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  おれの作品が書籍化し、また出版社から発売予告も出して貰えたという事で、おれはまたもや匿名掲示板の亜流タイルトピックが気になり始めた。


  何しろここ1年弱、mamiさんとのツイッターデートにかまけてエゴサーチをしていなかったからな。

  まあそのmamiさんにもフラれた訳だけど。


  ……いや、フラれたんじゃない。あれは一方的におれがmamiさんを傷付けたのだ。

  mamiさんは粘り強いけど打たれ弱いから身を引いたんだ。


  mamiさん。もうちょっとでプレゼントを贈るから、ちゃんと本屋さんに行ってね。

  そう心の中で呟くヤンデレのおれ。


 

  久しぶりに行く匿名掲示板の『ラノベ』ジャンルを開けてみる。

  おれの知らない、沢山のラノベ作家の名前のトピックがズラリと並ぶ。

  色んな作家さんがここを見て一喜一憂してるんだろうな。そう考えると感慨深い。


  逆に傷付く事を恐れて一切読んでない人も多そうだが。

  まあ、そっちの方が賢明なんだろう。渡ツネオもそうしていたようだし。確認取ってないけど。


  おれは早速『亜流タイル』トピックを探してみた。


  あった、あった。


  開いてみると、さすがは発売予告が出されたばかりなのでそれなりに書き込みがあった。



  「2月1日? 結構間が無いな」


  「去年出した同人誌のやつだろ? 面白かったけど改訂版ってどれくらい改訂するんだろうね」


  「それだな。書き下ろしが付いてるならともかく殆ど同じなら財布の紐も……」


  「でもイラストは全部描き下ろしなんだろ? 素城栄美のイラストだけでも買う価値あるし」



  ここでも出てくる素城栄美。

  やっぱりおれはアイツにかなり助けて貰ってるんだな。大事な幼馴染兼仕事仲間だ。

  でも出来れば小説の方を話題にして欲しい。


  スクロールを続けると、こんな書き込みを見つけた。



  「皆さん、去年の同人誌で登場したヒロインどんな感じに思いました? あ、ネタバレはNGでお願いしますm(_ _)m」



  ……顔文字だ。mamiさんか?

  まさかこんな所で会えるなんて。


  何しろ、初めてmamiさんと出会ったのもこの掲示板のこのトピック上でだ。

  おれは懐かしいような、ちょっと泣きたい気分になった。



  その書き込みに対しては、こんな返答が返って来た。


  「ネタバレがイヤならこんなとこ覗くなよ」


  それに対する返答はこれ。


  「ごめんなさいm(_ _)m ヒロインについて語り合いたかっただけなんです」


  やっぱりmamiさんだ。

  mamiさんマスターのおれが言うのだから、そういう事で間違いない。

 

  でも本当はヒロインについて語り合いたかった訳じゃなくて本の内容で盛り上がりたかっただけなんだろう。


  そのレス主……mamiさんは、こんな事まで書いていた。


  「イベント行って初めて知ったけど亜流先生ってイケメンだね( ^ω^ ) 」


  気に入ってくれたのかおれの顔。

  イケメンと言ってくれてありがとう、mamiさん。おれはウキウキした。


  「顔買い笑笑 これだから俄かは」


  等と揶揄されつつ、mamiさんは掲示板から去っていったようである。


  おれに怒られてすぐさまフェイドアウトする。

  ツイッターアカウントを消して、ブログも消す。そんな彼女。


  徹底していると思われたmamiさんだが、匿名掲示板にはまだいるようだ。

  そして勿論、おれのツイッターも見ているのだろう。


  しかし、おれのトピックに作者たるおれ自身が覗いてないとでも思っているのだろうか。


  発売日直前なのだから、あまりエゴサーチはしないおれでも気になって読者の反応を気にする事くらい、予想出来なかったのだろうか。


  もしかして、mamiさんは顔文字をおれ関連のどこかに残す事によって「まだ繋がってますよ」アピールをしているのではないか。


  まさにヤンデレの面目躍如だ。


  おれは、自分のトピックに書き込みをするのがあまり好きではないが、mamiさんの為にメッセージを残す事にした。


  「ヒロインが可愛いらしい(^∇^)」


  と。



  ーーそこへ、変な女が現れた。


  「亜流タイルの顔、私も見た! イケメンだよねー!! 恋しちゃいそう!」


  何だこりゃ。

  渡か?


  いや、絶賛アニメ放映中でホクホクの渡が、今更おれのトピックで他の読者さんの心象悪い『荒らしレス』をするとも考えにくい。


  本当に女なのかもしれない。ゲイって事も無いだろうし。


  夏の同人誌即売会では沢山の女性客も来てくれたから、そのお客さんの1人なのかもしれない。

  と言うか、書き込みから類推するにそうなんだろう。


  一応、ありがとう。でもこういうのもう止めてね。mamiさんが怒るから。




  しかし困った事にその女性読者の書き込みは数日間も続いた。


  「亜流さんの小説って基本男性向けなのに女にも分かりやすいよねー」


  「やっぱ顔が良いから女あしらい上手いのかな??」


  「本は要らないから本人が欲しい」


  おれはここで『ウザい』という日本語を知った。渡ツネオも裸足で逃げ出すウザさだ。


  止めてくれ。

  殆ど営業妨害だ。

  女あしらい上手くないから。


  mamiさんはトピックから消え、傍観を決め込んでいた。


  おれはmamiさんの書き込みが読みたいのに。


  しかしこの女性ファンのおれ持ち上げ書き込みが続く事により、普段奥床しいmamiさんの隠れた静かなる闘争本能に火を着けたようだったから、人生万事塞翁がなんたらだった。


  ありがとう、名も知らぬ女性読者。


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