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第五話 アダプター/キーパー

今、俺と里沙さんは、町を歩いている。



「あの…里沙さん?」


「ん、何?寺岡君?」


「本当にこんな感じでパトロールになるんですか…?」


「そうよ、いつもこんな感じ」


「はあ、結構暇ですね…」


「そんな事ないよ!

だって、男の子とデートしてるようなものだもの」



俺は思わず咳込んだ。

急に、変な事いいやがった。



「げほっ…!!

急に、な、な、なんてことですか!?」


「ふふ、寺岡君ったら…やっぱりかわいい!」


「もう、からかわないで下さいよ!」


「あー、ゴメンね!

寺岡君かわいいから、ちょっとイジメたくなったの」


「あ、そうですか…」



これだから、年上の女性は苦手だ。

ただ、目を合わせるだけでも恥ずかしくなる。


今も里沙さんの横を歩いていると、何だか変な気分になる。



「ねえ、寺岡君?」


「は、はい何ですか!?」


「腕組んでもいいかな?

せっかく町に来たし…ね?」


「え、ええ…!?」



益々、変な気分になってきた。

里沙さんは俺に一体何がしたいんだか。


「あ、嫌ならいいんだけど…」


「あ、いや、嫌ではないですけど…その…」


「じゃあ、いいよね!」


「な、なっ…!?」



里沙さんが俺の腕に飛びついてきた。

腕に柔らかい感覚が伝わって来る。



「私、一度男の子とこういう風に腕組んで歩きたかったの!」


「あ、あ…そ、そ、そうなんですか…」



心拍数がいつもより増えているような感じだ。

そろそろ色々と限界だった。



「ねえ、寺岡君…

もう一つお願いしていい?」


「な、な、な、何ですか?」


「キスしない?…なんてね」


「っっっ…!!?」



見事に止めを刺された。

頭はもう、真っ白だった。



「もう……無…理……!!」



俺は、里沙さんの甘い言葉耐え切れず、腕を振り払った。



「うわああああああああああああ!!」



俺はその場から全力疾走した。

その場にはいるのは、もう無理だった。



「ああ、ちょっと!?

どうしたの、寺岡君!?」



里沙さんを無視して、俺は全力で逃げた。

とりあえず、この人としばらくは一緒に行動したくなかった。







俺はある公園まで逃げて来た。

息が上がって、死にそうだ。



「うぅ…疲れた…」



俺は公園のベンチに勢い良く倒れ込んだ。



「熱い…もう歩けないぜ…」



その時、頭に冷たい物が当たった。

自動販売機で買ったジュースのようだ。



「大丈夫?ほら、ジュース買ってきてあげたから」


「あ、どうも。

…って里沙さん!?」



横にいたのは、紛れも無く里沙さんだった。

いつからいたんだろうか。



「もー、寺岡君が逃げちゃったから、すぐに追いかけて来たんだよ!」


「めっちゃ足速いですね…ジュースまで買ってるし…」


「実は私…元陸上部だから体力には自信があるの!」


「そうだったんですか…

あの…さっきは急に逃げたりしてすいません…」


「いやいや、私もちょっとからかい過ぎたと思うから、気にしなくてもいいよ」



俺は、さっきのパトロールの事を思い出した。



「あれ?俺が逃げてる間、パトロールはどうしたんですか?」


「もちろん中止。

かわいい後輩を放ってなんか置けないもの!」


「…すいません」


「そんなのいいから!

ほら、今から再開しよう!!」


「は、はい!」



俺と里沙さんは、公園を後にした。


それから、約30分ぐらい経った頃、パトロールに変化が起きた。



「来るわ…!!」


「え…!?」



里沙さんの様子がさっきまでと違っていた。


目の前の景色が段々薄暗くなってきて、

空が灰色に染まっている。



並列世界の出現だった。



「里沙さん…何で分かったんですか?」


「並列世界が出現する時、微かに目の前の景色が揺らぐの。

もし、貴方も適応者なら、こういう所に気をつけた方がいいと思うわ」


「はあ、なるほど…」



里沙さんの手元から、いきなりハンドガンが出てきた。



「これが私の専用武器のハンドガンよ!

もう一つ、スコープ付きライフル銃もあるんだけど…」


「という事は…俺の専用武器っていうのはこれですか?」



俺はダミー・サターンのチェーンソーを出現させた。

相変わらずの禍禍しさだ。



「これは…!!」


「実は、ダミー・サターンから奪いました」


「という事は、専用武器ではないわね。

専用武器は、適応者が自分で創り出せる武器の事を言うの。

まあ、専用武器が出せるまではそれでいいと思うけど…」


「へー、そうなんですか」



その時、ダミー・カットラーが3体同時に突進してきた。



「うわっ!いきなり来た!」


「寺岡君、下がってて!」



里沙さんが俺の前に立って言った。

改めてハンドガンを構える。



「相手がダミー・カットラー3体ぐらいなら、ハンドガンの弾3発で充分ね!」


「り、里沙さん!?

