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第22話 洗脳

 ツヴァイ兄さんから、『洗脳』されて()()と、聞かされた。


 いやいや、それもだけど、あの人たち死んじゃってますよね! 暗殺者って言ってたけど!


「ふむ。まずは移動しようではないか……モンスターハウスがよかろう」


「はい。今でしたら誰もおりませんので、お話するには最善と思います」


 この状態で何事もないように話が進められていくの! ……心の隅の方でそうだろうなとは思っていたけど、やっぱり人の命が軽い世界なんだ……。


 それにしても思ったより動揺していないな……。リズの方が動揺しているくらいだ。もしかして精神耐性がついた?


 腕にしがみつき震えるリズを見ると、死体を見たのに落ち着き過ぎている俺。


 ……そんなことより、ツヴァイ兄さんの案に乗って、今はここを離れた方がいい。


 ただでさえ混乱しそうなのに、第三者がこの場を見たらさらにややこしくなるのは目に見えている。


「うん、それはいいけど、あの、人たち、暗殺者って言ってたよね? あのまま放っておくの?」


 疑問が勝手に口から出てしまった。


「ここはダンジョンであるからな、放っておけばダンジョンに吸収されるように消えてなくなるのだ」


「消える?」


「うむ。魔物のようにすぐには消えんがな。気になると言うなら、ミラ、お前のストレ――」


「嫌でございます。が、ツヴァイ様のご命令であれば、し か た な く ……入れましょう」


「……で、あるか。ならば放っておくのがよかろう。ドライもそれで良いな?」


 額に汗をかき、俺に同意を求めてくるツヴァイ兄さん。


 その横で、スゴく笑顔だけど、逆らうなオーラが出まくってるミラさん。


 これは逆らえないよ!


「う、うん。消えるならそれで良い……です」


「では、モンスターハウスはあちらですので、ご案内いたしますね」


 そういうと綺麗な所作で振り返り、通路を戻っていくミラさんについていく。


 もちろん倒れている暗殺者からなるべく離れたところを通ってだ。通路、広くて良かったです……。


 数十メートル進んで角を曲がった先、その突き当たりがモンスターハウス。


 俺たちはそろって討伐済みで、扉が開きっぱなしのモンスターハウスに入り、扉を閉めた。


「ミラは近づくものがおれば報せるのだぞ」


「心得てます」





 ツヴァイ兄さんの話を聞くと、おかしかった期間は学園の卒業後、屋敷に帰ってきてから四年間。昨夜、メイドのミラさんのお陰で洗脳が解けるまでだと……。


 ツヴァイ兄さんの場合は食欲、性欲、加虐に振り切っていたそうだ。


 それからアイン兄さんもその可能性があるらしい。


 なんでもアイン兄さんは先日のツヴァイ兄さんを助けるような事はいっさい今まで無かったからだそうだ。


 以前までなら、ツヴァイ兄さんが怪我をしようが、病気になろうが気にも止めず、笑っていたと言う。


 本当にどうなってる……原作だと最終的にアイン兄さんとツヴァイ兄さんは本当に犯した罪によって処刑される。


 だけど、その罪はまだ犯していないから無罪なんだけど、最後に出てきてない父親がすべての犯人と言うことになるのか?


 隣のリズを見ると、洗脳という言葉に顔をひきつらせている。


 気づかない内にとんでもないことをやらかしてしまうかも知れないのだ。


 そんな恐ろしい洗脳というスキルは、持っているだけでスキルは封印される。もし使えば当然極刑だと言う。


「重ねて申し訳なかったのだ、ドライ」


 話し終わったツヴァイ兄さんが姿勢をただし頭を下げる。


「あ、いえ、ツヴァイ兄さん頭を上げてください」


 転生してきて、最初に会ったときに受けた暴力のことがあるから、キレイさっぱり、『もういいよ』とは言えない。


 だけど話を聞く限り正気ではなかったことになる。まあ言えばお酒に酔ってやらかしたのと変わらないってことだ。


 共演者の中にも酒癖が悪く、事務所から止められている人もいて、コッソリ打ち上げで飲んで暴れていたもんな。


 その人も翌日みんなに頭を下げまくってたけど、監督なんかは、『お前とはもう飲まん!』って怒ってたし。


「だいたい分かりましたけど、それでツヴァイ兄さんはどうしたいのですか? アイン兄さんも、一緒だから正気に戻すとか?」


「ふむ。どうしたいか、であるならば、それもやりたいことの一つではある。あるのだが、今回暗殺を企てたのは兄上のようなのだ」


 は? ツヴァイ兄さんを殺そうとしたのがアイン兄さん?


「ツヴァイ様。そう決めつけるのはお待ちください」


「ぬ? どういうことであるか?」


「あのものたちが持っていた依頼書ですが、コレを」


 ミラさんがツヴァイ兄さんに差し出した折りたたまれている数枚の紙。それを開いて目を走らせ表情が怒りに歪んできた。


 横から覗くと署名がアインだ。……確定じゃん!


「やはり兄上が!」


「いえ、よくご覧ください。コレはクリーク伯爵家の印が押された紙で、アイン様の署名があるのは確かですが、この文字はアイン様の字ではありません」


「む! 言われればその通りである! この字は父上の物ではないか! ミラ! どういうことであるか!」


 話の流れ的に、洗脳の黒幕も父親か……


「ツヴァイ様お静かに……知らない気配が近づいております」

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