第20話
「神……神……もしかして古代文明に出てきた神のことかな?」
社も同じことを思ったようだ。
「どういうことですか?」
怪訝な顔をするイオに、誠は自分たちの知る古代文明―神器により栄え、そして神と戦い滅んでいった歴史を説明する。
「なるほど、人神戦争については語り継がれているのですね」
「じゃあ人間が神と戦ったってのは?」
「事実です。そしてその話に出てくる人間を先導していた八人の女神は、おそらく私たち姉妹のことでしょう」
「そういえばやつらも言っていたな。お前の姉ってやつの事」
「襲撃してきた彼らの言葉ですね。想像の通りです。私はエデンプログラムと言う姉妹の中で四番目の存在、ガイア4です」
「それじゃあイオさん以外にも……」
「えぇ、全部で八つの個体があります。うち一つは現存していませんが、私を含めた七体はおそらく今も稼動しているはずです」
かつて人間を指導し、神と戦った女神たち。それほどまでに巨大な影響力を持ったものの一人がイオであり、そしてコンステラシオンにもいる。
「ん、ちょっと待て」
そこで誠はある考えに行き着いた。
姉妹同様に、今の世界には影響力を持った組織が、六つ存在している。
「五大神託団と、軍。このそれぞれのバックにはその姉妹がいるんじゃないか?」
コンステラシオンには姉妹がいることが確定している。
それは、コンステラシオンと肩を並べる他の五つの組織にも、姉妹を存在していることになるのではないか。
イオを除いた姉妹の数は六。数的には合致する。
「そしてその女神の最後の一体が、今僕らの前にいるってことか?」
「こいつの話を全面的に信じるならな」
イオから語られた内容は未だ信じがたいものだが、状況的にその事実を証明する、いや否定することは誠たちには出来ない。
否定ができなければ、信じざるを得ない。
この事実をどう受け止めるか、知りえてしまった事とどう向き合うか。
そのことで皆が表情を暗くした。
「ふぁ……はぁ……」
そんな、テーブルを囲む空気が重くなってきた中、当のイオが口元を押さえて大きな欠伸をする。
体もだんだんと左右に揺れ始め、意識の不安定が目に見えていた。
「彼女も疲れているようだし、今日はこれくらいにしよう」
その姿を見かねてか、社が提案する。その意見に誰も異論はなかった。
―が。
「いえいえ私は寝ていませんよ。何を言ってるんですかこのクソ眼鏡は?」
その提案をあろうことか本人が突っぱねた。
おまけに誠と初めて会った時と同じような罵倒の言葉と共に。
完全に船を漕いでるにも関わらずだ。
思わず、誰もが目を丸くする。
社にいたっては苦笑いで頬が僅かにピクピクしている。
誠としては、そういやこういう性格だったな。と改めて確認させられた。




