第52話
神から回収した神力を使ってのイオの延命処置は、無事に成功を収めた。
まるまる神一柱分、とはいかないまでも、ラキアと併用することで日常生活を送るには十分な量の神力が確保されることとなった。
あとでオルテガに神器から神を召喚する研究の資料をわざと盗ませ、試作品を作ったところを強奪すると言うイネーヴァの作戦を聞いた時には、その場にいた誰もが空いた口が塞がらなかった。
実際にオルテガが神もどきを作り上げ、それのおかげでイオが回復できたのだから、恐ろしいことである。
あれから一週間が経ち、逃走したオルテガに関しては詳しい事は分かっていない。
要の話は聞くのだが、オルテガは表に姿を出しておらず、ずっと内にこもっているようだ。
カタストロフィーについても、もともとまともな整備をしていない状態で発射を強行したことにより、もはや完全に機能が停止してしまった。
「なるほど……オルテガのことです。きっと随分と荒れていることでしょう」
「そうですね。あの子のストレス発散はお人形殴りですから」
そのストレスの原因である姉妹間で、懐かしむ会話が行われる。
「状況は理解しました。私の体が回復したのも実感できます。それについては本当に感謝しています」
そう言って、イオが頭を下げた。
が、周囲の人間の反応は薄かった。
「は? あのイオが頭を下げた?」
「ちょっと、これっておかしいんじゃないの?」
「助けて欲しいなんて言っていません、とか言うのかと思ったんだけど」
「まぁまぁ皆さん、言いたい事はよく分かります」
「そうです! どうしてもっと素直に受け止めようとしないんですか」
最後、イネーヴァに同調した縁はどこかずれていた。少し周囲に笑いが漏れる。
そこで、イネーヴァが一度咳払いをする。
「なにはともあれ、これでイオに関しての心配はなくなりました。そこでなんですが、イオ。あなたの力を私たちに貸してくれませんか?」
「どういうことですか?」
イオは、若干目を細めてイネーヴァを見た。
「言葉の通りです。姉妹であるあなたの力を私に、軍に貸してください。再び人間たちを導いていきましょう」
かつてイオとイネーヴァは人間たちを指導していた。その力、影響力は現代でもいかんなく発揮される。
いや、寧ろその役目につくのが自然だとも言える。
「確かに、私の力を世のために使うことが、私の使命であると私自身も思います」
「では?」
「はい、答えはノーです」
答えを聞いたイネーヴァはきょとんとした表情をする。
「聞こえませんでしたか? 答えはノーです」
「何故ですか?」
「単純に、あなたの元に入ることが危険だと思ったのですよ。忘れないでください、私にとって姉妹が危険な対象であることに変わりはありません」
姉妹ならば、イオを通じて神器の遠隔操作が出来る。そしてその遠隔操作は、何もカタストロフィーだけではないのだ。
「では、あなたはこれからどうするのですか?」
「当面は誠の家にいて、それからゆっくり考えます」
「なるほど……」
「いや、勝手に納得すんなよ。てかお前も、勝手に俺んちに来ようとするなよ」
真面目な話をしていると思ったのだが、つい口を挟んでしまう。
「いえ、私への協力が得られないなら、そちらにいてくれた方が助かります。よろしくお願いできますか」
「おいふざけんなよ」
「何でしたら飛鳥さんもお付けします」
「なおさらいらんわ」
「ちょっと誠! それどういう意味!?」
「おまっ! 落ち着け!」
襟に掴み掛かろうとする飛鳥を、何とかいなす。
「いいね。美少女と一緒の生活、羨ましいよ」
「全然よくねえよ! というかお前んちの方が広いんだから、お前が引き取れ」
「私が拒否します」
「即答かよ! あぁめんどくせ、勝手にしやがれ! その代わり、軍にこいつの食費請求するからな」
「せ、誠さん。やることがせこすぎます」
せこくても関係ない。イオのせいで八神家のエンゲル係数はバカ高いのだ。
「いいでしょう。その他もろもろ、軍が負担します。それならいいですね」
凄くいいようにまとめられた感がある。
「交渉がまとまったようですね」
だが、なんだかんだこんな感じでまとまるんじゃないかと、心のどこかでは思っていた。
「では、これからもよろしくお願いします。誠」
だからこそ誠は、めんどくさそうに頭を掻いた後、仕方なさ気に差し出された手を握るのだった。
この時ばかりは神や人間などの違いはなく、誰もが笑顔でその光景を見つめていた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
昔に書いた物を少し修正しつつ、書いていきました。
神器という武器、そして謎の少女。という発想から膨らませていったお話でした。
よろしければ簡単でも良いので御意見、御感想、辛口コメントなどの評価をいただけたら嬉しく思います。
最後になりますが、誠たちの物語を最後まで読んでいただいてありがとうございました!




