表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

第四話 アナザー・レジスタンス

川村の家から出た俺は、暗くなった帰り道で、ずっと考え込んでいた。


今の俺は、他人から見るとチェーンソーを持った危ない人に見えかねないが、持って帰るには手に持つしかない。



「俺は…本当に適応する才能があるのか?」



俺は、川村から貰ったチェーンソーを見た。


俺だけがこれを動かせる…

ただ、それだけだ。



「まあ、考えたところで何も変わらないか…

さあ、帰ってさっさと寝るか」







「ただいま…」



家に帰ると、俺は小声でこう言って、部屋に直行した。

チェーンソーを持ったままなので、家族に気づかれたくなかったからだ。


部屋に入って急いで部屋の鍵を閉める。



「はあ、とりあえずはこれでよしと…」



机の上にチェーンソーを置いた後、ベッドに横になった。

そして、ダミー・サターンに付けられた傷口に手を当てた。



「ったく、今日は酷い目にあったな…

川村が治療してくれたけど、まだ痛いな…」



でも、川村の治療はなかなかのものだった。

治療した後と前では、腕の調子がまるで違った。


本人曰く、看護の進路に目指す過程で身につけたらしい。



「それはそうと、あのチェーンソー、使えそうなんだが…

使うにはちょっと嵩張りすぎだからな…」



俺はチェーンソーを手に取ってから、よくよくチェーンソーを見た。



「…どうにかならないのか?」



そう思ってチェーンソーに触っていると、チェーンソーが音をたて始めた。



「うわっ!なんだ!?」



すると、たちまちチェーンソーが消えた。



「な、消えた…!?

まさか…俺がさっきどうにかならないって思ったからか!?」



俺はチェーンソーを思い浮かべた。

たちまち、手の平にチェーンソーが現れる。



「これなら…持ち運べるな」



俺は、チェーンソーを再び消した。



「川村の言う通り…俺には、適応する才能があるのか?

まあ、今はとりあえず寝るとするか…」



俺は明日の準備もせずに、そのままベッドで寝てしまった。







次の日、俺は朝早く起き、今日の勉強道具を調べていた。



「えーと、今日は数学に、英語と…」



突然メールの着信音が鳴り響いた。



「うわっ!誰だよ…

今、5時だぞ!?」



メールを確認すると、黒川先輩からだった。



『至急確認したい事があるから6時半に学校に来てくないか?

あ、チェーンソーもちゃんと持って来てくれるといいんだが』



「黒川先輩か…

6時半に来いって面倒だな…」



俺は仕方なく、早く学校に行く準備を始めた。







俺は6時半ちょうどに学校部室に着いた。

早速、部室に向かう。



「はあ…こんな朝から一体何の用なんだ?」



俺は部室の扉を開いた。



「黒川先輩、こんな朝から何の用ですか?」


「おお、寺岡!待ってたよ!」


「先輩、普通ならあのメール…絶対気づきませんよ?

たまたま早起きしてただけですからね…」



黒川先輩は、苦笑いしながら言った。



「いやー、ゴメンゴメン。

早く確認したい事があったからね…」


「ったく…何ですか?」


「君が持ってるチェーンソー…ちょっと見せてくれる?」


「ああ、いいですよ。

ちょっと待ってて下さい…」



俺は、チェーンソーを思い浮かべた。


すると、チェーンソーが姿を現した。


それを、黒川先輩が目を丸くして見ていた。



「寺岡…君はチェーンソーを自由に出現されられるのか!?」


「はい、何かできました」


「そうか…やっぱり寺岡にはあの可能性があるね…」


「あの可能性…?」


「そう…ちょっと待ってて」



黒川先輩は、ロッカーから何かを引っ張り出してきた。

『並列世界極秘資料』と書かれたファイルだった。



「黒川先輩…これは?」


「逆茂木高校並列世界対抗組織作成の並列世界に関する極秘資料だよ。

一応、他の対抗組織からも情報を貰って作ってるから、世界的にも認められてる大事な代物だよ」



長くてなんだかややこしい。

俺には分からない事だらけだった。



「え、他の対抗組織…?

それに…世界的に認められてるって?」


「ああ、まだ教えてなかったっけ…

並列世界対抗組織は、世界各国のいくつもの高校に存在しているだよ」


「…世界各国!?」


「そう…並列世界の出現場所となるのは、この逆茂木高校周辺だけじゃないんだ。

日本中疎か、海外にだって出現するんだ」


「そ、そうなんですか!?」



世界で同じ現象が起こっているなんて、予想だにしなかった。


むしろ、この逆茂木高校周辺だけの問題だと思っていた。



「得に関わりが多いのは…国内なら、滝川高校とか城谷高校の対抗組織だね。

海外なら、アメリカ支部、中国支部、オランダ支部とかだね」


「あれ…?海外は支部でまとまってるんですか?」


「ああ、そうだよ。

分かりやすく言えば、日本人はどちらかと言えば、オカルトとか信じないだろう?

