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C2

百万もの思考と感情が、ゆっくりと視界を占めていく。

真っ暗だった世界に、水彩が紙の上に滲むように色が広がっていった。

やがて、暗闇はまるで杖で割られた海のように分かれ、光に取って代わられた。


少年は目を開けた。

無意識のうちに手足を動かそうとする。

いつもと同じように、特に考えることもなく指は自然に曲げ伸ばしできた。

だが、足の指先だけは感覚がない。それでも脚自体は問題なく動く。

四肢の状態を確かめ終えたところで、脳がようやく本格的に「起動」した。

すると、かつての傷の痛みが遅れて伝わってくる。

少年は慌ててその箇所に手を当てたが、想像していたような血まみれの傷口ではなく、触れたのは硬い体表だった。


常識的に考えれば、そのような感触は冷たいはずだ。

しかし今、そこから伝わるのは不思議なほどの温かさ——まるで生きている存在のようだった。


少年は次に顔を触った。

そこにあったのは人間らしい輪郭ではなく、つるりとした平面。

さらに手を滑らせていくと、自分の頭部がどうやら四角い形をしていることに気づいた。

その瞬間、脳の接続が完全に完了し、彼は意味不明な叫び声を上げた。


声は喉からではない。体内のどこかの装置から発せられているのがわかる。

少年は激しく手足を振り回したが、柔らかさのないベッドのようなものに拘束されており、もがけばもがくほど混乱が増していった。


「パパ! 彼、目を覚ましたわ!」


女性的な声が響く。

それもまた、生物の喉から出たものではなく、機械的な響きを帯びていた。

やがて少年の前に、白い四角い頭をしたロボットが現れる。

黒いモニター状の顔に、水色の電子の瞳がふわりと浮かび上がり、まっすぐ少年を見つめていた。


「大丈夫、大丈夫。君は今、安全だよ。」


ロボットは落ち着いた声で言ったが、少年の動揺は収まらない。


「おまえ……誰だ? なんか、変な顔してる!」


少年はやっとの思いで言葉を紡ぐ。


「すぐに拘束を解除するね!」


ロボットがそう言って何かの装置に触れると、

少年を縛っていたカバーが音を立てて緩んだ。

自由になった少年はベッドから飛び起きようとしたが、

次の瞬間、バランスを崩して激しく転倒し、苦痛の声を上げた。


ロボットは慌てて彼を抱き起こし、穏やかに名乗った。


「私はオリファン0616——ロッセル。ロッセルって呼んでいいよ。

 そして、こちらが私の製作者。人間でいうところの父親、あるいは母親かな。名前はディカ。」


支えられた少年は、ようやく少し落ち着きを取り戻す。

ロッセルの動きには敵意がなく、むしろ優しさがあった。

そして視線の先には、小さな赤いロボットがいた。

頭の上には花瓶のようなパーツが乗っており、どこか愛嬌がある。


少年は思わず吹き出した。


「ハハ! 君のほうが変な顔してるじゃん!」


少年の笑いに、ディカは少し困ったように反応しつつも、柔らかい声で言った。


「許してほしい。君の同意を得る前に、この体へ意識を移してしまったんだ。」


そう言いながら、ディカはロッセルの頭に乗り、上から少年の様子を観察する。


少年はようやく落ち着きを取り戻し、自分の姿を改めて確認した。

鉄灰色の両手にはいくつかの傷があり、さっきもがいたときにできたものだろう。

傷の下からは深い茶色の素地が覗いている。

手を握り、指先を掌に押し付けてみると、触覚が確かにあることに気づく。

全身は硬い金属でできているのに、指先の感触は生きているかのようだ。

少年はその違和感を楽しむかのように、何度も手を動かしてみた。


次に手のひらで自分の四角い頭を撫で、床にも触れてみる。

頭の上のディカは、板状のクリップを手に持ち、少年の様子を観察しながら「触覚感知」のチェックボックスに印をつけた。


手の動きに問題がないことを確認した少年は、立ち上がろうとした。

さっきは慣れない体で逃げようとして転んだが、今はロッセルに支えられ、しっかり立つことができる。

足の裏は人間の足の形を模しているが、指はなく、一体化している。

底面には滑り止めの加工がされ、膝には軸受が埋め込まれ、脚は太さの異なる金属の棒やカーボンファイバーで構成されている。

腕も同じ構造だ。

脚にはオレンジイエローの塗装が施され、「オリファン-0617」の番号が白で入っている。

少年は脚を曲げ伸ばしし、数歩歩いてみる。以前と変わらない感覚で、すぐに体に馴染んだ。

ディカは「歩行能力」のチェックに印をつけた。


ロッセルが持ってきた鏡を通して、少年は自分の頭部と上半身をより鮮明に確認する。

