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第十話

今回も、読んでくれてありがとうございます☆彡

;つД`)


ぎりぎり一週間以内・・・★ミ




 皆様こんにちは、フローラ・ヒメネスです。

 秋深まった冷たい風を切り裂き、猛スピードで駆ける馬上から実況中継させていただきます。


 駆け抜ける馬に驚いた鳥が草薮から飛び立ち、遠く丘の上で草を食む羊はモコモコの毛に覆われて温かそうです。ちょっと寒いので、わたくしに貸して頂けないでしょうか?


――ええ、これぞ現実逃避!


 もう混乱して何を言っているのか解りません……。

 新たな元日本人と知り合えたことで、夢の麹が手に入ると喜んでいた矢先。わたくし、攫われました!

 お天気がいいから乗馬でもしましょうかと、厩舎へ出向いたのはほんの気まぐれでした。今はその気まぐれなわたくしを殴って箱詰めしたい気持ちです。

 犯人はアレクシア殿下よすよ、他に居ませんわよね?


 間の悪い事に、ちょうど遠乗りに出ようとしていた殿下と、ばったり出くわしてしまったのです……。

 隠れてやり過ごそうと思いましたのに、いつも側で護衛まがいの事をしていらっしゃるエイドリアン・ディアス様に見つかってしまいましたの。

 ロドリゲス卿の外孫にあたる方で、アレクシア殿下の遊び相手でもある将来の側近候補ですわ。

 物陰に隠れて息を殺していたわたくしを不審に思ったらしく、引き出されてしまったのです……。

 その場に立っていれば見つかったでしょうし、隠れてもダメだなんて……あっ、立ち去ればよかったんですわね!


――今更遅いですわ!!!


 取り残されたジーンがグロリアーナ様に連絡をしてくれたとは思いますが、助けは期待できませんわよね……。

 GPSで追跡なんてできない相談。わたくしがどこに連れていかれるのかなんて、解るはずがございません。

 でも、言わせてください!


――グロリパンナ様、助けてぇ~~~~!



 ***


 どれくらい駆けたのでしょう?気が付けば小川の辺に着いていました。


「震えているな、少し寒かったか?」

「いえ、その……あっ、ありがとうございます」


 震えていたのは不安からです。

 いきなり殿方の集団に連れ攫われて、怯えずにいられるほど、のんき者でも武闘派でもございませんもの!

 それでも誰かが手渡した上着を掛けて頂いたので、一応お礼だけは述べておきます。確かに体が少し冷えていましたから、暖かな上着に包まれると少しだけ緊張が解ける気がいたします。


「馬が早くて怯えさせてしまったのだな」


 自分でも馬を駆って出かける普通の令嬢ならば、馬に乗ったからと怯えはしませんけど?アレクシア殿下のわたくし像って、どこまで脆弱なのでしょう?

 暖かな眼差しで苦笑されると、事実誤認の状態に憮然となってため息が漏れます。


「フッ、とろけた眼差しで見上げるお前を見るのはあの日以来だな」


 はい?

 わたくし、軽い絶望感でショボン状態だと思いますけど……!


 『とろけた顔でアレクシア様を見送ったそうよ』


 あの時イングリット様に言われた誹謗、発信源は貴方ですわね!

 絶対目がお悪いわ!というか、ご自分の都合のいいように解釈し過ぎです!


「殿下、「アレクシアと呼べ」アレクシア殿「殿下は不要だ」アレクシア様」

「なんだ」

「どうして、このような無体をいたしますの?」

「むっ、そうか、女には刺激が強かったか」

「乗馬でしたら、自分でもいたしますので馬が怖い事はございませんわ」

「ククッ、横向きで腰かけて、少し歩ませるのは乗馬とは言わないぞ」


 ああ、話が通じない……。

 普通にガンガン走らせますし、障害を飛び越えたりもいたしますわよ?

 牧場で子供がポニーに乗るのとは違うんですのよ?


「学院では、嫉妬深い女の邪魔が入るからな」


 言葉のキャッチボールを諦めて口をつぐんだわたくしに、納得したと思ったのでしょうか、少なくとも「無体」を「連れ出した」と認識してくれたようです。

 ですわよね?スルーじゃないですよね?


「寂しい思いをさせたな」


 いえいえいえ、わたくしは寂しがってなんかいませんよ。


「もう少し辛抱していろ」


 もう少ししたら、堀が埋まるとかそういう話ですか!


「お気持ちはうれしいのですが、やはり王妃にはグロリアーナ様がふさわしいと思うのです」

「あんな気の強い女は不要だ」


 いや、いや~、お人形のように隣に立つだけの女性じゃ、王妃は務まらないと思いますわよ?

 一見控えめな現王妃様でも、社交の場で女性の頂点として、貴族女性を纏めていらっしゃると聞いています。主流派のフェルナンデス派はもとより、実家であることを強みにドミンゲス派の女性たちも上手く動かしていらっしゃると、グロリアーナ様が感心されていました。


「心配するな、お前は待っていればいい」

「アレクシア様、わたくしは貴方の隣に立つに相応しくありません」

「生まれの事を言っているのか?問題ない、俺が選んだ以上の相応しさなど存在しない」


 いやいやいや、派閥と家柄と他国の王族との位置づけが物凄く重要です!

 本当なら、そろそろ他国の王族との婚姻も、視野に入れるべき時期だったんじゃないかと思うほどですよ?

