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神の器  作者: ハルサメ
34/53

第33話

 するとイネーヴァは何かまた神妙な表情に変わる。


「十二神将を投入するほどとは……あの子はそこまでして……」


「何か知ってんのか?」


「いえ、なんでもありません」


 とてもそうは聞こえなかったが誠も追求する事は無かった。


 そこまでして、という意味深な言葉を脳裏に焼き付けるに留めた。


「んでどうすんだ? イオはこのまま、こん中に閉じ込めるって感じなのか?」


「そうすれば命の保障はされます。現在可能な唯一の延命方法です」


「治る見込みはあるのか?」


「それは……」


 問いにイネーヴァは言いにくそうな表情をした。いつものような余裕たっぷりのものではない。


切羽詰った表情、妹の命がかかっているのだから当然か。


「神力欠乏症を治す方法は一つ、外部から稼動するのに十分な神力を供給することだけです。そのためには十分な量、神一柱分を人間に換算させると、十万を越す人数分もの神力が必要になります」


「十万って、並大抵の量じゃねえぞ」


 現実的ではない。それが分かるには、十分なデータだ。


「外に出たら直ぐに死んじまうのか?」


 イネーヴァに向けていた目線を、イオが眠るラキアに移す。


「いえ、直ぐにではありません。神力欠乏症は神力の回復速度と最大値の低下であり、今回はギリギリのところで助けることができました。しばらくラキアの中にいれば、完全ではないにしてもまた動くことができます。ですが」


「根本を解決しなけりゃ、定期的にこいつの中に入る必要があるってことか」


 イネーヴァの話を聞き、誠は何故か神妙に頷く。


「……一体何を考えているのですか?」


 その誠の反応にイネーヴァが怪訝な顔を返した。


「言っておきますが、もうこの子を外に出すつもりはありません。無駄に神力を消耗する行為などさせるわけが」


「そいつはお前の理屈であって、こいつの意思じゃねえだろ?」


 イネーヴァの言葉を無理矢理遮り、誠は先ほどからハラハラと事態を見守っている縁の頭に手を置く。


「悪いがイオは回収させてもらうぞ。縁、外に車廻しといてくれ」


「あなた、自分が何を言っているのか分かっているのですか!?」


 イネーヴァの怒声に、室内にいた誠を除く全員が体を震わせる。


「あんたもそんな感情的に怒鳴ったりすんだな。いつもの澄ました顔が台無しだぜ?」


「ふざけないでください! 今のイオを外に連れ出すなど、許す訳が無いでしょう!」


 誠の行動は、自分で呼吸ができない患者から人工呼吸器を外すようなものだ。


 イネーヴァの言い分は至極全うなものであることを、誠も分かっている。


「何回も言わせんなよ。それはテメーの理屈であって、こいつが選んだ訳じゃねえだろ。悪ぃが、本人の関与してねえとこで何か決めるのは、癪に障るんだよ」

「それだってあなたの勝手な理屈でしょうに!」


 「あぁそうだな。だが俺は昨日こいつから、他の姉妹の厄介になるのは御免だ、そいつらに会う訳には行かないって事を聞かされてんだよ。つまり、あんたらに会う事でこいつにとっては良くない、んであんたらにとっては良い何かが起きるんだろ?」


 あれはイオの唯一譲る事が出来ない本音だ。だからこそ、誠もそこは汲み取りたい。


その言葉にイネーヴァの表情がより険しいものに変わった。


「だから私たちの話を聞くことはないと? そのイオの言葉だけで、私たち軍を敵に回す気ですか?」


「気じゃねえ、もう回してんだ。こっちはもう腹括ってんだよ」


 強気の口調で言い、誠はラキアに近づく。


 その誠の行動の意図に気付き、イネーヴァが声を上げた。


「まさか!待ちなさいッ!」


「待たねえよ!」


 そしてイネーヴァの制止を振り切り、誠はラキアに神力を注ぐ。活動を止める毒を注ぐ。


 直ぐにラキアから神力の波動が消え去り、そして再び前半分が割れ、開いたところから一子纏わぬ姿でイオが現れる。


「……ずいぶんと騒々しいやり取りですね。酷く不快です」


 ゆっくりと目を開きながら、イオは刺々しい口調で言う。

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