頭は正方形の滑らかなオフホワイトの外装で、正面には黒いモニターがあり、橙色の楕円形の目が二つ映し出されている。

首はなく、ロッセルと同じように体の上に浮かんでいる。

頭の両側にはオレンジ色のモジュールがあり、耳のように細孔や溝が並んでいて音を拾う仕組みだ。

今まで、二人のロボットの声はくっきりと聞こえており、「聴覚感知」のチェックも完了している。


「僕……ロボットになったの? 確か、まだ走っていて……それから……それから……」


少年は四角い頭を触りながら言葉を探すが、思い出すべき映像は空白だった。

走っていたことは覚えているが、どこで、なぜ、どこへ向かっていたのかは全く思い出せない。

記憶が切り貼りされたかのように、目覚めた瞬間まで飛んでしまっていた。


「断崖の底で君を見つけたんだ。傷がひどくて、もう瀕死の状態だった。」

ロッセルは少年の困惑を察して、自分が発見した経緯を説明した。


「記憶が飛ぶのは普通のことだ。もともとの脳がひどく損傷していたし、意識を移したばかりだからね。

 心配しなくていい、徐々に思い出せるようになる。ただ、どのくらいかかるかはわからない。」

ディカも補足し、少年の元の体を入れている緑色の医療チューブを指さした。

頭部には装置が取り付けられ、先ほど外したベッドのような器具や、今の体に繋がる線も散らばっている。


少年は元の体に近づき、ガラスに顔を押し当てて観察した。

小さくつぶやく。「僕、元はこんな体だったんだ。」

その言葉はロッセルやディカには届かなかった。


「じゃあ、僕……死んだの?」

少年は振り向き、悲しみなのか疑問なのか判別できない声で尋ねる。

ロッセルはすぐに説明した。


「大丈夫。意図的に破壊されなければ、医療チューブの中の体に大きな問題はない。

 治療に時間はかかるけど、何がどれくらいかかるかは未知だ。人間の治療は初めてだからね……」


「ここに他の人間はいないの?」

少年が遮るように聞くと、ディカは答える。


「君は、過去百年の間で唯一、私たちロボットが見た人間だ。」


「だから、君の意識をこの体に移した。

 元の体を治療しつつ、君はこの体で活動できる。」

ロッセルが補足した。


「人間についての質問も、僕らにできる。」


「でも、僕……何も思い出せない。名前さえ……」

少年は言葉を切り、思い出そうとするが、頭を振る。「本当に思い出せない……」


「いいんだ。この間はここでゆっくり休んで、少しずつ思い出すといい。

 ロッセル、服を持ってきて。」

ロッセルは少年のオレンジの帽Tと茶色のパンツを持ってくる。


少年は服を受け取り、着ようとするが、頭が大きすぎて従来の方法では着られない。

ロッセルは間に手を差し入れ、頭と体の間の空間を調整する。


「え?」

少年は驚き、頭がまるで何かのスイッチで外れたかのように、ロッセルの手に抱えられた。


「え? あれ? どういうこと?」

頭を胸に抱えられたまま、無頭の体は思う通りに動く。

少年はロッセルの意図を理解し、無事に帽Tを着る。

ロッセルが頭を元に戻すと、再び浮かび上がる。


「私たちの浮遊頭部型は、こうして一時的に外せるんだ。記憶のバックアップにも便利。

 慣れたら自分で操作できる方法を教えるから、うっかり落とさないようにね。」

少年は棕色のパンツを穿き、自然に裾を捲って短パンの形にした。

無意識にやる動作だ。


服を着終えると、鏡の前で何度も回転し、新しい姿に慣れようとする。


「名前も思い出せないんだね。」

ディカが問うと、少年は力強く頷いた。


ロッセルは少年の全身を見回し、ふと気づく。

洗濯の際、オレンジの帽Tに特殊なマークがあり、落ちない汚れかと思っていた。

左下の裾近く、黄色とオレンジの布に三角形とLの文字が見える。


「オーリー……」ロッセルが口にするが、少年もディカも意味がわからない。


「ここに三角形をOとして、隣のLと合わせると“OL”。

 読んでいくと“オリ”って名前が浮かんでくるよ。」


「ちょっと無理やりだけどな。」

ディカが呆れたように言う。


「オーリー……いいね、僕この名前気に入った。」

少年は笑顔で返事をする。


「じゃあ、決定だ! オリファン-0617“オーリー”、私たちの家族に正式加入!」

ロッセルは興奮気味に告げる。


「二人しかいないから、まだ家族ってほどじゃないけどね。」

ディカはツッコミつつも、「歓迎する」と言った。


オーリーは頷き、理解を示した


私は台湾人で、日本語はあまり得意ではありませんが、もっと多くの人と自分の作品を共有したいと思っています。翻訳はコンピューターを使って行っていますので、どうかご容赦ください。

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