それぞれに1発しか撃たないなんて、無理してカッコつけてませんか!?」


「カッコつけてはいるけど、無理してなんかないわ!」



里沙さんは、咄嗟に化け物達に近づき、ハンドガンの銃身で1体のカットラーの頭を殴った。


その動きは、カットラーよりも格段に速かった。

それか、カットラーが鈍いだけなのか。


そのカットラーは、殴られた勢いで地面に倒れ込んだ。



「さあ、喰らいなさい!」



銃口をカットラーの頭部に向かって発砲した。

辺りに銃声が響く。

化け物の体が動かなくなる。



「まずは1匹!!」



その時、里沙さんの右と左の両側から、カットラーが襲いかかって来た。


しかし、里沙さんは動揺しなかった。



「そんなんじゃ、私は倒せないわよ!!」



里沙さんは、その場にしゃがんでカットラーの攻撃を避けた。


それと同時に、2体のカットラーの足を蹴り飛ばした。

カットラーはバランスを崩して無防備になる。



「よし、これで終わりよ!!」



里沙さんは、空いているもう片方の手に、もう一つハンドガンを出現させた。


そして、カットラーに向かって走りながら、二つの銃口を2体のカットラーのそれぞれ頭部に向けて発砲した。


二つの銃声が、戦いが終わった事を告げる。


今までの光景を見て、俺は思わず呟いた。



「里沙さん、スゲェ…」


「ふふ、そうかしら?

最初に言った通り、弾は3発で充分だったでしょ?」



戦いを終えた彼女は、俺の方をを見て笑顔でそう言った。







その後も、パトロールは続き、何度も並列世界に行った。


そして、俺と里沙さんが今いるのは、三度目に出現した並列世界だ。



「寺岡君、援護お願い!」


「分かりました!!」



そして今は、ダミー・サターンと、それが率いる2体のダミー・カットラーとの戦闘の真っ最中だ。


俺は2体のカットラーを、チェーンソーの相手をしていた。




里沙さんは、ライフル銃のスコープを里覗いている。



「この化け物ォ!!」



俺はチェーンソーでダミー・サターンに突っ込んだ。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



俺とダミー・サターンで鍔ぜり合いになった。


その隙に、里沙さんが引き金を引いた。

見事に、ダミー・サターンに命中し、勢い良くぶっ倒れる。



「うわ、すごい…

ダミー・サターンを一撃で…」


「ふふ、当然よ!

私のライフル銃の威力をナメてもらっては困るわ!!」



だがその時、倒したはずのダミー・サターンが起き上がった。



「寺岡君、後ろ!!」


「な…うわっ!?」



今にも切り付けられそうになった時だった。


ダミー・サターンの胴体に槍が刺さった。

そして、その槍は胴体から抜けたと思った時には、頭を見事に切り裂いていた。



−刹那の沈黙−



今さっき、自分達を襲おうとしていた化け物が真っ二つにされている。


俺と里沙さんは、訳が分からず呆然と立ち尽くしていた。



「ど、どうなってるんだ…」



そして、化け物の死体の前に、神秘的な槍を持った、黒いコートを着た少女が立っていた。


彼女がダミー・サターンが殺したようだ。



「あ…もしかして、私達を助けてくれたの?」


「…ソウネ」



その少女は、機械的な声で里沙さんに答えた。



「アナタ…適応者ナノネ」


「な、なんでその事を!?」


「気配デ分ル…隣ノアナタモソウ…」



少女は、俺を見て言った。



「俺は…適応者なのか?」


「ソウヨ…ワタシ達ト同ジ気配ガスルモノ…」



俺は少女に聞いた。



「それなら、お前は何者だ?」


「ワタシハ…コノ世界デ戦ウ者ノ一人…

名前ハ…アスタリスク…」


「アスタリスク…」


「アナタ…変ッテルワネ…

ワタシ達、管理人二興味ヲ示スナンテ…」


「…管理人?」


「ソウ、ソレガワタシ達…

化ケ物ヲ浄化スル存在…」



少女は、背を向けて立ち去ろうとした。



「おい、待て!

最後に一つ、答えてくれ!!

管理人って奴は、俺達の味方なのか!?」


「敵味方デ言ウナラバ…

今ハ、味方ヨ…アナタ達ミタイナ同胞ニハ…手出シハナイ」


「俺達みたいな同胞…?」


「ソウ、ソレガ適応者と管理人ノ関係ナノヨ…」



謎の言葉を残し、アスタリスクは並列世界とともに消えていった。


この管理人という存在…

それが、並列世界出現の鍵を握っているなんて…


まだ、この時は誰も知らなかっただろう…



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