表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

魔法少女カオルの大ピンチ(1)

 魔法少女カオルは大ピンチだった。

「わあああぁぁぁ」

 夜の公園のど真ん中で、カオルは巨大な植物の触手に右足を掴まれ、逆さまに吊るされていた。

 肩まであるオレンジがかった黄色のツインテールも、今は逆さまになっていて、フリルがふんだんに盛られたピンク色のスカートは手で押さえずにいるせいで、白いカボチャパンツが丸見えになっていた。

 巨大植物は家一軒よりも大きく、下が球根状の形になっており、その上には大きな花が咲いていた。花の中心は大きく口を開け、何でも飲み込んでしまいそうだ。カオルを捕まえている触手は、球根から何十本も生え、カオルを掴んでいない余った触手は、今もカオルの周りをウネウネと動いている。

 先ほどまで、触手にグルグルと振り回されていたせいで、カオルは目を回していた。

 両手を投げ出し、カオルの上着が少し捲れて、ヘソがチラリと見えている。

 カオルが目を回していることをいいことに、植物は触手をカオルの身体中に這わせ始めた。

 足首からふくらはぎ、太ももへと這い上がり、触手が一本、二本と増えていく。上着のすそから入り込み、触手がカオルの服の中を這い回る。

 カオルの身体は、植物の出す粘液でドロドロになっていた。

「うへぇ。気持ち悪うぅ」

 目眩から回復したカオルは、触手から抜け出そうとして暴れるが、触手がさらに増えただけで、解放されることはなかった。

「くそっ」

 カオルの唯一の武器である、先がハート型になっているステッキは、振り回された時に落としてしまっていた。

 カオルは触手を両手で掴み、ちぎろうとする。しかし、力を入れたとたん植物の粘液で滑ってしまった。何度かチャレンジするが、全くうまくいかない。それどころか、触手に両腕を取られ、バンザイをする形で縛り上げられてしまい、ついには身動きが出来なくなってしまった。

 触手が足を片方ずつ掴み、左右に広げる。服の中の触手も大胆に動き出し、そのせいで、上着が胸のすぐ下まで大きく捲れ上がってしまった。

「ちょ、やめ」

 触手はカボチャパンツの中にまで入り、それをジリジリとズリ下げ始める。

「うおおおおおお。そこはマジでやめろ!」

 今すぐにでも、この触手から抜け出さなければならない。

 さもなければ、とんでもないことに。

 その時を想像して、カオルはゾッとした。

 残る刃は己の歯のみだが、さすがにこのヌルヌルの触手に噛み付きたくはない。

「つーか、助けろよ! このバカネズミ!」

 カオルは地面の上をウロチョロする白い動物に怒鳴った。

 動物は長い胴体と短い手足、細長い尻尾を持ち、器用に後ろ脚だけで立ち上がり、前足でカメラを掴んでいた。背中には小さなリュックを背負っている。

「ボクはネズミじゃありません! どちらかと言えばイタチです! そして、属するのなら、女の子に大人気のフェレットに属したい!」

「うるせえええ! こんな時にまで、くだらないことをぬかすんじゃねえ!」

 カオルは怒声を上げる。その間にも、触手は容赦なく動き、カボチャパンツをいっきに下げた。

「ひいいぃぃ」

 カボチャパンツの下から、しましまパンツが現れる。粘液でヌルヌルのカボチャパンツは、足を開いていたおかげか、ヒザで止まっていた。

「ナイスシャッターチャンス!」

 白いイタチはカオルを色々な角度からカメラに収める。

「こんのクソネズミィィィ!」

「ボクはネズ――」

「早くしろおおお!」

 白いイタチの言葉を遮るように、カオルは怒鳴った。

 植物はその触手を、しまパンにまで伸ばし始めている。

 時間がない。

「はいはい。わかりました。カオルさんの良い写真も撮れたことですし、何かアイテムを買いましょう」

 白いイタチはリュックを下ろし、カメラをしまうと、さらに前足をリュックに突っ込んだ。リュックの口がゴムのようにミニョンと伸び、リュックよりも大きなノートパソコンを取り出す。そして、リュックを背負い直し、ノートパソコンを開いて電源を入れた。小さな前足でキーボードを押し始める。

「さーて、何がいいですかね。植物タイプに有効なのはっと」

「早くしてくれぇ」

 パンツを下げようとする触手は、すでに太ももまで来ている。

「まずは、触手をどうにかしないとですよね。そうなると……」

「まだかぁ……」

 カオルから情けない声が出る。

 触手の先が、しましまパンツの先にかかった。

「ネズミ!」

 悲鳴にも似た声を上げ、カオルは白いイタチを急かす。

「よし、これですね」

 白いイタチが、ターンと勢いよく払うようにしてキーボードを叩く。すると、ノートパソコンの画面から、緑色の大きなハサミが出て来た。ハサミの中心にはハートがあしらわれている。

「どんな植物も真っ二つ。チョッキンリーフ! これで、触手もバッサリです」

「早く切ってくれ!」

 触手はパンツの端にグルグルと巻きつき、今にも下ろそうとしていた。

 白いイタチはハサミを口で掴み、触手の上を走ってカオルのもとに急ぐ。植物はカオルにしか興味がないのか、白いイタチを攻撃してこない。

 白いイタチは触手の上をスイスイ走り、カオルのそばまで来た。

「腕の触手を切れ!」

 カオルの言う通り、白いイタチはカオルの右腕に絡みつく触手を切った。

「よし! ハサミ寄こせ!」

 白いイタチからハサミを受け取ると、カオルはすぐさま自分に絡みつく触手を切った。左腕、腹、腰、パンツ、足と順番に触手を切っていく。

 身体を支える触手がなくなり、カオルは地面に落ちるが、クルンと身体を回し、うまく着地する。そして、ズリ下げられたカボチャパンツを上げた。白いイタチもその隣に着地する。

「こんの変態植物が。覚悟しろよ!」

 声を荒げながら、カオルは周りを見回す。

「あそこか」

 カオルの見る先には、ステッキがあった。植物の根元に落ちている。

 カオルはハサミを構えると、植物に向かって走り出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