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幕間 -ヴィンセント-

いつも読んでくださって、ありがとうございます☆彡

やっぱり、このくらいのベースでしかうpできない・・・★ミ

;つД`)徐々に遅くなってるし



 横からの衝撃を受けて、スマホを見ていた視界が突然ぶれた?

 馬車の中で体が激しく転がされて、意識を失った。



 意識が戻るり目を開けると、分厚いカーテンが目に入る。


――どこかに泊まってたっけ?

――はいつの間に眠っていたのだろう?


 ファミレスで夕食を食べた帰りに、親父の運転する車に乗って……。

 両親と共に馬車で、荘園で行われた試飲会に出向いた帰り……。


――えっ?


 待て待て待て待て!


――落ち着け、まだ焦る時間じゃない。


 自分の名前は、ヴィンセント・ナバーロ。代々続いたナバーロ子爵家の一人息子にして跡取りだ。そこは間違いなく思い出せるし違和感もない。

 それでも、もう一つの記憶も同時に思い出されてくる。

 日本という国で高校生だった記憶…………。


――異世界転生!


 一つのワードが浮かんだ瞬間、飛び上がるように体を起こし!


「ぅぐぅぅぅ……」


 全身の痛みでうめき声をあげてしまう。


「ヴィンセント様、急に起き上がられてはダメです……医師を呼んでちょうだい」


 天蓋を払って私を支えてくれたのは、乳母のイヴォンヌだ。母の嫁入りに付いてきた女性で、物心つく前から側にいてくれた頼れる存在……。

 そういえば母は、父はどうしたのだろう?


「イヴォンヌ、何があった?両親は?」

「ヴィンセント様、お心を強くお持ちください」



 ***


 森から出てきた大熊に馬車が襲われたらしい。崖を転がり落ちた際の衝撃で、両親は命を落としていた。俺は運よく助かり、熊は護衛の騎士たちが撃ち殺したと報告された。

 報告を受けた時にはすべてが終わっていたのだ。

 一週間以上意識が戻らなかったために、叔父の手配で葬儀も終わってしまっている。日本の両親の安否も当然解らない。


 幸い叔父は誠実な人で、お家騒動などは心配しなくていいが、若干十二で子爵位を継ぐことになった重圧はかなりのものだろうと、家令以下使用人全員が心配してくれた。だが、俺は沸き起こる興奮を抑えるのに必死だった。


――やべー、異世界転生だよ!貴族だよ!


 前世で読み漁ったラノベの定番。自分が実際に転生や転移をした時の為に、から揚げやマヨネーズはもとより、稲穂から麹菌を採取して麹を作る方法も、シャンプーに必要な脂肪族アルコールを作り出す方法も調べ上げた。

 記憶を探っても、ここには魔法が無いのは残念だがしかたがない。名前だってかなりカッコいいし、内政チートで成り上がってハーレムウハウハの人生を駆け上がるぜ!



――と、思っていた時期が俺にもありました……。


 現実は厳しかった……。

 子爵位を継ぐために国王に挨拶に出向いたことで、自分の地元がどれだけ田舎なのか痛感させられた。

 まず最初の衝撃は、馬車で二日行った先に待っていた蒸気機関車の存在だ。二泊目の宿にガス灯があったあたりで嫌な予感はしていたんだが、蒸気機関の存在は衝撃的だった。

 更に王都には電気まで存在していたのは顎が外れるかと思った。

 水道もあり、チラホラと車まで見かけてしまった……。


――銃はリボルバーだし、馬車もサスペンションで衝撃を吸収してたもんな……。


 ガス管で作ったオブジェが炎の花を咲かせて、見とれた瞬間の敗北感がハンパなかった。

 食べ物も種類が豊富で、思いつくものは殆ど存在していた。

 味噌や醤油は無いみたいだから、この辺だけはがんばれそうな気はするけれど、洋菓子も揚げ物も元々ヨーロッパから伝えられたんだよな……。


 そして何より、結構いけてるんじゃないかと思った容姿が、それほどじゃなかった事実……。

 前世と比べたら白人種だし、金髪じゃないけれど亜麻色って感じの髪に眼の色は冴えないとはいえ青で鼻も高かったよ、でも城に出向いて有力貴族たちを実際に見たらさ……。

 なんて言うの、もうオーラが違うね。

 特に王様と隣に控えていた宰相のフェルナンデス公爵は格が違った。一見優男に見える藍色の髪の細身の王様だが、金に近い黄色い眼の奥がハンパなく強かった。水色の髪とかファンタジーかお前は、とツッコミたくなる宰相は目の色まで透き通った水色で、表情も込みで氷点下宰相とあだ名を付けたくなるほどだ。

 父親に似た俺の将来は、まぁそこそこだと予測がついてしまう。

 容姿があまり冴えないのは前世から引き続いているとして、爵位があるんだから金さえあればそれなりにモテ期もあるに違いない!

