メリークリスマス
今回はちょっと長め、ちょっとだけシリアス。
少し気が早いけど、クリスマスネタです。
今日は一二月二十四日、クリスマス・イブ。
山川家では、毎年家族全員が揃って楽しく騒ぐ日だった。
それが一昨年から少しずつ家族が減っていき、ジュリアを除いて考えると七人居たのが今年は四人になっていた。
それでも、子供たちのために今年も楽しく過ごそう、そう武志は決めていた。
「今日の夜はジュリアにご馳走を作ってもらうからな。楽しみだろう」
「う、うん……」
朝、武志は翔と真由に期待してもらえるように言ったのだが、二人ともあまり楽しそうには見えなかった。
夜。
ジュリアが一日中時間をかけて作り上げた、子供が好きそうなちらし寿司やパスタ、クリームシチューにクリスマスの主役と言える丸焼きチキンとデコレーションされた白いケーキが並べられた。
最初はあまりテンションが高くなかったが、それでもジュリアの給仕で美味しい食事をしているうちに、ようやっと翔に笑顔が浮かんできた。
しかし真由は。
「お母さん……」
下を向いてポツリとそう、零した。
それで皆、どうすれば良いのか分からずに動きが止まってしまった。今年は母親がいなくなって、初めてのクリスマスになるのだから、真由が寂しく思うのも無理は無かった。
ふと真梨子は、自分の背中にジュリアが軽く触れていることに気づいた。見上げるとジュリアが微笑んでおり、自分に何かを促しているのだと分かった。
真由は今にも泣きそうな顔をしている。
真梨子は軽く頷くと、席を立って真由の隣にしゃがんだ。
「真由」
呼びかけて真由の頭をそっと抱きしめると、真由はおとなしく真梨子を抱き返した。泣き出すこと無く一、二分ほどそうしていたが、やがて真由は体を離した。
「ありがとう、お姉ちゃん。もう大丈夫だから。もう泣かないよ」
それでもまだ少し潤んだ目で真梨子を見上げ、安心させるように笑顔を浮かべた。武志と真梨子が見る、久しぶりの表情だった。
そこから改めて、パーティが続けられた。
みんな思い思いに好きな料理を食べ、お喋りをして、心の底から楽しんだ。
そこでふと、翔が言った。
「そう言えば、今日も雪、降らなかったね」
「そうだなあ。まあこの辺りじゃ、ホワイトクリスマスなんて滅多に無いからな」
「武志さん、武志さん」
「ん、どうしたジュリア」
「武志さんなら、きっと雪を降らせますよ」
「え、どうやって?」
「お得意の親父ギャグの出番ですよ」
「いやいや、何言ってんの」
「大丈夫、武志さんならイケます」
「ホント何言ってんの」
武志は呆れたように言ったが、ジュリアは妙に乗り気だった。それを見て、真梨子も囃し立ててきた。
「んー、じゃあクリスマスにちなんだギャグをお願いしゃっす!」
「お前まで……」
「大丈夫だよパパ。つまんなかったらつまんないって言うから」
「いや翔、それ言われたらパパショックなんだけど」
「お父さん……」
「……ああもう、分かったよ。そうだなあ、クリスマス、クリスマス。んーっと、あーっと」
武志はしばらく悩んでいたが、やがて思いついたのか、得意そうな顔でぽんと手を打った。
「なあお前たち、トナカイって大人かい」
同時刻の夜の街。
右を見ても左を見てもカップルだらけで、誰もが幸せな雰囲気に包まれたクリスマスの喧騒の中、人々は急に冷たさを増した風に吹かれて空を見上げた。
「あ、あれって雪じゃない?」
「ホントだ、ねえ雪が降ってきたよ」
「あれぇ、予報じゃ晴れだったけどな」
突如ひらひらと降り始めた雪に、あちこちから歓声が上がり始め、ある一組のカップルも例外ではなくはしゃいでいた。
「見てみて、太郎さん、雪、雪よ!」
「本当だね、花子さん。寒いと思ったら雪になったね」
二人は手袋をしたままで手のひらを空に向けると、雪の結晶が小さなシミを作った。
「ふふっ、今年はホワイトクリスマスだね」
「ああ、これは神様に感謝しなきゃいけないね、花子さん」
冷えたからだを暖め合うために、二人はお互いを抱きしめると、そのままそっと口づけを交わした。
「わあパパ、雪が降ってきたよ!」
「ねえねえ、外に出てもいい?」
「いいけど、上着を着てからね」
翔と真由がはしゃぎ始め、真梨子は自分の分も一緒にコートを取りに行った。
「うむ、雪を降らせるとはさすがです。ナイスですよ、武志さん」
「え? いや、今のギャグと雪は関係無いだろう? え、それとも雪になるくらいつまらなかったか?」
「真梨子さん、お手伝いしますよ」
「あらありがとう、ジュリア」
「おい、ちょっと、放置しないでくれよ!?」
後半がいつものアレでほんとスマン。
次回で完結です。




