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第65話 勇者に○○され、□□れた聖女

「キャロライン。そうだな、そこへ座ってくれ」


 王様が指差したソファーは王様の正面だ。


「はい」


 足を引きずりながら歩くキャロラインがソファーへ静かに座ると、王様がまた話し始めた。


「聖女と呼ばれていたキャロラインだ」


 ……ん? …………呼ばれていた?


「はい。この怪我のせいで魔王を討伐しに行く勇者の従者には相応しくないと教会からも除名されました」


 は? 確かに今の歩き方を見ていたら過酷な旅になるだろう魔王討伐の旅についていくのは厳しそうだけど……。


「数ヵ月前のことだ。この王都の奴隷商にいるところを保護したのだ」


「そんな! 聖女ですよね!? 熱病の時に浄化もしてくれたのですよね!?」


「ドライ。その通りだ。たまたまお抱えの奴隷商だったため、聖魔法が使える者がいますと連絡を受け保護できたが、別の奴隷商に連れていかれていたならここにはいなかっただろうな」


 なに考えてるんだよ……聖女と呼ばれるには理由がある。それは聖魔法だ。


 聖魔法を使える女性が聖女、男性が聖者と呼ばれていて、習熟していけば回復魔法では治せない怪我が治せる魔法が使えるようになる。


 それにキャロラインは、現在聖女と呼ばれているものたちと同じく、まだ浄化しか使えないけど、魔力が桁違いなのだ。


 勇者と魔王討伐の過酷な旅の中で成長して行くんだけど、知らないとはいえ、除名で奴隷商に売り払うとか考えられない。


 魔王と対峙する頃には、俺とリズでも連発は難しい欠損を治す『再生』はもちろん、連続で治せるまでに成長する。


 自分たちでできるようになったとき、調子に乗って怪我をして働けなくなり、スラムに住んでいた人たちを治す作戦を決行。


 限界まで頑張って、日に十人の手足が欠損したものを治していたんだけど、聖女のことを思い出し、『滅茶苦茶スゴいな』と心底思ったほどだ。


 そして全魔力を使えば死んで間もない者なら生き返られることができる、『復活』が使えるようになる。


 これは覚えたけど、現状俺たちの魔力量じゃ発動しないってことがわかってる。なのでレベル上げを頑張っているんだけどね。


 だから復活は現在使える者がおらず、数世代前の聖女だけが使えたと言う大魔法だ。


 それを今の段階でも覚えれば使えるくらい魔力を持ってるんだぞ?


 それを奴隷商に売ってしまうとか……なに考えてんだよ教会は……。


「王様には保護してくださり大変感謝してます。それに奴隷ではなくアンジェラ様の従者の一人として、学園に通うようにもしていただきました」


「ドライ。なぜ今日アンジェラの婚約者と発表して、ここでキャロラインをお前に会わせたかに話は行くんだが……」


 繋がってきたぞ……。元々学園に入ったら、聖魔法使いの従者がいないアンジェラの聖騎士件従者になる予定のリズと俺がいる。


 だけど保護した聖女、今は元か。キャロラインがいるから俺とリズはお払い箱ってことか。


「ドライ、エリザベス嬢。すまない、従者の件()保留にして欲しい。もちろん約束だった叙爵は予定どおりだ」


「従者を保留、ですか?」


「ああ。婚約者となるドライ、そのドライの正妻となるエリザベス嬢も従者はおかしいだろう?」


 そう、言われれば……確かにそうかもしれないな。


「それにな、キャロラインに怪我と火傷を負わせ、奴隷商に売り払ったのは勇者なのだ」


 …………は?


「勇者はキャロラインが売られた数ヵ月前に覚醒が進み、ほぼ全属性の魔法が使えるようになってな――」


 元々の光魔法と限界突破に続き、闇と聖魔法以外の属性魔法が使えるようになったらしい。


 原作通りだな。魔王を倒すためには基本の四属性、火、風、土、水と光属性を合わせた複合魔法が必要となる。


 まあ……俺はもう使えるんだけど、制御が難しくて、何度も暴発させて火傷したよな……滅茶苦茶威力はあるんだけど。


 農地の開墾で、邪魔になっていた大型バスレベルの大岩を吹き飛ばせたのには、見ていた全員が腰を抜かすほど驚いたくらいだ。


「勇者はその属性魔法を同じ孤児院の子供たちを的に練習を始めたそうだ。勇者が言うには――」


『止まった的は面白くないし、お前ら的になって逃げ回れ、それにモブキャラだからいなくてもいいっしょ』


「――と、また訳のわからないことを言いながら孤児たちを世話していたものたちも含め、孤児院の、ほぼ全員が怪我を負わされた」


「何てことを! カサブランカ王よ、なぜだ! なぜそのようなものが勇者なのだ!」


 と、今まで静観を貫いていたグリフィン王が真っ先に叫び――


「王よ、凶行が過ぎます! なぜのうのうと学園に入学させているのですか! すぐに学園を除名させてください!」


 イルミンスール伯爵が怒りの形相で叫び――


「おい、今すぐその勇者とやらを殺す許可を寄越せ! お前ならすぐ出せるだろう!」


 父さんが立ち上がり、ソファーの横に立て掛けてあったロングソードを手に取り怒りに震えている。


「酷いですわ! わたくしもお父様の意見に賛成ですわ。それにお義父様の意見にもですわ!」


「無茶苦茶よ! 王様、わたくしもイルミンスール伯爵の意見に賛成です。お義父様意見には、当然わたくしもご一緒するわ!」


「なに考えてるんだよ……」


「話は最後まで聞け。クリークよ、まずは座れ。まだ話は終わってない」


 無言で王を睨みながらドスンと腰を下ろす父さん。


「そこの院長が、効果は薄いが回復魔法を使えたのでな、死者はでなかったのが幸いだ、が、最後にとんでもない魔法を使ったのだ」


 そうか、そこまでのことをやらかして、普通に学園に通えるとかおかしいと思っていてけど、理由がわかった。


 とんでもない魔法、それは――

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