第39話
「そこで僕は言ってやった訳だ! あんたたちの言いなりになるのはもう嫌だ! 僕は僕の道を進むって! そしたらやつらはそんな勝手は許さん! って言い始めて、その場でいきなり戦いだよ。慌てて逃げた僕は、ラキアや娘達を連れて急いで人界転送装置に向かったよ。もうここにいる意味は無い、僕は人間を救わなくちゃいけないんだ! でも、でもだよ。その途中でラキアが、僕を庇って死んでしまったんだ。僕のせいで、僕がこんな考えを起こしたばっかりに彼女が。それでどうすれば良いか分からなくなった僕を救ってくれたのは、娘達だった。あれほど自分を情け無いと思った事はないよ。母親が目の前で死んでしまったにも拘らず、彼女たちは直ぐに前を向いていたんだ。話を聞くとラキアが彼女たちに、もし僕が後ろを向いたらその頬を殴りなさいと言ったみたいなんだ。いや、まぁそれのおかげで立ち直れたんだけど、娘に父親を殴れって言う母親もどうかと思うし、それで本当に父親を殴る娘もどうかと思うんだけど。でもそれで、やっぱりこの子達はラキアの娘なんだなって実感した訳なんだけど…………あれ、この話つまらない?」
と、今更な感じで問いかけてきた目の前の茶髪天然パーマの男に、
「あんたが親馬鹿だって事はよく分かった。だが敢えて言わせて貰うと、かなりウザイ」
と、誠はいまだかつて無いほどの憤りをもって、その男を睨み付けた。
「いや、僕も実際に娘を持つまで、親バカなんかになるわけ無いと思ったんだけど、これがまた違うんだよね! 君も娘持ってみなよ!」
「知ってるか? 娘ってのは男一人だけじゃどう足掻いてもできねえんだよ」
「うん知ってるよ。だって君たちは、僕たち神となんら違いも無いように‘僕’が作ったんだから」
そう言って人間の生みの親で、姉妹の父親であるオルフェウス・トライバルは少年のような笑みを誠に向けた。




