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神の器  作者: ハルサメ
35/53

第34話

「聞いてたのかよ」


「えぇうっすらとですが、大体は把握できました。……それにしても、また私は裸体を視姦されていたようですね。遺憾です、イネーヴァ」


 再会の挨拶もそこそこに、上から見下ろす形でイオはイネーヴァに目をやる。言葉通り不快感が篭っていた。


 だがそれでも体を隠そうとしないのは何なのか、気にはなっても聞くに聞けなかった。


 縁から服を受け取り、イオは袖を通す。

その間、イネーヴァはイオを注視していた。


 何か言葉を発するわけでも、行動を起こす訳でもなく、ただ黙ってイオを見ていた。


「イネーヴァ。私の意志は、先ほどそこの精神的糞ガキが説明した通りです」


 誠の不服の目線をイオはさらりと受け流す。


「私はあなたの手を、他の姉妹の手を借りるつもりはありません。例えそのつもりがなくとも、あなたが私を利用する可能性がある限り、私はその危険を冒すつもりはありません」


 強く、はっきりと言い切った。


「ですがあなたはそれでどうするのです? ここで私を遠ざけたとしてもオルテガが居ます。あの子の事です、もうしばらくすれば再び姿を現しますよ?」


「その時も断固として拒否します。最悪、自害も視野に入れているつもりです」


 イオの言葉に、イネーヴァだけでなく誠も思わず驚いてしまった。


 姉妹の手に落ちるなら死を選ぶ。それほどまでイオが危惧する危険とは何か。


 気にはなった。だが、その程度だ。


 イオはイネーヴァの手にも、オルテガの手にも落ちない、誠が思いつかなかった第三の手を出してきた。その覚悟が誠の気持ちにも踏ん切りをつけた。


「貴方は良いのですか?」


 イオの説得を困難と判断したのか、イネーヴァは誠を標的に変えた。


「あん? まぁ別にいいんじゃねえか? てか、そもそもこいつが中途半端に目覚めたのって、俺がラキアに触ったからなんだろ?」


 先ほど誠が神力を注いだ結果、ラキアは停止した。つまり前回イオが目覚めたのは、近くに居た誠の神力がラキアに影響したからであり、誠は今の状況を作った張本人なのだ。


「流石にンなことしといて丸投げ出来るほど、性根は腐ってねえよ」


「え、でも一昨日イオさんを人質にして、軍に身代金をよう―きゅッ!」


 縁の頭に拳を振り落とす。舌を噛んだようでプルプル震えている。


「……どうやら路頭に迷った方がマシな生活が出来そうですね」


「おい待ちやがれ。それならそれでいいが、そのゴミを見るような目は止めろ」


 顔を背けながら呟かれると精神的に辛いものがある。


「はぁ……」


 そんな和やか(?)な空気の中、不景気そうなため息をイネーヴァが吐いた。


「えぇ分かっていました。分かっていましたとも。あのイオが私の言うことを素直に聞く訳が無いことなど、始めから分かっていました」


「何ですかそれは? 聞き分けが無いという意味ですか? 憤るべきでしょうか?」


「お好きに取りなさい」


 威嚇するイオに、イネーヴァはまた息をつく。あのイネーヴァ(=一重)が疲労している、という驚きが誠に襲う。


「いいでしょう。イオが外に出ることを許可します。これ以上言えば貴方はこの場で自害しようするでしょうし、それは私も望むことではありません」


 さすがは姉といったとこか。先ほどのイオの言葉がただの脅しではなく、本当に実行される可能性があることをしっかりと理解している。


「ですがこちらから条件を二つ出させてください。それ以外はこちらから何かする事は一切ありません」


「聞きましょう」


「一つは睡眠をラキアの中で取る事。外に出す事とは矛盾しますが、少しでもあなたの寿命を延ばしてください。ラキアの方は後ほど転移させておきます」


 先ほどの会話から推測するに、イネーヴァにとってイオの死が避けなければならないことなのは明白だ。だからこそ出来る限りの延命を望んでいる。


 姉として、そしてまた別の利用価値としてイオを大事にしている。


「いいでしょう。それで、もう一つは?」


 イオも簡単に死ぬつもりはないだろう。だからこそ、その申し出を断る理由もなく、どちらにしろ要求しようとしていた事柄だった。


 だが二つ目はイオだけでなく、誠すら予想していなかった内容のものだった。


「そしてもう一つは、護衛として飛鳥さんをつけさせてください」

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