でも、海外だと宗教とかの関係で、オカルトを信じる人の割合が多い気がしないか?」


「まあ、確かにそんな気が…」


「だから、考え方が割とドライな日本人に比べて、オカルトを信じる外国人は、かなり固まりやすいわけだ…

まあ、日本人が危機感無いだけかも知れないけど…」


「はあ…なるほど…」



並列世界の存在は、思っていたよりも遥かに大きいものだとわかった。

そして、このオカルト研究会の存在も、大きく頼もしい集団に思えてきた。



「組織の事は、大体理解しましたが…さっきの話題は…?」


「ああ、並列世界に関する、極秘資料の話だったね!」



黒川先輩はいそいそとファイルを開いて、あるページを俺に見せてきた。



「この資料は、滝川高校と城谷高校と、その他海外の支部との共同で作り続けている資料なんだが…

そこに、君とよく似た力を使う人間がいたというデータがあるんだ。

この滝川高校の中城里沙なかしろりさという高校生三年の女子さ」


「滝川高校の中城里沙…

一応、先輩に当たりますね」


「そうだな、僕と同い年だし。

で、彼女は…並列世界に行く度に、都合よくハンドガンを拾って戦ってるんだ。

寺岡の鉄パイプもなかなか都合よく落ちてたと思うけど、包丁なんてそう簡単に落ちてる事なんて無いよね?

さらに、彼女は化け物から武器を奪い取る事もできたみたいなんだ」


「…武器を奪い取る?」


「そう…寺岡は死んだ化け物の武器を扱えるみたいだけど…

その中城里沙は、生きている化け物から奪い取る事ができるみたいなんだ」


「生きたままって…

一体どうやって!?」



黒川先輩は、資料の違うページを見て言った。



「…本人曰く、化け物の腕を掴んで、外れろと念じるだけみたいなんだ。

すると、化け物の腕から武器が外れて、自分の手の中に転がり込んで来る…らしいよ」


「それ…本当なんですか…?」


「信じられないなら、本人に会ってみるといいよ。

同じ対抗組織の一員なら、他校の組織に行く事も少なく無いしね」


「な…直接会う!?」


「ああ、会えるよ。

徒歩15分程度で滝川高校に行けるし」


「あ、ここから歩いて行けるんですか!?」



俺は、先輩の意外な言葉に驚いた。

さっきまで話していた、自分に似た力を持った人が近くいて…

しかも会えるなんて…普通ならなかなか無いだろう。



「そこで、寺岡が並列世界に適応する才能を持った人間…

つまり、中城里沙と同じ適応者なのかはっきりするよ…」


「適応者…?」


「そうだ。並列世界の道具を使ったり、並列世界において、無意識に望んだ事を現実にする能力を持った人間の事だよ」


「…お、俺がその中の一人だって言いたいんですか?」


「まあ、僕らの勘ではね…

とりあえず、そういう話がしたかったから早く来てもらったんだ。

悪いね、わざわざ早く来てもらって…」


「…いえいえ、大丈夫ですよ」



俺は部室を後にしようとした。

すると、黒川先輩が急に喋りだした。


「あ、そうそう…

今日の放課後なんだが…」


「え、なんですか?」


「中城里沙が来るからね」


「なっ…!?」



俺は、あまりの急展開に驚かずにはいられなかった。







放課後、俺はオカルト研究会の部室に向かった。

朝の話がどうも気になって仕方がなかった。



「もし、俺が適応者だったら…

何かが変わるのか?」



緊張を胸に、部室に入る。



「ど、どうも…失礼します…」



すると、聞き覚えが無い声が聞こえた。

この学校と違う制服を着た、ポニーテールの女子が一人座っていた。



「あら、貴方が寺岡君?」


「あ、はい。そうですが…」


「話は…多分聞いてるよね?

適応者の一人…中城里沙よ」


「え、貴女が!?」


「そう、寺岡君よろしくね!」


「は、はい…よろしくお願いします…」



今、目の前にいるのが適応者の中城里沙。

俺にはこの人が、人間離れした才能を持っているとは思えなかった。



「あの…中城さん?」


「里沙でいいよ。

それで、どうしたの寺岡君?」


「あ、じゃあ里沙さん…

貴女が本当に適応者という確信が欲しいないんです。

だから、何か証拠を見せてくれませんか?」


「なるほどね…私が特殊な力を持っているとは思えないと?」


「はっきり言ってしまえば、そうですね」



里沙さんは、少し考えた仕草をした後、こう言った。



「それなら、私の仕事に付き合ってみない?」


「仕事…って?」



里沙さんは、立ち上がって俺に言った。



「私の仕事は、この町のパトロールなの!」


「…パトロール?」


「そう!これ以上犠牲者が出ないように、私が毎日町を歩いているの!」


「なるほど…」


「だから、今から寺岡君も一緒とパトロールしようと思うの」


「え、今からですか?」


「もちろん!今から行くよ!」



里沙さんが俺の手を引っ張る。

本人はやる気満々だった。



「私のすごい所見せるから、ちゃんと見ててよね!!」


「は、はあ…分かりました」



そして、俺は里沙さんに連れられて、学校を飛び出した。


里沙さんに連れられて、才能者の事を知る為のパトロールが始まった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