最初の相談者
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人助けなんて柄じゃない
ホームルームが終わったので教科書類を詰めていると、俺の後ろで名前も知らないような女子が他愛のない会話を繰り広げていた。
「ねえねえ!そのシュシュ似合ってるね!どこで買ったのー?」
「え?あー、これ?一昨日ラミネで買ったんだよね。」
「へぇー!あたしもそれ欲しい!色違いでお揃いにしようよ!」
途端、俺の口内に苦味が広がった。
またこれか。味覚で感じただけマシだな。
「あー…うん。そだね。今度買いにいこっか!」
「うんうん!約束だよー!」
一方は万遍の笑みを浮かべているが、もう一方は作り笑いだ。俺には分かる。
俺には限りなく需要のない能力がある。
端的に言うと、稀に近くに居る人の感情を五感で感じ取る能力だ。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
感情を感じ取る際にはこれらの感覚機能の中から1つランダムで選択される。
今回の件を例に挙げると、苦味を感じたときは、苛立ちを指す。他にも様々な感情の感じ方がある。
このように、俺は謎の能力によって、日常的に苦しめられているのだ。
得をすることも稀にあるんだけどな。
「とりあえず部活行くかぁ…」
重い腰を上げ、廊下の雑踏の中を歩く。
目的地は文化系の部の中で最弱最小の部、ボランティア部だ。
部室は部室棟の最深地にある。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あー…やっと着いた。」
余り物の物置部屋を部室としたここ、ボランティア部はとてもこじんまりとしたものだった。
部員は俺、相原悠斗ただ一人。
部員が一人なのにも関わらず、お節介なロリ顧問、宮野千尋先生が無理やり存続させている部活だ。
小さな部室に簡素な長テーブルが一つと椅子が四つ。
カバンを放り投げ、俺の特等席である窓際の席にどっかりと座る。
特にする事も無いので、窓の外を眺めてみるが、これといって面白いものもない。
ボランティア部の活動は、無いに等しいのだ。
稀に先生の頼み事や、行事の準備、片付け等の雑用が回って来るだけのご奉仕隊なのである。
まぁ、部員が一人なんだから、隊ではないだけどな…。
すると、この部屋にしては珍しく、やや控えめなノック音が響いた。
噂をすればなんとやら、先生がやってきたようだ。
「開いてますからどうぞー。」
数秒待ったが反応が無い。
気のせいか?いや、たしかに音はしたはずなんだが…。
そしてまたノック音。
「開いてますよー!」
大きな声を出しても反応がない。
居留守をするわけにはいかないので、仕方なく重い腰を上げてドアを開ける。
するとそこに立っていたのは先生ではなく、小柄で、どこかオドオドした女生徒だった。
白いカーディガンに水色のヘアピン。
見てくれからして、控えめな性格だろうと推測できる。
ほら、色んな所も控えめだしな。
そんなくだらない事はさておき、こんな所に生徒が何の用だ?
「あの……ここ、ボランティア部ですか…?」
「あ、あぁ。そうだけど…こんな部に何の用だ?」
「相談したいことがあって…。」
消え入る様な声で話す彼女に、何故かこちらまで動揺してしまった。
先述の通りボランティア部は最弱最小の部のため、生徒からの知名度も高くはない。
だから、生徒がボランティア部に来ることは滅多に無い。ましてや頼み事だなんて初めてだ。
「まぁちょっと狭いと思うけど、とりあえず入ってくれ。」
「はい…。」
ドアの前で話すのも手持ち無沙汰だし、ひとまず彼女を部室に招き入れて、話だけでも聞いてみようか。
「適当な所に座ってくれ。お茶とか何も出せないのは申し訳ない。」
「い、いえ…お気になさらないでください……。あっ、し、失礼します!」
いまだに緊張が解けないらしい彼女は、あたふたとした様子で椅子に座る。
改めて彼女を見てみる。
彼女の容姿は整っており、綺麗と言うよりも、可愛いと表現するのが相応しい女の子だ。
小柄なせいか保護欲を掻き立てられる感じがする。
彼女についてあれこれ考えていると、彼女はその場に居づらくなったのか、口を開く。
「あ、あのっ!えっと…その…。」
ひどく緊張しているようだ。
俺に敬語を使っているあたりから推測すると、恐らく一年生だろう。
「君の名前を聞かせてくれるかな?」
「あっ…ご、ごめんなさい。私、白雪 真白っていいます。クラスは…1年B組です…。」
「俺は相原 悠斗。2年E組だ。それで、こんな所に相談だなんて一体どうしたんだ?」
次回は真白のお悩み相談からスタートです。
ちなみに真白は銀髪ショートの設定です。
(僕の好みですがなにか。)