~エピローグ~
オカルト研究会の面子が、並列世界から脱出してから、約一週間が経った。
オカルト研究会は、その後廃部になり、その代わりに、新たにゲーム同好会が設立された。
今日も、寺岡の代わりに部長をしている川村が一番最初に部室に入る。
並列世界から脱出した後に目覚めた川村は、自分が『アブソール・ワールド・バインダー』に取り込まれた事、一度寺岡を殺した事を覚えていた。
数日は、ベッドから起きれない程精神的ショックを受けていたが…
一週間経った今、何とか精神が安定し、ゲーム同好会の部長として活動をし始めたのである。
「はあ…今日はチェスでもしようかしら?」
川村が独り言を言っていると、忍が部室にずかずかと入って来た。
ちなみに忍は、ゲーム同好会の副部長になっていた。
「川村さーん、こんちゃあ!」
「あ、三波さん…
今日は、チェスでもしようと思っているんだけど…」
「あ、いいね!
あたし、やるやる!!」
ゲームが大好きな忍は、ぴょんぴょん跳びはねている。
寺岡がいなくなってからは、同好会の雰囲気は、大体はこんな感じである。
そして、もう一人の部員が入って来た。
好きで男装をしている柳川だ。
「川村先輩と三波先輩、こんにちはです!」
「こんにちは、柳川さん」
「あ、瑞穂ちゃん!
ねえ、チェスやろう!!」
「あ、いいですね!
先輩が相手でも、簡単には負けませんよ!!」
こうして、ゲーム同好会の活動は始まるのである。
▽
一方の中城里沙は、ゲーム同好会にもよくよく遊びに来るが、寺岡がいなくなってからは、自分の学校の部活に専念し始めていた。
今日も書道部の部室で、筆を手に取っている。
「さてと、今日は何を書こうかしら?
もう、見本になるものは大会とかで全部書いたし…」
里沙は、何となく思い付いた言葉を半紙に書きはじめた。
それは、なんて事はないただの気まぐれだった。
「よし、書けた…」
里沙は、『平穏』という漢字を半紙に書いていた。
「やっぱり何事も平穏が、一番よね?」
里沙は、そんな独り言を言ってため息をついた。
(寺岡君…元気かしら?
やっぱり寺岡君がいないと、調子狂うわ…)
そんな考え事をしていると、書道教室に別の女子部員が入って来た。
「こんにちは、里沙先輩!
今日は、一体、何書いてるんですか?」
「あ、今日はね…」
里沙は、笑顔で答える。
里沙にとって、寺岡がいなくなって変わって事がもう一つあった。
里沙と少し距離を置いていた部員達との距離が、かなり縮まった事だ。
これは、里沙にとって大きな前進だった。
▽
「…でやぁあっ!!」
「…ぐぁあっ!!」
冴祓渚は、演劇部の演技の真っ最中だった。
今は、『日本刀を持った高校生とチェーンソーを持った殺人鬼が、高校のグランドで決死の決闘!!』という設定で演じている。
もちろん、日本刀を持った高校生というのは冴祓だ。
「この…俺が…高校生なんかに…ガクッ…」
「フン…口ほどでも無いな」
役を演じきった冴祓は、壇上から降りた。
そして、まっすぐ舞台裏の休憩所のベンチにどっかりと腰掛けた。
「はあ…疲れた…」
「冴祓君、お疲れ様!」
冴祓の隣に、演劇部の部長が座ってきた。
「あ、部長。
…どうかしましたか?」
「いやー、君が提案してくれた演劇の脚本…お客さんが沢山来たし、大成功だね!」
「あ、はい…どうも」
冴祓は部長の質問に、怠そうに答えて言った。
部長は、冴祓の行動を見てやれやれという風に言った。
「冴祓君、もったいないなー
顔は良いのに、そんな態度だから…」
「いいんですよ…
俺は、面食い女子なんかに興味はないですからね」
「うっ…!
冴祓君、何でそんな目で私を見るの!?」
動揺している部長を余所に、冴祓は立ち上がった。
「さて、昼寝でもするか…」
▽▽▽
「ふーん…みんな、寺岡無しでも上手くやってるね」
『狭間の砂漠』では、黒川白刃が現世の様子が映されている水溜まりを覗き込んでいた。
「・・・」
「なんて…幸せそうなんだろうねぇ…
本当に、上手くやって…」
「ああ、もう!
黒川先輩、止めて下さい!!」
ニヤニヤしている黒川の隣にいたのは…
なんと、寺岡光輝だった。
「ったく…
現世と並列世界が分断した代わりに、『狭間の砂漠』と並列世界が干渉し合うことになるなんて…驚きましたよ」
「まあ…当然といえば、当然なんだけどね。
あるものが消えれば、代わりにあるものが補う…
世の中のものは、大体この法則に基づいて動いてるからね」
黒川が得意げに答える。
それを聞いた寺岡は冷めた目をして言った。
「中二病…ですね」
「なっ…!
先輩に失礼な事言うな!!」
「はいはい…」
寺岡は立ち上がり、生返事をする。
「さて、そろそろ並列世界に戻るか…
里沙さんとか、川村は大丈夫そうだしね」
「ん、もう用はないのかい?」
「急いでるし、無いな…
こっちも大変だからな…」
寺岡の脳裏には、新たな化け物の姿が過ぎっていた。
寺岡は、時空の裂け目の前に立ってから、黒川に言った。
「じゃあ、黒川先輩…
また生きてたら会いましょう」
「ああ、分かった。
アスタリスク達によろしく」
「ほいほい、言っておきますよ」
寺岡は、化け物の群がる巣窟に戻って行った。
To be continued...?
どうも、AnotherChapterの作者のノノ川玲二です。
AnotherChapter最後までご覧いただきありがとうございました!
今回が初めて筋の通ったストリーを書きましたので、読みずらい個所や、誤字脱字があって読みずらかったかもしれません。
そんな方がいたかもしれないので、この場を借りてお詫び申し上げます。
次回作ですが…AnotherChapterの続編を書くか、新しいシリーズを書くか迷っています。
そのことを踏まえ、感想をいあただけると幸いです。
普通のご感想でも大変ありがたいです。
それでは、最後に改めて…
最後まで本当にありがとうございました!!
それでは、次回作でお会いしましょう!