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第十三話

エタはさせません!

超鈍亀更新でも、書き続けます!

(´Д⊂ヽ


第七話で、祖母が王の末妹と書きましたが、きちんと書き直したら世代が合わないことに気づきましたas

『姉』に変更しました。

第十二話で、「ゴメス派がドミンゲス派に追随して」と書きましたが、『ヒメネス派』の間違えです。

こちらも修正しましたasas


ミスコピーの裏にフリーハンドで家系図なんか書いちゃダメだね

(´・ω・`)

 舞踏会が終わると、学院に通う子息令嬢達は一斉に自宅へ戻ります。

 よほど近くに住んでいない限りは汽車に乗って帰省するのですが、乗り合いを利用するなどと考える者はおらず、各自が貸し切った車両に乗るために、出発待ちの汽車が大量に待機することになるのです。

 さすがに人数が多いために、同じ地方に向かう場合は同じ汽車を利用するのですが、わたくしは遅れて戻ることになったので、一族で利用する予定の便には乗れ無くなりました。

 そのことを、ヒメネス伯爵令息のセシル様に伝えた時の沈黙が痛かったです。


――我がままじゃないんです!


 まさか『前世プレイヤー会議』を行うとは言えませんから、当たり障りなくグロリアーナ様に招待を受けたのでと伝えました。


 「色々大変みたいだけど頑張れ」と言われて、ありがとうございますしか言えないのも良心が痛みます。

 心配していただけるのはうれしいですが、グロリアーナ様は悪じゃないですのよ。



 山の手に建てられたゴメス侯爵家の屋敷に着くと、すぐ後にナバール卿の愛車もやってきました。

 ピカピカの車はわたくしの感覚からするとクラシカルに感じますが、お洒落だと思います。

 ダークグレーのカッターウェイコートを身に着けて、玄関までの僅かな距離だというのに帽子を被って近づいてこられます。


「到着が一緒になりましたね」

「はい、ちょうどよかったですわ」


 こうしていると年若くとも由緒ある子爵家の当主として、恥ずかしくない振舞ですわね。


「正式な訪問は面倒だよな」


 こっそり耳打ちする言葉が平常運転ですけどね。

 ヴィンセント様はわたくしたちと違って、前世の明瞭な記憶が戻っているそうなので、貴族言葉がむずがゆく感じると、以前零していました。


「こちらでお待ちください、すぐにお嬢様が参ります」


 年かさのメイドに案内されて通されたのは、大きなコンサバトリーにつながる明るい色調の部屋で、隣で育てている草花をガラス越しに楽しめます。

 高い天井から白く塗られた金属の枠に、拭き板ガラスがはめ尽くされ、温かな日差しを屋内に取り込むなんて、贅沢の極みですわね。

 冬のもてなしには最高で、侯爵家の財力を見せつける最大の演出が用意されていました。


「お待たせして申し訳ありません」


 通されて然程待つこともなく、グロリアーナ様がやってきました。

 渋いローズピンクのドレスが肌の色に合っているらしく、普段より明るく和らいだ表情に見えます。

 彼女は侍女達にコンサバトリーで待機するように申しつけ、メイドたちも軽食をテーブルに置くと下がっていきました。


――なるほど、殿方と密室に籠ることなく話は聞かせない。


「どうぞ召し上がってくださいな」

「ありがたくいただきます」


 テーブルの上には女性ならば十人分はある軽食が用意されて、その殆どが肉やチーズを使った食べ応えのある品ばかり。

 明らかにヴィンセント様の為に用意していますわね。


「フローラ様も召し上がって、ガトーショコラは小麦粉不使用で、オカラとココアを使っていますのよ」

「グロリアーナ様が神に見えます」


 最近のグロリアーナ様は、ヘルシースイーツ作りにハマっていらっしゃって、お会いするたびに新作を披露してくださいます。

 他にも三センチ弱の丸い焼きドーナツ、リコッタチーズで作ったレモンケーキ、牛乳をショウガで凝固させたミルクプリン。

 前世において専業主婦として、お嬢様を育てたというグロリアーナ様の知識があればこその再現力。

 わたくしでは、料理人を自由に使えたとしても決して作ることは出来なかったでしょう。


「美味しいですわ」

「ココアだけでコクを、オカラで滑らかさを出すのが大変だったようですわよ」


 本当にグロリアーナ様が雇っていらっしゃる料理人は凄いですわ!


