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第十二話

遅くなりました;つД`)


第十一話での、グロリアーナ弟の名前を間違えていました。

弟の名前は、ニコラスではなくカールです。

修正しましたぁ★ミ

 新年を前にした最後の行事、離宮で行われる舞踏会の日がやってきました。

 アレクシア殿下がわたくしをパートナーにしようと動かれたようですが、グロリアーナ様が先手を打って、父親であるゴメス卿から国王陛下に働きかけて頂き、陛下直々に「舞踏会では婚約者のグロリアーナをパートナーとするように」と、命令が下されたのです。


 そのことが発覚した時のアレクシア殿下の苦々しい表情は、ちょっと衝撃的でしたわ。

 何というか、修復不可能な状態まで拗れている印象でした。

 エイドリアン様が宥める様に連れ去ってくれましたけど、婚約者やその兄弟を見る目ではありませんでしたわ。



 枯葉が落ちて寒々しい眺めとなった並木道を、学院に通う貴族の子息令嬢を乗せた幾台もの馬車が向かった先。

 アルタミラ離宮と呼ばれる王族が狩りに訪れた時に利用するの離宮が、今夜の舞台です。

 ロココ調の壮麗な建物は、ゲーム時以上の圧倒的な迫力があります。

 こんな場所で舞踏会だなんて、前世では考えもつかない事ですわ。


 豪華な内装の大広間、着飾った淑女をエスコートする貴公子……。

 胸キュンのシチュエーションですわよね?


――胸、むねキュ…ぐるじい……


 いつもの三割増しで締め上げられたウエストが、苦しくて死にそうです。


「大丈夫?」

「はい、大丈夫ですわ」


 顔には出さないようにしていましたのに、察するものがあったのでしょうか?

 それにしてもカール様ってポイント高いですわ。

 可愛いのに気づかいが出来て可愛いなんて、絵に描いたような白馬の王子様じゃないでしょうか?


 スクリーン越しでなら、いくらでも悶え転げることができますのに!

 現実になってしまったら、萌えだなんて暢気なことが言えないのは辛いですわ。


「初めて入ったけど、さすがはベザレス王の離宮だね」


 カール様が広間を見て、感嘆のつぶやきを漏らします。


「そうですわね」


 三代前の国王は、政治に興味を持たず日々狩りに興じて、この離宮に社交の場が移ったんですわよね。

 実用向けだった離宮は増改築が繰り返されて、絢爛豪華な現在の離宮が誕生。

 それでも自然豊かな雰囲気を壊すのを嫌った王の命令で、貴族たちは少し離れた村の周囲に館を建てて暮らしたと言います。

 その村が町になり、今では鉄道が通って更なる発展を遂げているのです。

 寒村だった頃の村人達は、夢にも思わなかったでしょうね。

 もっとも当時は色々な問題が起こって、国がひどく弱体化した時期でした。

 一時は革命騒ぎに発展しかけたと言いますから、かなり追い詰められましたわね。

 代が変わって何とか持ち直したものの流れは止まらずに、今の王の代で立憲君主制に移行したのですから、災い転じて福となったと言えます。

 地球では国王が政治に無関心で、幾つかの王家が滅んでいますもの、国が残って良かったですわ。



「こんばんは、カール。ずいぶん可愛らしい令嬢と一緒だね」

「これはユージン殿下、ご機嫌麗しく存じます。こちらはフローラ・ヒメネス男爵令嬢です。フローラ嬢、ユージン殿下です」

「お初にお目にかかります。ケヴィン・バロー・ヒメネスの娘にございます」

「そう、春を告げる花のように可憐な人だね」


――そのセリフ、ゲームでも出てくるので、できれば使わないでほしいですわ!


 もちろんそんな事は言えませんから、視線を床に下げ腰を低くしてお礼を述べます。


「光栄ですわ」

「兄が迷惑を掛けているみたいだけど、すまないね」


 そっと囁くようにおっしゃいます。

 謝罪の言葉に驚いて顔を上げると、ライトグリーンの髪を緩やかに揺らしながら、イエローの目が優し気に見つめていました。

 王族の謝罪に驚きながらも、そっと目礼で答えます。


「カール、可愛らしい令嬢をエスコートしていますね」

「バーソロミュー様!」


 突然掛けられた声にヒヤリと背筋が震えました。


「おや、ヒメネス男爵令嬢でしたか」

「バーソロミュー兄さん、フローラ嬢と面識があったんですか?」


 悪い事なんかしていませんのに、バーソロミュー様の声に肝が冷えました。


「挨拶を交わした程度ですよ」

「そうだったんだ……。

 あっ、この間の食べ応えがある軽食だけど、彼女が教えてくれたんだよ」

「ほう……やはり、ヒメネス男爵令嬢は博学ですね」


 物凄く怖いんですけど?


