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第90話 バキューン

 王城の図書館でワイバーンの使い道を調べた後、そのまま花火について調べはじめたのだけど……。


「こんなのもうほとんど大砲完成してるよね……」


 鉄製の筒から風魔法で、火薬を覆うように土魔法で丸く固めた玉を打ち上げ、最後に火魔法で遠隔爆発させるのが花火だ。


 うん。大砲そのものと言ってもいい。上に打ち上げるか横に撃つかの違いだけだ。


 というか今回起こる火事って……花火玉に火がつけられず、落ちたところに火があったんじゃね?


 夜だし、明り取り用とか、晩ごはんの準備で火を使っていてもおかしくない、よな……。


 これ、不発になった花火玉を落ちる前に回収すれば防げるんじゃないかな?


 夜目スキルはあるから、花火より上で待機していれば、見つけられるような気がする……。


 そうすると、飛行スキルを持ってるリズとファラ、カイラさんで、花火見物すればいいのか?


 残されたキャルとアンジーが怒るか……。まだ時間があるし、相談して考えよう。


 今は花火の仕組みをもう少し調べておいた方が良いな。




 ……ほうほう花火玉は作り置きもできるし、火魔法使いは発火させるための遠隔発動ができれば魔力そのものは多くなくてもいいのか。


 この花火で一番しんどい風魔法使いも、連発可能なほど魔力消費量は多くない。


 これ、砲弾を花火用じゃなくて着弾して爆発するようにしたら大砲の完成だよね……。


 用意してもらっていた紙に完成形の図を書く。


 砲弾の形状とか大事だよな。花火はまん丸だけど、円錐形にしてっと。


 そうだ、筒にライフリング……確か等間隔に溝を刻めばまっすぐ飛ぶんだよね?


 OO7(ダブルオーセブン)のDVDパッケージを思い出しながらこう……螺旋(らせん)、状に……くっ、難しいな!


 手がぷるぷるする……けど、なんとか見れる絵にはなった。満足だ。


 次は……爆発って魔方陣ならできるかな? 衝撃でファイア(発火)の生活魔法が発動できればだけど。


 魔石を潰したら魔力が出るとかならできそうな気がする。魔石って魔力の凝縮されたやつだしね。


 ……うん。メモっておこう。


 普通にピストルならすぐにでもできそうかも。弾丸も本体も小さいし……いや、弾丸に魔方陣を書くのが面倒か。


 ん? あれ? ピストルは爆発しなくても良いよね? 鉛の弾丸を飛ばすだけだし……なら火薬入りの弾丸も発火の魔方陣も必要ない。


 風魔法の魔方陣だけで済んじゃうよ! 俺、賢くない? 凄く省エネな兵器完成だよ!


 バキューンだよ! イラスト付きで書いちゃったよ! 


 教科書にパラパラ漫画書いたな……高飛び込みのパラパラ漫画書いたの思い出した。


 ピストルを撃ってる絵がパラパラ漫画じゃないのに棒人間だから……。


 羽ペン書きにくいし、インクがポタポタ落ちるし、落ちるからちょっとしかつけないようにするとすぐかすれるし……。


 いや、このしたたったインクを元にゴブリンが撃たれた絵に改造を…………………………。


 ふう。うん。力作だ。一応矢印でゴブリンとしておこう。これなら誰にでもわかるはずだ。


 と、そこまで書いて気がついてしまった。


 ……これは駄目だ。こんなの作っちゃったら戦争で、魔法とか弓が届かない距離から一方的に蹂躙できちゃうかも……。


 これはボツ。こんなの異世界に持ち込んだら駄目だ。ここは俺の心の中だけにしまって……置けないよなぁ。


 もしかすると、こんなこと俺よりもっと頭のいい人もいるんだから、もう作られてるか、まだでも時間の問題だよな……。


 そんなことを考えてると、真横から声が聞こえた。


「ほう。ドライ、花火師にでもなる……ふむ。ほほう……これがゴブリンと……ふむ」


「お、王様! こ、これはですね、なんと言うか……た、ただの思い付きで」


「……ドライ。思い付きと言うからにはこれはお前が考えたということか」


 うっ、どうする……でも知らせるなら一番良い人ではある。


 カサブランカに仇なそうとするものたちが考えつかない、いや、作り出す前にこちらも対抗策として知っていた方が良いけど……。


「えっと……」


「ふむ。この大砲と書かれているものはすでにカサブランカでも秘密裏に試験的にだが作りはじめているものだ」


「え? そ、そうなのですか?」


 やはり俺が考えつくんだから当然のことか。


「だが……そうか、魔方陣を組み込むのか……これは試してみても良いかもしれんな」


 まじまじと俺の書いた落書きを真剣に見つめる王様。


「ところでこのゴブリンを倒しているピストルとはなんだ? 風魔法の魔方陣だけで飛ばすのはよいが、こんなものでゴブリンが倒せるというのか?」


「……おそらくですけど、倒せるんじゃないかなと?」


 そうとしか言えない。どれくらいの飛距離で威力なのかはやってみないとわからない。


「作らせてみるか。ドライ、これは借りていってもよいか?」


 いや、王様……借りていいか聞く前に丸めて持っていく準備万端ですよそれ。


「……まあいいですけど」


「そうか。また何か聞くこともあるかもしれんが、ではな」


 ニヤリと笑い、そういって図書館から姿を消した。


 アレは絶対作ってゴブリンを倒そうって思ってるよな。遊び半分で。


 それが上手く行ったとしたら……カサブランカ王国は侵略にしばらく怯えなくて良くなるかもしれない。


 勇者の出現で魔王の驚異があるうちは大丈夫だとは思うけど、教国のアザゼル派は今でも心配だもんな。


 いわば身の中の敵……なんだったかな、獅子身中の虫だったか? それと同じだ。


 教会はほぼすべての街や村にある。アザゼル派がどれだけあるのかカサブランカとグリフィンの分しか数えてないからわからないけど……。


 そのアザゼル派が一斉に反旗をひるがえせば教国はもちろん、大陸中の国で多大な被害が出るのは目に見えている。


 魔王を勇者になんとか倒してもらうか、俺たちで倒し、封印できちゃうなら……。次はそれだよな。


 はぁ……原作のイベントもまだまだあるし、気は抜けないよ……。


 よし、もう少し花火のことを調べてからリズたちに合流しよう。

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