 王家の血筋とは言っても、国内の貴族とばかり婚姻するのもどうかと思っていますのに、訳ありの娘を選んでどうするんですか!


「ヒメネス侯爵家をドミンゲス派に引き込むおつもりですの?」

「むっ!お前はそんな事を考えなくていい!」


 うわー、めちゃくちゃ不機嫌な顔……。

 この事を誰かに指摘されて不満があったのか、言葉の通りにわたくしに政治向きの事を考えさせたくないのか……後者っぽい響きですわよね。


 胸の奥がチリリッと焼ける気がします。


 さっきから掛けられている言葉も、何か底が浅く感じていたのですが、この方は本当に生身の人間なんでしょうか?

 まるでNPCのセリフです。わたくしに向けられた言葉なのに、わたくしの為ではないような……。


――心が通わない。


 もともとアレクシアというキャラクターは好き嫌いが分かれる攻略対象で、コレクションを埋める為や、逆ハーエンド後の完全クリア特典が目当てで攻略したプレイヤーも多かったのです。

 実際、わたくしもそうでしたもの……。


『お前の為に攻略してるんじゃ無い!』


 何度かつぶやいた、ストレスを抜くためのツッコミ。

 遠乗りに出かけるイベントもあったけど、もう少し甘い雰囲気だったと思うのですが、スチルと効果音が大事ってことでしょうか?

 初めから対象外だったけれど、リアルになった俺様キャラは不快感マシマシですわね……。


「せめて、事前にお誘いください。侍女と共に馬車で伺いますわ」

「それだとお前は逃げるだろう」

「身の程を弁えておりますので」

「俺がお前を選んだ、それで十分だ」


 会話が成り立たない!


「では、お話とは何でしょうか?」


 こうなったら仕方がありません、話を聞いて解放してもらいましょう。


「あの?」


 何故、コイツ何言ってんのって顔でこちらをご覧になりますの?


「今、話しただろう」


 目を除き返したら、プイって反らされてしまいました……。


「お前は俺を信じて待っていればいい」


 それだけ?

 ここまで攫ってきて、それだけ?


「俺はこれから遠乗りに出かける予定だが……お前はどうする」

「え?」


 どうするって、どうすしろとおっしゃいますの?

 ここで降りて一人で帰れとか?

 上級コースのリフトに無理やり乗せておいて、勝手に滑り降りて行くより更に無責任ですわよ!


「わたくしには、ここがどこかも解りませんけれど?」

「……はぁ~」


 いや、ため息を吐きたいのは、わたくしですわよ?


「エイドリアン、どうすればいい?」

「誰かに送らせましょう」

「そうだな……いや、ダメだ。俺以外がフローラを乗せるのは看過できん」


 そこはあきらめるか、一度わたくしを送り届けてから改めて出発されるべきなんじゃありませんの?


「一度、戻りますか?」

「チッ」


 ですから、チッってしたいのは、わたくしですわよ!


「ここで待って……ん?」


 とんでもない提案が出かけて背筋が凍りかけたところに、エンジン音が近づいてきました。


「これはアレクシア殿下、遠乗りですか?」


 現れたのは紺色のクラシックカーではなく、最新鋭の高級車。そこから降りて声を掛けてきたのはナバール卿でした。


「ヴィンセントか、お前はドライブか?」

「この先の村に自動車を整備するための者達を住まわせていまして、今日はメンテナンスに出向いておりました」


 ナバール卿が視線を後ろに向けると、乗って来た車から降りた執事らしい男性と、どこかオタク臭が漂うメイド服の女性が並んでお辞儀をしていました。


「女も乗せているな」

「はい?町に買い出しに行くと言うので、乗せてきました」


 あら、結構お優しいのね。


「ならばちょうどいい、フローラを女子寮まで送って行け」

「……ご気分でも悪くされましたか?」

「俺は遠乗りに行くところだ、フローラは連れて行けん」

「かしこまりました。フローラ嬢は私が責任をもって送り届けます」

「任せたぞ」


 ナバール卿に手を貸していただいて馬を降りたわたくしを残して、アレクシア殿下一行は駆けていかれました……。

 上着ですか?

 エイドリアン様が回収していきましたわ。


「どういう状況?」

「厩舎から連れ去られて、話が済んだら持て余されましたの」

「……なんていうか、スゲーな」


 車から距離があることと小声なので使用人たちには聞こえないでしょうけど、ナバール卿の口調は貴族らしくございませんわよね。


「とりあえず送るわ」


 口調はアレですが、ちゃんと貴族らしい所作で車までエスコートして下さったので、執事が開いて待っていた車内に乗り込みます。


「あら、シートベルト」

「やっぱ、無いと危ないだろ?」

「失礼いたします」


 遊園地の絶叫系では無い、ぬるいコースターにあるようなベルトを締めて頂き、ナバール卿が助手席側後部に座ります。執事が運転するようですわね。

 初めて見るクラシカルな車は、以外にも快適に動き出しました。


「本当に助かりましたわ」

「あそこに置いていくとか、マジありえねぇ……」


 小声で、「基地かよ」と聞こえてきます。


「ナバール卿はネットスラングも使われますのね」

「んっ?ああ、普通は通じないけどな」


 そうでしょうね。

 それでも、持つべきは前世同郷人。

 北風が吹く森に取り残される事態を免れて、本当に感謝しております。


 それに比べて、アレクシア殿下は本当に、サイテーですわ!

困ったおうぢ様だ┐(´д`)┌ヤレヤレ

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