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これぞ、悪役令嬢!


『まだ戻りたくない』『いっそこのままばっくれよう』とダダをこねるリオン様を引っ張ってパーティ会場に戻る。


このパーティは学園主催とはいえ、王族のリオン様が長く席を空けるのは良くないに決まってる。


「なんだ?騒がしいな…」


リオン様が顔を顰めてパーティ会場を見る。確かに、パーティの騒がしさとは別種の、あまり感じの良くないざわめきが聞こえてきた。


パーティ会場に入り騒ぎの中心に近づくと、そこに居たのは私のよく知る人物だった。


「シェーラ様、マーガレット様、リリィ様?」


私の言葉に3人が振り返ると、その奥に隠れていた金髪にレモン色のドレスの少女が見えた。


「えっ、ソフィー様まで?」


何事なのだろう。


だいたい、パーティで騒ぎを起こすなんてシェーラ様たちらしくない。


「まあ、アリア様!殿下とご一緒だったんですね」


シェーラが嬉しそうにこちらを見て言うと、すぐにソフィーの方に向き直った。


「ほら、やはり殿下はアリア様一筋なのよ。身の程をわきまえなさい。」


冷たい声でソフィーを睨みつけてシェーラが言う。


…うん?どういう流れ?


「シェーラ様…それくらいに…」


マーガレットはアワアワしながらシェーラを宥めているので、横にいたリリィにコッソリ耳打ちする。


「何があったんですか?」


「それが、シェーラ様が『アリア様を差し置いて殿下と三回も踊った男爵令嬢に一言言ってやりに行く』と仰って、話してる内に口論になって…あちらの男爵令嬢様の声高くてよく響くでしょう?だんだん注目が集まってしまったんです。」


確かに、ソフィーの声は目立つ。

というか、パーティ中に口論なんかしたら普通に注目が集まるだろう。


「マーガレット様とリリィ様も苦言を呈しに?」


「いえ、マーガレット様はシェーラ様を止めようとして逆に連れていかれてしまって。私は何となく面白そうだから来ました!」


目をキラキラさせてリリィが言う。


…そうだった、リリィはドロドロの恋愛小説が大好きだった。それにしたって、伯爵令嬢のノリが愉快犯ってどうなの?


うーん…事情は分かったけど、やっぱりシェーラらしくない。


注意深くシェーラを観察する。


口では元気そうに(って言い方も変だけど)喧嘩してるけど、何だか顔色が悪い。


「シェーラ様「私、わかってます!」


私がシェーラに声をかけようとしたのをソフィーが遮った。


「シェーラ様はこんな事進んでする人じゃありません!きっと、アリア様に無理矢理…」


そう言いながらソフィーは涙ぐんだ。


え!私?!

あ、でも元といえば私と殿下とソフィーの問題だったっけ。コレ。


「そうですね。」


注意がこちらを向いたので私はシェーラ様の前にでた。


「貴女の意見には全面的に賛成ですわ。まずシェーラ様、このような事をするのは貴女らしくありません。もしかして、体調が優れないのでは?」


私はシェーラの額に手を当てた。うーん、熱はないか、寧ろ低いくらい。表情はぼんやりしてる。


「マーガレット様、リリィ様。シェーラ様をお願いします。今日は部屋に戻った方が良いでしょう」


私の言葉にマーガレットはホッとしたように頷いた。リリィがこの場に残りたそうにしていたのは見なかったことにしよう。


「さて、ソフィー様。話の続きは場所を移してからにしましょうか?」


なるべく友好的に微笑んで告げるとソフィーは顔を青くしてしまった。


あらら?ダメだったかしら?


「ソフィーちゃん、大丈夫?」


その時、颯爽と王子様のように現れたのは赤茶の髪に黒い服のチャライケメン。ソルガだった。


「ソルガ様…」


ソフィーが縋るようにソルガを見上げる。


「ごめんね、一人にして。どうしたの?」


「私が悪いんです。リオン様と三回も踊ってしまったから」


ソフィーの言葉にソルガは眉を顰めた。


「もしかして、それでアリア様におこられちゃった?なら俺が悪いよ。申し訳ありません、アリア様。殿下に彼女と踊っていただけるように頼んだのは私なんです」


ソルガが真剣な顔でこちらを見てくる。


…素敵!あの軽いソルガがこんな事をするなんて!攻略はすぐそこ…ってそれじゃダメなんだって!


こんな時にリオン様は何をしてるの?!


慌てて辺りを見回すと、リオン様は騒ぎの外れで優雅にワインを飲んでいた。


…リオン様、騒ぎに飽きたんですね。自由すぎます。


リオン様がグラスから視線をズラしてこちらを一瞥する。おおう、あの顔は『こんな茶番はさっさと終わらせろ、阿保』の顔だ。


グルっと顔の向きを変えて二人の方を見ると、何故かソルガが苦笑いを浮かべていた。


「そうですね。今回はソルガ様の顔を立てて許して差し上げましょう。でも、次は無いですからね!」


ビシッとソフィーに人差し指を突きつける。


ふふふ、これぞまさに悪役令嬢!


「ぶほっ」


何故かソルガがむせ返った。


「よしっ…行こう、ソフィーちゃん。俺、これ以上ここにいたら…」


肩を震わせながらソルガはソフィーの肩を抱いて去っていく。


…もしかして私、笑われてた?




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