真梨子
翌朝。
如何にも眠りが足りていない顔をして、武志と真梨子はコーヒーの入ったマグカップを前にリビングのテーブルに顔を埋めていた。
「おはよー」
昨夜のことを何も知らない翔はすでに朝から元気そうにしている。少し遅れて、真由もリビングに入ってきた。
「二人とも、おはようございます」
ジュリアはいつもと同じく、笑顔で二人を迎えた。
「……おはよう、マ……、おか……、ジュリア」
夜にあったことを意識していたせいか、真由は何度も言い間違いをして顔を赤くした。しかしジュリアはそれを見逃さなかった。
「あらやだ、ママだなんて〜」
朝食作りの途中だったため片手におたまを持ったまま、その手を頬に添えてジュリアも顔を赤くしてみせた。
「こら、あまりからかうんじゃない」
武志が言うと、ジュリアはずいっと武志に顔を近付けた。
「じゃあ、本当のママになるために既成事実を作りましょう、武志さん」
マグカップを口につけてコーヒーを飲みかけていた真梨子は、それを聞いて思わず口からコーヒーを噴き出していた。
武志はどこからともなく、紙でできたハリセンを取り出すとスパーンと豪快な音を立ててジュリアの頭をはたいた。
「ちょっ、武志さん、イタイです、っというか、それどこから出したんですか」
ジュリアはわざとらしく叩かれた場所を手で押さえ、涙目をした。
「子供がいる場所でそんなことを言うんじゃありません」
武志はそう言ったが、子供たちはよく理解していないため、不思議そうな顔をしていた。
「それなら、真梨子さんが既成事実を作りますか?」
「なっ!!」
しばらくむせていた真梨子は、ジュリアの爆弾発言を聞いて、今度は顔を真っ赤に染めて固まってしまった。
そこにもう一度、スパーンという音が響いた。
「ほら、真梨子も困っているだろうが」
「ふふっ、そんなことは無いですよね、真梨子さん」
ジュリアは何か悪戯っぽい笑顔を浮かべて真梨子を見た。
「い、いやその、あの……、それはどうでもいいから、朝ご飯はまだ?」
「あら、わたしとしたことが、申し訳ありません。すぐにお持ちしますね」
ジュリアはそそくさとキッチンに戻っていった。真梨子は頰に手をやり、自分の顔が赤くなっているであろうことを確かめつつ、そっと武志を見てため息をついた。
(あれって、ジュリアなりに背中を押してるのかなあ。わたしが兄さんのことを好きだって気づいていて。だったら、わたしも覚悟を決めないといけないか)
今週中には完結に持っていけるかな?




