能力
門をくぐって城の中に入る。
豪華なシャンデリアが施されたエントランスらしき広い場所で、中に人は誰もいなかった。
若干人のいるような気配は感じる。
どこかで誰かに見られているのだろうか…。
正面の階段を上がり、男が扉を開ける。
空き瓶のような円錐形のエレベーターが設置してあり、それに乗って最上階まで向かう。
周りが透明だったので上の方まで行くと若干怖く感じた。
扉が開き最上階の広間に足を踏み入れると、もう一人の黒服の男が目の前に現れて、何も言わずに僕ら2人を案内した。
少し歩くと大きな扉がまた目の前に現れた。
新しい方の黒服の男が何やら扉に向かってブツブツ話しかけている。
次の瞬間扉が開き、中から蒸気のようなものがテレビの演出みたいに吹き出してきた。
「一人で入れ。」
と聞いた事のない声で言われた。
「あ…はい。」
とぎこちない返事をして、僕は恐る恐る薄暗い部屋の中に入った。
扉が閉まり完全に真っ暗になったかと思った次の瞬間明かりがつき、目の前に一体の巨人が大きな椅子に座っていた。
巨人は全身を黒のマントで覆い隠し、鎧のようなゴツい金属でできた足と手が見える。
顔にはロボットのようなマスク?をつけており、一層恐怖感が増してくる。
これがこの機関の神たる存在…なんて恐ろしい。
『私は機関の神ではない…神に創造させりし代弁者。』
「神ではなく、代弁者?」
この今にも襲いかかってきそうな巨人が神ではなく…代弁者だってー!
だったら本当の神はどれだけ巨大な体をしているんだ…。
いや、逆に良くあるパターンで僕と同じくらいの身長で幼子って可能性もあるな…。
『我らが神は、そのような乏しい人格など持ち合わせておらぬ。貴様のような下賎な者が神を愚弄するつもりなのであれば、このビスマルク、容赦しない!』
心を読まれたらしい。
この巨人…ビスマルクを激怒させてしまった。
「違うんです、ただの好奇心でどんな格好をされているのかなと気になって…」
『それは神をけなす事と同じ行為だ…はじめてなので多めに見てやるが、今度私の前でこのような愚劣な行為を行った場合、たたでは済まさぬ、覚えておけ。』
「は…はぁ、申し訳ない。」
一応申し訳なさが通じたのか、ビスマルクは次の話題に入った。
『では、貴様にふさわしい新たなる力、アビリティを捧げる。』
ビスマルクがその巨大な体を立ち上がれせ、大剣を床に突き刺す。
すごい音がして、床に亀裂が入る。
「うわっ!」
まばゆい光が僕の周りをつつみ、竜巻のような風が吹き出す。
ビスマルクが何やら呪文のようなものを唱えている。
周りに電気が走る。
一瞬の出来事で何が起きたのか分からなかったが、次の瞬間、はっきり見えた…。
女の人…?
白い幽霊のような格好の見女の人が、この今何が起こっているのか分からない状態の中で立っているのだ。
そして、その女の人が僕の心臓に手をえぐり込み中に何かを注入する。
激痛が走り出した。
が、それも数秒の出来事。
全ての儀式が終わった時、僕は耐えきれずにその場に倒れてしまった。
『これで終了だ。後は神のために全てを捧げ、精進するがいい。期待している。』
この状態ではビスマルクが何を言っているのか分からなかった。
扉が開き誰か入ってきて僕を運び出そうとしていた。
この時になってはじめてあの黒服の男の顔が見れた。
イケメンかよ!!と、ツッコミ入れたくなったがそんな気力はなかった。
「だらしねえなぁ。」
と、言われ…意識がどんどん遠のいて行く。
そんな中、聞いた事のない女の人の声が頭の中に入って来た。
「これから長い間よろしくね。……君。」
これが気絶する前の最後の記憶だった。