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第39話 錬金術見学とリズの暴走未遂

「ぷはー。すまねえ、錬金術を見たいってのに、俺の飯を先にしちまって」


「いや、大丈夫ですよ、教会の人に邪魔されて朝御飯が残念なことになってしまったのですし」


 思い出すだけで、あの強烈な匂いが……。忘れよう。そうしないと食事が喉を通らなくなりそうだしな。


「そうですわ、ところで教会は何のポーションを作れと言ってきましたの?」


 そうだ、それも気になってたんだよな。


「あー、やつらが欲しがってたのはよ、低級回復ポーションだ。何でも浄化ポーションの元になるって話だ。だがよ、みんなが欲しいのは回復ポーションだろ? それを病気の時にしか使わねえ浄化ポーションにするってんだ」


「なるほどですわ。確かに回復ポーションの方が需要がありますわよね」


「だろ? 回復ポーションの低級ならスラムのやつらにだって買える値段だがよ、やつらそれをちょっと浄化するだけで作れるバカ高い浄化ポーションで金儲けしようって腹積もりなんだよ」


 そうだよな、低級の回復ポーションだと大銅貨一枚で、浄化ポーションになると最低でも金貨一枚、品薄だと数枚って時もあるって言ってたもんな。


「それだってのに日に五十本作れってんだぞ? そんなに出してちゃ回復ポーションが足りなくなるって言っても聞かねえから断わってたんだ」


「クリークの街には錬金術師はポートマンさんだけなの? 俺は知り合いに聞いて訪ねてきたから他の錬金術師を知らないんだけど」


「ああ、去年までは俺を含めて十人いたんだけどよ、錬金術ギルドのギルドマスターが代わってな、何でもここの領主の三男坊がクソだからこんな街にはいられないってんで逃げ出しちまったんだよ」


 俺のせい! どんだけ悪いやつになってんだよ俺! これは……早いうちになんとかその悪名を払拭しないと身動きできなくなりそうだ。


 それにリズからヤバそうなオーラが滲み出ている気がする。ほぼ間違いなく俺の悪い噂話のせいだ。


「税金も他の領地よりソイツのせいで高いってのもある。それにだ、スラムがこんなに広く、人も多くなったのもだ。俺の工房は元々はスラムじゃなかったんだぜ」


 駄目だ! ピキリって聞こえそうなくらい見事なスジが額に! お、落ち着けリズ! この人は敵じゃないからな! そこ! 机の下でファイアーボール出しちゃ駄目!


「……ぜ、税は近々下がるんで安心してくださいね、それにスラムが広がってるのか……領地経営が駄目だよね」


 リズの手首を掴んで引き寄せ、耳元に口を持っていき――


『リズ。落ち着こうね、ほら、ファイアーボールを消して手を繋ごうね』


 ――そう言うと、素直に消して、腕に絡み付き、手もしっかり繋いできた。


 ふう、テーブルの天板の裏はたぶん焦げてるだろうけど、大惨事にはならなかったので本当によかった。


「税が下がる? 領地経営がどうかは知らんがそうなのか? そりゃ助かる。って何でお前がそんなこと知ってんだ、って貴族様だったな、あははははは!」


「あは、はは……。そ、そろそろ錬金術を見せてもらってもいいかな?」


 引きつってるだろう笑顔を必死に張り付けて、話を元に戻すように誘導する。


「……ですわね、その話に出た回復ポーションを見たいですわ」


 まだ少し言葉が冷たいが、俺の提案にリズも乗ってくれた。


「おう、構わねえぞ。低級の回復ポーションは錬金術師の第一歩だからよ、俺もはじめに習ったのはそれだった。よし、地下の工房に行くぞ、ついてきな」


 はぁぁぁ……危なかったけど、なんとか錬金術が見れそうだ。




 ポートマンさんの先導で地下に下り、当然リズは腕に絡み付いたままだ。ちょっと階段が怖かったけど、なんとか無事に下りきって工房に入った。


 部屋はだいたい五メートル四方の石造りの部屋だ。天井も長い階段で下りてきただけあって相当高い、たぶん、五メートル、おそらく正六面体、立方体の部屋だ。


 大きな釜があり、壁際は天井まで棚になっていて瓶や箱が並べられ、その中に素材のような物が見えている。


 釜のところに案内されて、その横にある無造作に積まれた草を適当に握り取って俺たちに見せてくれる。


 猫じゃらしみたいな草なんだ。そういえば狩猟小屋の近くにも生えていたな。


「これが今の季節に採れる薬草だ。これで百束用意してあるんだが、だいたいどこでも生えてるから仕入れは簡単だし安い。子供でもちょっと森に入れば採取できるしな。それに水。この二つがあれば低級回復ポーションが百本作れる」


 そうか、季節によって採れる薬草が変わってくるんだ。薬効は……変わらないのかな?


「二つだけですのね」


「凄く簡単に思えるんだけど、水で煮るんですか? それとこの季節ってことは薬草は一種類じゃないんですね」


 ポートマンさんは、水が入ってる、めちゃくちゃデカイ中華鍋みたいな鍋へ薬草を放り込んだ。


「ああ、季節ごとに変わってくるぞ。薬効は変わらないし、地域によっては種類も変わってくるから覚えるのは面倒だけどな。それから作り方は煮たりはしないぞ、スキルを使うだけだ。見てろよ…………」


 あ、手がぼんやり光はじめた。


「こうやって魔力を手のひらに集めて……行くぞ、錬金――」


 その光った左手を鍋にかざし、『錬金』と掛け声をかけると浮いていた猫じゃらしが水に溶けはじめて薄い緑色の液体に変わっていく。


 一握り目の薬草がじわりじわりと形がなくなり、また薬草を追加。百束の薬草が完全に溶けきるまでだいたい三十分ほどかかった。


「ふう、上出来だ」


「お疲れ様です。これを瓶に移し替えれは完成ですね」


「素晴らしい腕前ですわ」


「おう、そんなに褒められるほどのことでもないんだがな。この鍋一杯がちょうど百本分で、瓶に詰めるのは手作業だけどな」


 こっそりステータスを確認すると、錬金術がスキルに生えていた。よし、これで浄化ポーションも作れるぞ。


 あ、リズにも錬金術が生えてるよ……うん、錬金術は才能があったんだね。魔法陣の時は拗ねていたから今度は安心だな。

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