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三日目と結果

これは、今年チョコを貰えなかった同志たちに捧げる鎮魂歌(レクイエム)

 バレンタイン予防策を初めて三日目。特に作戦を思いつかなかった勇と十海は手当たり次第に土下座。靴を舐めてまで懇願するが、足蹴にされる。二人が完全にマゾヒストになったこと以外に成果はなし。

 


 そしてバレンタイン当日。貰えたチョコの個数など推して知るべし。

 昼休み、俺たちは屋上で貰ったバレンタインのチョコを披露していた。


「俺は母さんからひとつ」


「はい、俺は姉ちゃんからも貰えたから二つ~」


「ハッ、残念~。俺はばあちゃんからも貰えたから三つ~」


「うわー、負けたわ~」


 なんて虚しいんだバレンタイン。

 なんとかしてチョコを貰うことはできないだろうか。


「あー、でも女の子から手渡しでチョコ欲しかったな~」


「そうだな~」


 十海と勇が愚痴を零す。その会話に、俺は閃いた。


(これなら――イケる!)


 次の瞬間、俺は眦を決し蹶然と地を蹴り走り出した。


「お、おい!?」


「どうしたんだよ!?」


 背後の二人の声を振り切るようにして俺は校外のコンビニへと向かった。




 数分後、俺は再び屋上へと戻ってきていた。

 ――チョコを片手に。


「なっ、何故お前がっ……!?」


「市販のチョコとは言え、包装されている……だと!?」


「お前らは一番簡単な方法に気づかなかった」


 そう、要は女性から手渡しで貰えればいい。つまり、それは無償の愛でなくてもいいわけだ。

 要するに、


「コンビニ行って女性店員がレジのときにチョコ買えばいいんだよ!!」


 俺は声高に宣言した。

 衝撃の事実は空気の震動となって二人に吸い込まれ、膝を屈しさせる。


「ま、まさか……」


「そんなことが可能だなんて……」


 戦慄する二人をよそ目に、俺はひと時の充足感と埋められない悲壮感を覚えていた。

 ああ、何をやっても


「虚しい……」


 バレンタインなんてクソ喰らえ。

                          ――終わり――

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