 だけどなぁ……。


――鉄道も通っていないし、車も全く走ってねぇ


 特産品もこれと言って存在しないし、内陸で辺境と言っていい国のはずれで、先は大樹海……。

 どう考えても鉄道なんか通す旨味は存在しない。


――本当に、ありがとうございました……。


 なんだよ!

 展開がハズレ過ぎだろ!

 財産管理は家令や叔父に任せていれば、暮らしていくことは可能らしいけど、今どきの貴族にふさわしい暮らしはな……。

 別大陸にハンティングに行くのがトレンドだなんて、聞けばわくわくするってもんだろ?田舎で質素に暮らしていくとか夢が無さすぎる。


「旦那様、こちらで人気の飲み物と菓子を用意いたしました」


 執事が謁見で疲れた俺に甘いものを用意してくれたが、それを見た途端どうしようもない衝撃に打ちひしがれてしまった。


「遅かったんだ……何もかもが!」

「だ、大丈夫ですか!」


 突然叫んだ俺を心配してくれるのは分かっている。それでも、これは無いと思うんだよ……コーラとポテチってさ…………。


「大丈夫だ。流石は王都だよな……」


 両方の記憶を総動員して活路を探る……。

 国は五十年以上続く好景気で、嗜好品は需要が高い。しかし、うちの土地はこれといった産業は無く、特別味が良いわけでは無いワインと小麦を生産している。

 中世ヨーロッパのように飢えるような貧しさではないが、周囲の金回りが良いので比較すると我が家はかなり貧乏という事になる。


――両親が社交に興味が無かったので、借金が無いのだけは救いだよな。


 いわゆるタウンハウスの王都邸は、俺がテレビで見た貴族の屋敷と比べても貧相な気がする。他の貴族の家に出かけたことが無いし、実際に見た他人の家が王城なので比べるのは間違っているとしても、やっぱりうちは貧乏でイケてない。



――自動車ならまだ食い込む余地があるか……。


 見かけた車体は統一性が無く、ガソリンエンジン車の初期デザインだった。

 居住性を考えて金持ちが運転する楽しみを提案できれば、高級路線で大金を稼げるかもしれない!


「でも、まず資金がな……」


 子爵家としては平均的な土地を持っていても、三分の一は森に覆われている。初代が賜った時には、半分が森だったというのだから頑張ったのだと思うが、今の王は原則これ以上森を切り開くことを禁じているので、この先利用できる土地は増やせない。

 ネットや本の知識しかないので、実際作ってみないと実用性があるかが解らないし、いきなり生産工場を作るのは無理がるよな……。


「コーラ、サイコー!」


 コーラにはスナック菓子が合うよな。

 そういうものも田舎に住んでいるので知らなかった。フライドポテトは食べたことがあるんだけどな……。


「まだ氷なんかあったんだ?」


 秋も深まった今どきに氷があることに気が付いた。日本なら当たり前だが、こちらでは冬に作った氷を氷室に保存して使うので、夏には使い切ってしまうのが常だからな。


「こちらには氷を売ることを生業としている商店がありますので、そこから求めました」

「つまり地元じゃ無理なんだな」

「ございませんね」


 冷凍庫は電気が必要だものな……って、ちげーし!


 産業を立ち上げて金を儲ければ、発電施設も作れるようになる。今は地元の経済を強めるのが重要だ!

 趣味で調べていたクラシックカーの知識を使って、自動車を大量生産。一大産業に育て上げて見せる!


「自動車王に、俺はなる!」



 ***


 十五歳になった俺は、国の貴族子女が集まるアプレンデール学院に入学する。

 あの決意からこつこつ作らせた俺の愛車は、二年半の歳月をかけエンジンを幾たびも改良。今では自信の一台となっていた。システム・パナールをシステム・ナバーロとして導入、直列4気筒エンジンにセルフスターター、電気式のライトに渾身作のワイパーも取り付けている。

 残念ながら油圧式エンジンブレーキは実用段階に入っていない。


「本当にそれで学院まで向かわれるのですか?」

「途中は列車に積んで運ばせるのだし、問題ない」


 俺の愛車、ナバーロ30改Ⅱを見て心配そうな顔をする家令に答えると、颯爽と後部座席に乗り込んだ。


 キャデラックモデル30をイメージした紺の車体は、真鍮の金色が映える。


 運転を楽しむために乗るのは反対されなかったけれど、移動の為に運転席に乗るのは好ましくないと叔父に止められているんだよな……。

 俺を当主として立ててくれている叔父は、同時に保護者として俺のお目付け役でもある。田舎なのでかなり保守的だし、家は継いでも子供の俺がすべてを自由にできる訳じゃない。

 自動車作りだって、限られた予算の中で細々とやるしかなかった。頭から反対して許可されないよりマシだったけど、なかなか進まない状況に焦りを覚えた。

 王都で見かけた車はレベルが低い物だったけど、電気が使われている時代なんだから、二十世紀レベルの素地があって当然なんだからさ。いつ天才が現れて、俺が作っている車が出し抜かれるかもしれないじゃないか!


