表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/139

第45話 呪いの触媒

「それはそれは。ありがたいことです」


 ニコニコしながら近づいてくる白ローブの男は置いといて、まわりの確認を始める。


 部屋の中は、目の前に神様か天使だろうか、大きな石像が壁の高いところで羽を広げ見下ろすように置かれてる。


 ……あとは長椅子と机が置かれているだけか。


 あ、ここで文字と計算を教えてるみたいだな。小さな黒板とチョークみたいなものが置かれてるし。


 孤児院の入口から至るところを鑑定したけど今のところ呪いの『の』の字も見つかっていない。


 だけど……あれだよなぁ、一番怪しそうなのって。鑑定は……当たりだ。


 そりゃそうか、あんな石像があるんだし、それじゃなければ探すの苦労するところだったから、まあ、よしとしよう。


 当たりだけど……あんなところにあるのになぜ子供たちに呪いがかかってないんだろ?


「私はこの孤児院の院長をしております、バロールと申します」


 いつの間にか二メートル弱のところまで近づいてきていた。


「俺はドライ、こっちはリズです。これ、寄付しようと思いまして、どうぞ」


 小袋に入れた銅貨を渡すために二歩ほど近づき、バロールと名乗った人を鑑定。


 うわ、色々と魔道具持ってるな。呪い封じのネックレスか……これでこの人が呪いにかからないのはわかったけど、子供たちだ、よ……ね?


 そうか! 手が石像まで届かないんだ! 俺やリズはギリギリ届くくらいか。それに大人なら余裕で触れる高さに石像がある。


 おそらくあの使用人さんは炊き出しもしたけど、石像の掃除か何かしたんだろうな。


「……こんなにいただけるとは、ありがたいことです。これで子供たちに何か美味しいものでも作らせてもらいますね」


 小袋を受け取り、重さを確認してる。一瞬残念そうな顔になった気がする。少なかったのかな?


「はい。あ、そうだ、子供たちに剣と魔法を少し教えることになったんですが、いいですか?」


「もちろんです。将来冒険者になるものも多くいますので、お時間があればよろしくお願いします」


「わかりました。そうだ、あの石像が神様ですよね?」


「ええ。その通りです。アザゼル様の石像はどの教会にもございまして、このように石像に触れて日々感謝の祈りを捧げているのです」


 アザゼルって聞いたことあるんだよな……悪魔か邪神か何かじゃなかったっけ?


 バロールはネックレスを握りしめ、壁の石像に手を伸ばす。なるほどな。ああしておけば呪いにかからないわけか。


 この感じだと使用人さんも祈ったんだろうな。それから炊き出しの手伝いをした人を探さないと駄目だなこれ。


 というか……この石像を浄化したらどうなるんだろうな……。


「……へえ。俺もやっていいですか?」


 やってみよう。もし熱病にかかっても、浄化ポーションを飲めばいいよな。


「どうぞ、そちらのお嬢さんもご一緒にいかがですか?」


 コクリとうなずくリズ。


『リズ、石像に触りながら浄化してみようよ』


『ということは石像が呪いの元ですのね。わかりましたわ』


 二人で石像の下に足を進め、自分を鑑定しながら石像になんとか触れる。


 おお、一発で呪われたよ……これはまずいよな。こんなに簡単に呪われるなら、相当な人が呪われてるかもしれない。


 それこそ炊き出しの人たちだけではきかないだろうな。


『リズ、俺たち呪われちゃったよ』


『もうですの? 子供たちに教えたあと、すぐにポーションを作らないと駄目ですわね』


『うん。じゃあ浄化してみようか』


『はいですわ』


 タイミングをあわせて石像を浄化。浄化は錬金術みたいに魔力で光ったりしないからバレることはない。


 石像を鑑定で見ていると、呪いの文字が少しずつ薄くなってきた。


『もう少しだリズ、このまま全力の浄化だ』


『任せてくださいまし! いきますわよ!』


『『浄化!』』


 十数秒浄化を続けたところ、呪いの文字が完全に消えた。それに――


 聖魔法のレベルが上がり、新たに祝福を覚えたようだ。リズも上がってるな。やっぱりたくさん使えばレベルが上がるみたいだ。


 もしかすると、俺たちの呪いも消せるかも……。まずはリズから浄化――よし!


『リズ、成功だよ、それに浄化で呪いが消せるようになってる』


『そうなのですか! 聖魔法のレベルが上がりましたのね!』


『うん。これなら浄化ポーションも必要だけど、直接治すこともできるな』


『やりましたわね、これがもう少し早ければお母様の呪いも自分で治せましたのに』


『浄化ポーションだってリズと俺が回復ポーションから作ったんだから、一緒だよ』


『ですわね。では、浄化も終わりましたし、子供たちに剣と魔法を教えましょう』


『うん。夕方からは浄化ポーションを作るからあまり遅くまでは教えられないけどね』


『……それがありましたわね』


 苦笑いするリズと同時に石像から手を離し向き直るとバロールがニコニコして俺たちを見ていた。


「ありがとうございました。今度教会でも祈ってみようと思います」


「それはそれはとても良いことです」


 ニコニコと出ていく俺たちを見送るバロール。どうせ教会に行くときは浄化ポーションを買ってくれるとか思ってるんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