「そろそろ本題に入ろうぜ」


 わたくしたちがスイーツ談議に花を咲かせて、小ぶりなガトーショコラとレモンチーズケーキを食べ終わるころ、軽食の大半を平らげたヴィンセント様が話を促してきました。


「まずはナバール卿から。男子寮でのアレクシア様のご様子と、フローラ様の評判をお聞きしたいですわ」


 こんな方法でヴィンセント様を呼び出したのは、一生徒である彼の目に映り耳に入った情報をお聞きしたかったからです。

 グロリアーナ様からカール様経由で聞いてもいるのですが、アレクシア殿下がフェルナンデス派を遠ざけていらっしゃるので詳しいことがわからないのです。

 それと一般男子生徒の忌憚ない話も、カール様の耳には入らないようです。


「そうだな、中核に入れない俺達みたいな連中の間では、やっかみを含んだタン壺的な話が主だな」

「そっそうですわよね」


 タン壺と言うことは、インターネットの巨大掲示板の事ですわよね。

 言葉遣いは違うでしょうが、あんな調子で言われているとすれば、そうとうな言われようなのでしょうね。


「負け犬の遠吠えなんて、ウェブでも貴族でも違いはないさ」


 肩をすくめながらおっしゃるヴィンセント様は、この方なりに気遣っているのでしょうね。


「アレクシア様、と言うよりもドミンゲス派の方々はどうなのでしょう?」


 グロリアーナ様が一番聞きたいのは、そこですわよね。


「やっぱりヒメネス侯爵の財力とラモス商会の海外での力なんかを引き込んで、国の実権を取り戻したいってところだな」


 アレクシア殿下はドミンゲス派を後ろ盾にしていますから……え?


「何より俺は、殿下が王政の復権を強く望んでいるとみてる」

「まだそんな事をおっしゃっていますの?」


 グロリアーナ様が呆れを露にされます。


「フェルナンデス家が王家を蔑ろにして国を私しているって、言葉の端々に出まくってるからな」


 ヴィンセント様が肩をすくめていらっしゃいます。


「以前はそう言って噛み付いてきたこともありましたのよ。まだそんな事を考えているだなんて……」


 アレクシア殿下が学院に入院される四年前までは、そう言った事でグロリアーナ様に噛み付く事が多かったようです。

 確かに立憲君主制になっていますけど、国王の拒否権もありますし、蔑ろにしていると言われるような状態ではないと思いますわ。


「流石に麻疹が治ったと思っておりましたのに……」

「以前を知らないからアレだけど、殿下の周りの連中なぁ」


 何と言うかを考えた末に、出た例えが痛すぎです!


「ネット右翼って連中の、中でも物考えて無さそうな奴」


 淑女としては問題ですが、思わず顔をしかめてしまいます。

 ご自分達で好きなだけ語らわれたらよろしい事ですのに、トピに関係なく主義主張を書き込む行為は、どうしても好きになれませんでした。

 

「エイドリアン様もですの?」


 落ち着いた物腰でアレクシア殿下の暴走を上手く反らしている印象のエイドリアン様も、寮に戻ればそんななのでしょうか?


「う~ん、どうかな……否定も肯定もしない感じだよな」


 なるほど、これはなんとなく納得できます。


「それではもう一つ、バーソロミュー様がわたくしやフローラ様の事を、探ったりしている様子はございませんか?」


 それも非常に気になるところです!


「うー、氷点下宰相閣下のご子息だろ……」


 氷点下宰相ですか、バーソロミュー様よりも冷え冷えしそうですわ。


「伯父は筋金入りのリアリストですわ」


 思わず二の腕を擦ってしまったわたくしに、グロリアーナ様が囁きました。


「相手が最上級生だからなぁ……皇太子殿下も同学年だけど、自動車に食いついてきた殿下と違って接点なさすぎ」

「アレクシア様と接してしまった関係で、警戒されたのかもしれませんわね」

「そうなると、ますます分かりませんわね」


 舞踏会での何かを知っていそうな言葉が気になって仕方がないのですが、あちらからの接触はあれ以降ありません。


「先代が転生者ってのは間違いなさそうなんだろ?隔世で孫も転生者って事は無いのかな?」

「バーソロミュー様も転生者だとおっしゃるの?」

「無いとは言い切れないだろ?」


 ヴィンセント様が手を挙げて、コンサバトリーに控えたメイドを呼んでお茶のお代わりを頼んだことで、しばらく話が途切れ沈黙が訪れます。


――バーソロミュー様まで転生者だとしたら……


「仮にあの方が転生者だとして……何方を攻略される予定なのでしょうか」

「グロリアーナ様!真面目にやってください!」

「げほっ、げほっ……気管ぎがんに、入ったろったろ


 ヴィンセント様にクリティカルヒットしてしまったようですわ……。


「元プレイヤーだとしてもヴィンセント様と同じように、モモ恋プレイヤーである可能性の方が高いですわ!

