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  mamiさんから、おれのツイッターにフォロー申請があった。


  これは一体、どういう事だろう。


  今までのおれ達の言葉の投げ掛け合いは言わばお互いの腹の探り合いのような所があり、決して現実的に交わるものではなかった。


  それと言うのも、mamiさんに会いたいと思いつつも今のおれには彼女にパソコンの中ではなく現実で会って貰えるだけの価値があるのか、という不安があったからだ。


  何度でも言うが、今のおれはただの引きこもりだ。


  第一mamiさんが好きなのはおれ自身ではなく、おれが昔書いた小説なのだ。

  会って幻滅されるなんて予想するだに恐ろしい。


  ともあれ、おれはmamiさんに会いたい。とても会いたい。

  幻滅されるよりもそっちの気持ちの方が何倍も強いし、何よりおれは顔にだけは自信がある。

  mamiさんより結構年上だが、彼女はおれのルックスを気に入ってくれるだろうか。

 

  ツイッターで繋がれば、その会いたいという願いが叶う確率はぐんと高くなると思う。


  さっきまで「面倒くさい小娘」なんて思っていたのに、我ながら現金なものだ。

 

  ツイッターのフォロー申請は勿論、一も二もなく承認する事にした。


  「mamiさんですね。よろしくお願いします。」


  簡単に返信すると、彼女は3分後には、


  「亜流タイル先生、昔からファンでした(o^^o) よろしくお願い致しますm(_ _)m」


  という返信をしてくれた。


  分刻みでおれの動向をチェックしているらしい。

  そういう所が、怖いどころか孤独なおれの心にかえって温かく染み渡る。


  おれはここで、決意の表明として栄美や聖良に後押しされて書く事にした同人誌についてツイートする事にしたのだった。


  「2、3年振りに小説を書く事にしました。今度の夏のお祭りで出す予定です。久しぶりの事で緊張バリバリですが、是非手に取って頂けたらと思います。」


  次のツイート。


  「普段あんまり外に出ないんですが、当日は素城栄美さんのスペースで売り子する事になりそうです。気軽に話しかけてやってください。」


  本当は人見知りのおれに対して誰でも彼でも気軽に話しかけて貰っちゃ弱るのだが、もしかしたらイベントにmamiさんが来てくれるかもしれない。


  ーー会いに来てくれるかもしれない。


  そうと決まれば執筆活動開始だ。


  学園異能モノ。

  主人公は先祖代々から伝わる魔剣の使い手。

  次々と転校して来る魔族達をバッタバッタと切りまくる。


  そして勿論、正妻ヒロインのモデルはmamiさん。


  おっとりとして、人を元気付ける才能に長けているがちょっとヤンデレ。主人公に少しでも女の影がチラつこうものなら速攻で主人公に黒魔術をかけ、動けないようにする。


  ヤンデレなんて設定したら怒るかな。しかも黒魔術の使い手なんて。


  ツイッターの画面を見る。

  先程のツイートにmamiさんがいいねのボタンを押していた。

  イベントが近くなったら、また改めてその日の予定を書くからね。

  mamiさん、会いに来てね。




  ーーと、そこへ、またも黒い悪魔が遠慮せずにおれの城にバタバタと駆け込んでくる。


  「ぜんぜん売れないラノベ作家ーー!!」


  「栄美……。」


  プロット作りがノリノリになった途端に邪魔しに来る(としか思えない)この女は、おれ用の思考盗聴アンテナでも付いているのか(C◯AGE&AS◯Aさん)。


  「売り子ちゃんが1人来られなくなったあ!!」


  「知るかよ。」


  こいつはどうして、売れっ子なのに売り子は知り合いじゃなきゃ嫌、なんていう我儘を言うかね。


  栄美は、黒い肌を見せつけながら無理難題を言う。


  「佑樹にいの友達で誰か紹介してくれない?」


  「……お前ケンカ売ってんのか。」


  分かってるだろう。引きこもりのおれに友達なんか……1人いた。中嶋聖良。


  「お、思い当たる線があるね。」


  おれの表情の変化を目ざとく見付けると、悪魔は「じゃあその人で。」と勝手に決めてしまった。


  「そいつは漫画同人誌に興味とかあるやつじゃないから。」


  「漫画同人誌を知らなくたって、お金の勘定さえ出来れば良いから。」


  どうしてもおれの知り合いが良いらしい。

  おれはしぶしぶ、聖良に頼み込んでみる事にした。




  これもまた、いざこざが起きる1つの要因になるとは知らずに。


 

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