「そんな事はございませんわ。グロリアーナ様の方がお詳しかったですもの」

「グロリアーナが、ですか……」


 グロリアーナ様の名をつぶやいて、何かを考える様に目を伏せたバーソロミュー様は、真冬の朝を思わせる怜悧な姿です。

 モニター越しならため息が出たでしょうけど、現実に目の前で見てしまうと凍傷になりそうです。


「おっ、みんな揃って何やって?っと、ご令嬢も一緒だったのか」


 声を掛けてきたのはダニエル様です。これで攻略対象全員と面識を持ってしまったではないですか!


「誰のパートナーか存じませんが失礼しました」

「僕のパートナーですよ。フローラ・ヒメネス男爵令嬢です」

「初めまして、ダニエル・サンチョスです。ダニエルでいいぜ」

「フローラと申します。

 グロリアーナ様の紹介で、カール様のパートナーを務めさせていただいております」


 真っ赤な髪とダークグレーのつり目が、日に焼けた精悍な顔を彩っています。着ているテールコートはダークグレーですわ。

 攻略対象達の衣装は、基本的に目の色を基調としています。対して、ヒロインのダンス用ドレスは相手の髪の色と、フローラの髪のピンクが使われたものになっていました。


――ドレスなんて、今はどうでも良いんですわ!


 何故、皇太子以外の攻略対象が全員そろってわたくしの周りにおりますの?

 ダニエル様なんて「可愛くて優しそうだな、なるほど」とかおっしゃてます!可愛いは女子としてうれしいですけど、何が「なるほど」何でしょう?

 男子寮でわたくしって、どんな風に語られていますの?

 ものすごく知りたいですが、聞けるはずもありません。


――後でナバール卿から教えて頂こうかしら?


 本当ならば礼儀知らずと顰蹙をかうところですが、元日本人同士として気安く感じてしまうのです。

 特にネットスラングを含んだあの言葉遣いは、とても懐かしくて少しホッといたしますもの。 


「急に決まったパートナーなのに、カールの為のようなドレスだね」

「たまたま誂えてあった中に、良いものがありましたの」


 ユージン様の疑問は当然ですよね。どう考えても、カール様とパートナーになることを考えたようなドレスですもの。

 でも……。


「藍色やライトグリーンのドレスもお持ちなのかな?」


 背後から囁くように呟かれたバーソロミュー様の言葉。驚いて振り返れば、既にパートナーと思わしき令嬢をエスコートして去っていく後姿……。


「フローラ嬢、どうかしたの?」


 いきなり振り返ったわたくしを気にして、カール様が首をかしげています。


「いえ、なんでもありませんわ」


 そうするうちにユージン殿下もダニエル様も、それぞれのパートナーの元へ帰られて、探るような思わせぶりな言葉を残されたバーソロミュー様の真意は、確かめることができませんでした。



「浮かない顔だけど、どうしたの?」

「申し訳ありません。緊張している様ですの」


 いけませんわね。

 せっかくカール様とダンスなのだからと、開き直って楽しむつもりでしたのに、バーソロミュー様の言葉が気になって集中できません。


「兄さんに何か言われた?」

「え?」

「ほら、兄さんの父であるフェルナンデス卿が宰相を務めているからね。

 兄さんも色々考えちゃうのかな?」


 国を預かる立場にあれば、次の皇太子妃が誰になるかは大きな問題。

 まして、今まではフェルナンデス派が中枢を占めていたのが、皇太子を擁立しているドミンゲス派に取って代わられる可能性が大きくなっている現状です。

 今は身内であるグロリアーナ様が婚約者ですが、ヒメネス侯爵がドミンゲス派に追随してわたくしが婚約者として成り代われば、彼らの力は大きく削がれることになるでしょう。


「ですが、わたくしが如何こうしたところで婚約を促すことは出来ませんわ」


 皇太子の婚約。

 これは極めて政治的な問題です。


「そうだけどね。逆に言えば、君が望まなくても上の世代が動けば決まってしまう話だよね」


 あどけない顔を切なそうに歪めて、そんな風に憂う事を言われたら……。

 なんだか、わたくしまで切なくなってまいります。


「姉上から聞いたけど、僕との事も気乗りしないんだってね」

「そっそれは……」


 「僕との事」って……グロリアーナ様がおっしゃっていたあの事ですわよね。


「グロリアーナ様が親しく思って下さるのはうれしいのですが、わたくしはその地位を重く感じてしまうのです」

「他の家と違うことなんて、無いと思うけどな?」

「生まれ育った環境ですもの、カール様にとっては普通ですわよね」


――普通の基準が絶対違うはずですわ!