 仮にTSだとしても、今は殿方なのですから攻略などは考えないのではありませんか?」

「あら、BLでは王道ですわよ?」

「ここは腐った世界じゃねぇ!」


 地の底から響くようなヴィンセント様の声に、グロリアーナ様は軽く肩をすくめすました顔でお茶を飲んでいます。


「潤いが足りませんわ」

「その手の潤いは、同好の士とお楽しみください」


 存じてますのよ、ヘンリエッタ様やイングリット様も、それにセーラさんまで腐海の住人になっているって。


「じゃあ、俺の方の用事を済ませていいか?」


 ラモス商会う事になった、シャンプーとリンスの事ですわね。


「シャンプーの売れ行きはどうだ?」

「ラモス商会からの返事はまだですわ。女子寮での反応は上々ですわね」

「ッシャアー!」

「クスッ」


 こぶしを握って息だけで叫んでいる様子が、前世の男子を見るようで思わず笑ってしまいました。


「帰省で家族にも広がってほしいな」

「石鹸で洗うより軋みもな少なく、湯シャンよりも手軽なので評判が良いですわ

 使ってみれば良さが判ると思います」

「香りの多角化は必要ありませんの?」

「それよりも、今の万人受けする香りで、シャンプーの良さを知ってもらった方が良いと思いますの」


 まだ女子寮の一部でしか使われていませんもの、多角化や差別化はもっと先のアクションだと思います。

 ヴィンセント様が作られた品はバラを使っていましたが、さすがに割高ですから今はゼラニュームを主にした香りに変えています。

 殿方用は、ペパーミントとローズマリーを使った品も用意はしています。

 

「香りごとに瓶のデザインを変えたいところですし、ある程度まで知名度が上がってから、王族から侯爵家までを対象にバラなどの香りをお勧めします」

「徳用ボトルは作らないんだよな」

「ブランドイメージがありますから、高級品に徳用は不要ですわ」

「将来安価な品を出すとしても、他のブランドで作らせた方が良いかもしれませんわね」


 未知の『シャンプー』を特別なものと感じさせる必要がありますから、今は上流階級向けの特別な品として売っていく方が、今後の事業転換が楽になります。


「同じ品質でも、コストダウンでシンプルな容器で安く売るよりも、豪華な容器を使って数倍の価格で売る方が売れるのが、化粧品と言うものですわ」


 プチプラなんて言葉は、物が飽和状態になって尚且つ、気持ちが枯れるほどの不況を体験しなければ出てきません。

 この辺は、前世で化粧品の企画をしていた知識が役立っています。


「女って、馬鹿じゃね?」

「んんっ」


 小声でもテーブルを挟んだ距離ならだいたい聞こえますし、口の動きでも察せますのよ。

 軽く睨んで咳払いをすると、気まずそうに眼を反らされました。


「見た目で損をすると、効果まで疑われてしまうものですわ。品を変えれば男性でも同じことが言えるのではありませんか?」

「そう、かな?」

「育毛剤など、効きそうな見た目は重要ですわよ」

「うっ!」


 何か感じるところがあったのか、息を詰まらせて視線を彷徨わされていますわね。やっぱり、男性には色々思うところのある話題ですものね。


「育毛剤とかニキビケアとか、考えてなかったな……」

「絶対に必要なのにお約束には入っていませんわね」

「なんか無いか?」


 そんな、縋るような目で見つめらると可哀想になりますわね……。

 今も額と頬に赤いつぶつぶが合計で三つ、いえ四つありますわ。


「よく泡立てた石鹸で、丁寧に洗顔してから保湿する。食事に気を付ける。

 硫黄を配合したクリームを患部のみに塗る。

 ……後は、抗生剤を使うくらいですわね」


 ホルモン治療などは出来ませんものね。


「育毛剤は?」

「本当に効果があると言われていた成分は、今の世界では入手できませんわ」

「くぁw……」


 ショックだったのでしょうか?

 テーブルに突っ伏してしまいました……。


「取り合えず、大豆をお食べになったら?」


グロリアーナ様がそう言って、まだ残っていたオカラのガトーショコラを勧めています。


「イソフラボンの効果で体毛が薄くなりますから、今日日の貴族男性にはいいのではありませんか?」

「そういや、薄毛に聞くって聞いたことあんな……よし、今日から大豆を主食にするぞ!」

「摂取し過ぎると、男性機能が低下しますわよ」


 グロリアーナ様が続けると、怖いものを見たような?もしくは縋るような眼差しを向けてこられたので、重々しく頷いて見せます。


「あおぅお……」


 先ほどのように、「くぁw」なんて言う余裕もないようですわね。


「度が過ぎなければ大丈夫ですわ」

「そそそっそうだよな!うん、節度な!」

「男性ホルモンが影響するニキビでしたら、イソフラボンの働きで改善します。

 ローションと乳液を送りますわ」

「サンキュ、助かる」


 すっかりイソフラボン談議になってしまいましたわね。


「では、そろそろお暇しますわ」


 汽車は押さえてありますけど、あまり遅くなると帰り着くのが深夜になってしまいます。


「そうですわね」

「俺は今夜は村の館で泊まって、明日の朝に立つわ」


 何かあれば連絡をする約束を交わし、部屋を出ていく私たちにグロリアーナ様が声を掛けて来ます。


「そういえば、ヴィンセント様はいつからここが、腐界ではないと思い込んでいらっしゃいましたの?」

「!」

「っねぇ!ここは絶対腐ってねぇよ!」


 ですよね……グロリアーナ様、舌なんか出して結構お茶目ですわよね。

 でも、ヴィンセント様へのセクハラは、意趣返しとしてグッジョブ!

 わたくしたちの胸を見比べていた事、ちゃんと気づいてますのよ。

セクハラにはセクハラで!

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