「楽しみですね」


 助手席に乗り込んだウィローの声に軽い興奮が滲んでいる。彼は家令の孫で、今回の入寮に際して執事として付いてくることになった。

 去年二十歳になったばかりで、幼い頃から面倒を見てもらっているし、自動車開発でも一緒に行動してきた。


「だな、ナバーロ自動車の実質的なお披露目だ!」


 後続の馬車は三台。整備用の工具や部品、調整する技術者達も乗せているので、金無し子爵としたらかなりの大所帯。ウィローは男子寮の俺の部屋に専用の個室があるのでそこで寝起きをするが、技術者たちはそうもいかない。

 学院内は貴族の社交場なので、使用人が住まう部屋や衣服も金を掛ける必要があって、油まみれの技術者を住まわせるには向かないからだ。

 特許がらみで王都に専門の弁護士も雇っているし、シャンプーの生産資金も借金した。ここで成果を出さないとやべぇ。



 ***


 ひょっとして詰みかけてる?


 自動車の方は、そこそこの反応をもらっているので行けると思う。皇太子殿下が興味を持ってくれたのが大きい。

 現在地元では王家に献上する品を組み立てている。冬には届けることができるだろう。しかし、自動車は金がかかる。大量生産を始めるまでにはどれだけ必要か寒気がするほどだ。

 そこを繋ぐためにもシャンプーを販売して金を稼ごうと考えていたのに、ある日を境に令嬢たちの髪が輝くようになってしまった。


「ゴメス派の令嬢を中心に、髪の手入れが変わったようです」


 使用人間の情報網を使ってウィローが調べてくれたが、皇太子殿下が気に入った男爵令嬢と、殿下の婚約者である侯爵令嬢が表面上親しくなって、そのあたりから髪の手入れが変わったらしい。

 男爵令嬢が皇太子に見初められるって……。


「乙女ゲーかよ」

「なんでございますか?」

「いや、なんでもない」


 ヒロインの男爵令嬢が攻略相手を落とすゲームが……!


「その令嬢、フローラって名前だったか?」

「ご存知でしたか?フローラ・ヒメネス、ヒメネス侯爵の末弟で陪臣のケヴィン・バロー・ヒメネス様の一人娘です。ただ、ヒメネス男爵は未婚で、令嬢とは言え婚外子の様ですが」


やっぱり!


「国内にラーン学園ってあるよな?」

「はい、貴族ではない上流家庭や裕福な中流家庭の子女が通う教育施設です」


――俺、そっちがよかった……。


 何でギャルゲーの学校がある世界に生まれて、乙女ゲーの学校に通わなきゃならねぇんだよ!

 ラーン学園なら、ひょっとするとピーチちゃんも通ってるかもしれないのに!


 『百花繚乱いろどりまんかい♡恋しませんか?』な世界で、花の名前が付いた攻略対象達との、夢のような学園生活!


「負けた……俺は生まれた瞬間から負け組だったんだ…………」

「旦那様、大丈夫ですか?」

「心がバキバキに折れた……」


 あまり詳しくないが、『モモ恋』と同じ会社が出した乙女ゲーのヒロインがフローラだった。両方が共通する世界観で設定されているとかで、ホムペの情報を斜め読みした覚えがある。

 悪役令嬢はお約束のドリルヘアーで、かなりの巨乳だったよなぁ~。


――たぶん、どっちかの令嬢が俺と同じ元プレイヤーなんだろう。


 王道のヒロイン転生や悪役令嬢転生なんてラノベがあったはずだ。どっちが転生者なのか見極めて、場合によっては接触した方が良いかもしれない。

ギャルゲー学校に入れなかったヴィンセント君w

ねーねー、どんな気持ち?って、聞くまでもなくバキバキでしたね

(;´・ω・)ゴメン


システム・パナール

1891年、フランスのパナール・エ・ルヴァソール社から発売された、パナール・ルヴァソールに搭載された機構。

エンジン後方にクランチ、トランスミッションを縦一列に配置。FR方式の差動装置で、後輪を駆動させている。

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