコートを取りに行った。


「うむ、雪を降らせるとはさすがです。ナイスですよ、武志さん」

「え? いや、今のギャグと雪は関係無いだろう? え、それとも雪になるくらいつまらなかったか?」

「真梨子さん、お手伝いしますよ」

「あらありがとう、ジュリア」

「おい、ちょっと、放置しないでくれよ!?」


後半がいつものアレでほんとスマン。


次回で完結です。

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