 そんなこと無いと言いたげに軽く唇を尖らせる表情も、と~~~っても可愛いですが、侯爵夫人となって社交界の中心で生きていくなんて、絶対無理ですわ!

 だいたいカール様も、姉であるグロリアーナ様が紹介したからと言って、その気になり過ぎですわよ!


――まさか、強制力とか!


「そんな顔しないでよ……サロンであった時のような笑顔が見たいな?」

「カール様……」


 首をかしげて微笑む姿が、お気に入りのスチルと重なります。


――そんな顔をされたら、ドキドキしちゃうじゃないですか!


 軽やかなワルツの調べ、電灯にきらめくシャンデリアの明かりが夢でも見ているかのようで……。

 ゲームだったなら、シナリオを攻略したらそこでお終いだったのに、現実になった世界は様々な要因が重くて、お気に入りだった侯爵令息カール・ゴメスは、生身のカール様となってわたくしの心を揺らしてきます。


「少し休もうか?」


 数曲踊ったところでカール様に促され、部屋の隅に下がりました。


「飲み物を持ってくるよ」

「ありがとうございます」


 少し体が熱くなってきたので、窓辺に寄って外の闇を眺めます。

 カール様は不思議なくらいに乗り気ですし、バーソロミュー様は気になる言葉を残していかれるし、今夜は部屋に帰っても休める気がしません。

 ただでさえウエストが苦しくて仕方がありませんのに、余計な悩みを増やさないでいただきたいですわ。


「フローラ!」

「ヒッ」


 余計な悩み筆頭の声に肩が跳ね、思わず小さな悲鳴が漏れました。


「アレクシア殿下」

「殿下はつけるなと言っただろう」


 いきなりギロっと睨まれてしまいました。


「申し訳ありません。アレクシア様、何かございましたか?」


 素直に謝っておくのが大事ですわよね。


「一曲付き合え」

「あっ」


 有無を言わさずにホールの中央に引っ張り出されてしまいました。


「フェルナンデス共がつまらん画策をしている」


 うーん、意中の女性と婚約しようとしたら、現在の婚約者一族が認めないという事でしょうか?


「お前に聞かせる話ではないが、信じていればいい」


 下手に返事をするわけにもいかず、リードされるままにダンスを続けます。


――下手ではありませんが、自分本位な性格が出たリードですわね。


 絞られたウエストが悲鳴を上げています。

 心配事で集中出来ませんでしたが、カール様ってリードがお上手でしたのね。


「アレクシア様、弟のパートナーをお返しくださいませ」


 一曲終わった所でグロリアーナ様が回収に現れました。

 ゲームでもグロリアーナ様の登場があって、舞踏会半ばでパートナーがいなくなる展開でしたわね。

 あの時は「呪われろ!」っと、画面に向かって突っ込みましたけど、今やヒーロー登場ですわ。


「くっ!お前とは十分踊ってやっただろう」

「弟のパートナーをお返しくださいと、お願いしておりますのよ」


 射殺す様な視線で吐き捨てる言葉を涼し気に流し、わたくしを返せと要求する姿は、悪役フェイスと相まって大迫力です。


「勝手にするがいい、俺は帰る!」


 吐き捨てる様に退場したアレクシア殿下は、いつの間にか来ていたエイドリアン様を従えて去って行かれました。

 エスコートするべきパートナーを広間に放置するなんて酷いですわ!


「まったく、子供のような方ね」


 お二人を見送り、わたくしを振り返ったグロリアーナ様の顔が若干怖いです?


「フローラ様。先ほどの事ですけれど、また何か失礼なことを考えませんでしたこと?」


 !


「考えておりません!」


 またバレてしまいました!

 悪役フェイスの感想は封印しなきゃダメですわね……。


「ところで……」


 口元を扇で隠されたグロリアーナ様が耳元でささやかれ、思わズッコケそうになりました。


「エイ×アレってどうかしら?」


 グロリアーナ様、ブレませんわ!

グロリアーナ様はグロリアーナ様ですから!

( *´艸`)

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