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第42話 熱病は呪い?

 エマさんが瓶を口につけ、ふう、と息を吐いた時に思い出した。


 そうだ、鑑定しなきゃ治ったかわからないじゃん。


 瓶が傾けられる前になんとか間に合い鑑定をしたんだが……。


 ――これか? エマさんの状態異常は……【呪い(熱病)】? 呪い? 呪いって……病気じゃなくて?


『あー、この呪い知ってるわ、ユートも頭を悩ませていたヤツね』


『勇者が? どう言うこと?』


『呪いって、ドライ、イス様! お母様は病気ではなかったのですか!』


 そんなやり取りをしている間に浄化ポーションを飲みきったエマさん。


 その状態異常を見ると、【呪い(熱病)】は残ったままだ。だけど……薄くなっていた。


『呪いの文字が少し薄くなっている! 効いてるよリズ!』


『薄く? でも消えてないの? ねえ、この後どうすればいいですの! お母様は大丈夫ですの!』


『リズ、落ち着きなさい、あと何本か飲めば呪いは浄化されるから。ほらドライ、もう一本出しなさい。それでも消えなかったらまた作ればいいのよ』


『うん! リズ、もう一本だ』


 見本に残しておこうと思っていた浄化ポーションを取り出しリズに渡す。


『はいですわ!』


「飲んでくださいませお母様!」


 受け取ったリズはキュポンと栓を抜き、エマさんの口につっこんだ。おい……気持ちはわかるけどな。


「むぐっ?」


 目をまん丸にして驚きながらも、リズがつっこんだ浄化ポーションが飲まれていく。


 コクリコクリと喉が動き、最後は目をぎゅっと閉じてゴクンとポーションを飲みきった。


『ドライ! 鑑定お願いしますの!』


『わかった! 鑑定!』


 ――薄くなっていた呪いの状態異常がさらに薄くなり、最後はパッと消えた。


「よし! 成功だ! 消えたよリズ! 呪いが消えた!」


「ほ、本当ですの……本当にお母様は治ったのですね……お母様ぁあー!」


 エマさんのその暴力的なものに涙を流しながら飛び込むリズ。


「あらあらうふふ。リズったら。ところで呪いと……は? あら? 身体が熱っぽくありませんね?」


 リズの背中をポンポンと叩きながら首を傾げ聞いてくる。リズの顔は完全に埋もれているけど呼吸できてるのだろうか……。


「はい。エマさんの病気と思われていたものは呪いだったようです……」


「呪い。わたくしは病気ではなかったのですか? 鑑定では熱病と言われてましたのに」


「鑑定されて、それで熱病と言われたのですか?」


『鑑定されたのにそんなことってあるのか? それに浄化ポーション二本で治る程度の呪いだぞ、イルミンスール伯爵家が買えない値段でもないのに』


『それなら簡単じゃない。その鑑定した人が嘘をついていて、ポーションは一本では薄れるだけだったんでしょ? だったら一本ずつしか飲まないなら、すぐに呪いは元に戻るからね』


『そうか、だけどそんな嘘をついて誰が得するんだ? バレたら不敬罪だよな? でもポーションは確かにそうかもしれないな、熱が下がるんなら追加で飲むなんてまずないし』


「はい。教会の方に見ていただきましたわ」


 ここでも教会かよ……これって、どう考えてもそれだよな。一応聞いてみないとわからないか。


「……その教会から病気に効く浄化ポーションを買って飲んでますよね?」


「はい。十日に一本飲んでおりますわ。残りは隣国特産の回復薬を飲んでおりますね」


「隣国特産の回復も飲んでいるのですか?」


「ええ。良く効くお薬ですが、すぐに傷みますから。こちらの街に療養に来ましたのも、それが目的の一つでもありましたから」


 隣国の回復薬の効果は低級回復ポーションと同じ薬草を使っているけど、中級ほどの回復効果がある回復薬らしい。


『あの時も同じだったわ。ただの熱病と思われていたし、一本飲めばしばらく熱は下がっちゃうんだもん、二本目を飲む人はいなかったのよ』


 そりゃそうだ。高い浄化ポーションを飲めば熱は下がり治ったと勘違いするのは当然だよな。


 だけど数日すれば呪いは復活してまた熱が出る。熱が出たらまた浄化ポーションと繰り返されて儲かるってことか。


 これ……教会が呪いをかけたなら、完全に呪いを利用した金儲けだよな。


 たぶん間違いなく。ってことは、クリークの街に熱病の患者が多くなっているかもしれない。


 ポートマンさんのところに日に五十本の回復ポーションを作れと来ていた。


 エマさんと同じペースで飲んでるなら……十日に一本だろ? なら十日に五百本は作れるってことだ。


 ……余裕をみても四百人近い患者がいるかもしれない。


 ……っと、ここはひとまず俺は席を外した方がいいよな。アンさんも、エマさんが治ったと聞いてからソワソワしてるし。


「そうだ、その事でお話があるのですが、またあとにします。今はエマさんが治ったことを家族で喜んでください」


 そう言ってエマさんに会釈したあと、まだ扉の前にいるアンさんにもペコリと頭を下げ、扉を押し開けて外に出た。


 そしてモゾモゾするなと思ったら、いつの間にかズボンの中を伝ってイスがついてきていた。


『ふう、家族水入らずを邪魔するなんてできないものね~、ドライもよく気がついたじゃない』


『だろ? ずっと三人でやってきたんだ。それも領地から離れてね。その目的だった治療が終わったんだから一緒に喜んでもらいたいよな』


『うんうん。で、どうするの? 浄化ポーションを作るのは決まってるけど』


『うん。まずは忙しいだろうけど、兄さんたちに熱病がクリークの街、ううん、領地全体でどうなっているか調べてもらってからだね。その後は片っ端から浄化ポーションで、かな』


『そうね、それでいいと思うわ。なら私も薬草採取しておいてあげるわね、切り株食べる合間になるけど、あそこにもいっぱいあったしね』


『頼んでおくよ』


 原作ではリズが聖魔法で治したんだけど、これでもいいよな。それに市販されている浄化ポーションで治したから教会が不審に思うこともない。


 このあとの話でリズたちにイルミンスール伯爵家に五年は戻らないように説得しよう。ここで帰してしまったら会えるのは五年後になっちゃうし。


 それとせっかくもらった超越者なんてチートをフルに活用するのもリズと一緒に原作が始まるまでやっておきたい。


 それと平行して、教会の仕業と断定してもいい、熱病の大流行を防がないと駄目だよな。


 もし防げなくて大流行しても、ちょっとアイデアがあるから、それで浄化ポーションを大量生産して、教会の好きにさせないようにしなきゃな。


 カチャ――


 扉の前で考え事していたら扉が開いた。


「奥様がお話があると」


「はい」


 さて、クリークに残ってもらえるように説得開始だ。

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